第36話:俺の住んでる小屋が全焼してるんだけど!?

「何だか色々とあったけどすっごく楽しかったなぁ」


 俺はアルフォンス領へと向かう馬車の中でそんな事を呟いていった。


 たったの数日だったけど、とてもワクワクとする日々を王都で過ごす事が出来た。


(まぁ最後にアーシャが襲われそうになってたのは流石にヒヤっとしたけど……)


 でもアーシャを襲っていた野盗共はしっかりと返り討ちにする事が出来たし、ベルセルクの壊滅もフランツがしっかりと約束していってくれた。


 という事でこれにて俺の悩みの種は全て解消されたという訳だ。だからこれからようやく俺の楽しい異世界ライフがいよいよ始まるんだ。


「よし、それじゃあこれからはどう過ごしていく事にしようかな?」


 まぁ今の所は貴族学園の試験結果待ちだけど、でも正直この状況だったらもう合格でも不合格でもどっちでも良いよな。


 もし合格だったらこれからはアーシャと一緒に貴族学園に通うという何だかラノベのラブコメみたいな展開が始まるかもしれないな。それは普通に嬉しいわ。


 しかもこの時期の貴族学園なら、アーシャ以外の仲間キャラも何人か学園に通っているはずだ。ゲームの仲間達と沢山出会える可能性があるなんて物凄くテンションが上がるよな。


 そしてもちろん不合格であったとしてもそれはそれで何も問題はない。まぁ貴族学園での楽しいラブコメ展開みたいなのは一切無くなるけど、その代わりに今まで稼いできた大金を使って楽しいスローライフ生活を始められるからな。


 という事で今まで稼いできた大金を全部使って畑を買って美味しい野菜を育てていったり、小さな船を買って毎日海に出て釣りを楽しんだりとかしていくぞ!


(あ、それじゃあせっかくだし、アルフォンス領にある養蜂場を買い取って美味しいハチミツの養殖とかも始めてみようかな?)


 それで美味しいハチミツを作ったらアーシャにプレゼントとして送ってあげるのも良いかもな。そんな感じで毎日自然と戯れながら一生を過ごすという人生もかなり楽しそうだ。


「はは、これはどっちの人生に転がったとしても凄く楽しそうな一生を過ごせそうだな!」


 という事で俺は今後の自分の人生を楽しみに想像していきながらアルフォンス領に戻っていったのであった。


 しかしこの後すぐ……俺の身に降りかかる最悪な事件の事を俺はまだ知らなかった……。


◇◇◇◇


 それから程なくして。


 俺はアルフォンス領に到着してすぐにアルフィード家へと戻ってきたんだけど……。


「……なっ!?」


 俺はこの六年間、苦楽を共にしてきたボロボロの掘っ立て小屋が“あった”場所の前で愕然としていった。それは何故かというと……。


「お、俺の住んでた小屋が……無くなってる!?」


 何故かというとあのボロボロの掘っ立て小屋が無くなっていたからだ。いや、無くなっているというのは少し語弊がある。小屋の残骸は少しだけ残っていた。だけど……。


「な、何だよこの残骸……全部真っ黒に炭化してるじゃん……。これってつまり小屋が全焼したって事だよな……?」


 その残骸は全て黒く炭化してしまっていた。この痕跡からおそらく俺の住んでた小屋は全焼したと思われる。でも全焼してしまった理由が全くわからなかった。


「い、いや何でこんな事になってんだよ!? 落雷でも直撃したのか!? それとも賊に襲われたのか!?」


 俺は大きな声を出しながらそう言っていった。でもここ数日間の天候は全国で快晴だったはずだ。だから落雷などの自然災害は考えられない。


 それに賊に関しても俺が襲われるはずのベルセルクは既に倒した。それにベルセルク以外の賊がやって来たのであればこんなボロボロの掘っ立て小屋を襲わずに屋敷の方を襲うはずだ。


 それなのに屋敷は一切傷ついてないのに俺が住んでたボロボロの掘っ立て小屋だけが全焼してるなんて意味がわからない。


「って、あれ? そ、それだとさ……小屋に置いていた俺の荷物は……あっ……」


 俺はその残骸の中から真っ黒コゲになってしまった作業台や冒険で愛用していた片手剣や盾などの残骸らしき物を見つけていった。


 どうやら俺の荷物は全部小屋の中で燃えていってしまったようだ。という事はつまり……。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ……そしたら俺の今まで頑張ってきた貯金や大事なアイテムは全部……?」


 という事はつまり俺が頑張って貯めてきた貯金もレアアイテムや装備なども全部焼失していったという事になる。


 つまり俺のこの六年間の血と汗と努力の結晶は……全て燃えて無になってしまったのであった。


「そ、そんな……一体どうしてこんな事に……」


 俺はそう呟きながら小屋があった場所の前で呆然と立ち尽くしていった。流石にショックが大きすぎて俺はすぐには立ち直れなかった。


「失礼します。セラス様」

「え? あ、ルシウスか?」


 するとその時、アルフィード家に長年務めている執事長のルシウスが俺に声をかけてきた。俺はすぐにルシウスにこの状況について尋ねていった。


「こ、これは一体どういう事なんだ? どうして俺の住んでた小屋が燃え落ちてしまっているんだ? 賊か? 災害か? それとも他に何か事件でもあったのか?」

「はい。それについては旦那様からのご説明があるそうです。なので今すぐに屋敷の執務室まで来てくれとの事です」

「え? ち、父上が?」


 どうやらこのボロボロの掘っ立て小屋が全焼している理由はクソ親父が知っているらしい。


 一体どんな理由があるのかわからないが……俺はこの原因をさっさと知りたいのですぐにクソ親父の元へと向かう事にした。


 そして俺はこの後すぐにクソ親父からあまりにも衝撃的過ぎる言葉を貰う事になるのであった……。


―――――――――

・あとがき


第二章はあと三話で終わる予定となります。

最後まで楽しく読んで頂けたらとても嬉しいです。

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