第24話:剣聖による入学試験

「でもセラス君とまたこうやって再会出来るなんて凄く嬉しいよ」

「はい、それは私も同じ気持ちです。って、あ、そうだ。そういえばフランツさんが試験監督を務めているという事は……もしかしてフランツさんってこの学園の先生をされているんですか?」


 俺はふと疑問に思ったのでそんな事を尋ねていってみた。


 確かフランツってこの国の軍人だったはずだ。それなのに何で貴族学園の試験監督を務めているんだろう?


「あぁ、いやそういう訳じゃないよ。前にも言ったかもしれないけど僕の職業はこの国の軍人さ。でも今は若い子達に指南役をする事も多くてね。その仕事の一つとして、君達のような若い受験生の実技試験を担当させて貰っているって感じだね」

「へぇ、なるほど! そういう理由だったんですね」


 やっぱりフランツは学校の先生ではなくこの国の軍人のようだ。という事は今日この場所でフランツと再会出来たのはたまたま運が良かっただけのようだな。


「それじゃあ雑談はここまでにして、そろそろセラス君の入学試験を始めて行こうか」

「はい、よろしくお願いします」

「うん。それじゃあまずはセラス君の魔術の実技を見せて欲しいんだけど……あぁ、でも君は魔術適正はないと判断されたんだね」


 フランツは手元に持っている資料をペラペラと捲りながらそう言ってきた。おそらく先ほどの適正検査の結果が書かれているんだろう。


「はい、そうです。私は生まれつき魔術が使えない身体となっています。やはりこの時点で貴族学院には合格は難しいでしょうか?」

「ん? あぁ、いやそんな事はないよ。入学試験は魔術、体力、志の三つを重視して判断する事になっているからね。だから魔術適正が低くても他の部分で補えれば全然問題ないんだよ」

「なるほど、それなら一安心しました」


 どうやら俺みたいな魔力適正のない者でも入学できる可能性は全然あるという事らしい。まぁでも……。


(あの“剣聖”が相手なら……もしかしたら今の俺の実力を正確に測って貰えるかもしれないな……)


 まぁでも正直俺はもう貴族学園の入学試験なんてどうでも良くなっていた。そんな事よりも俺は“剣聖”に今までの修練の成果を見て貰いたいなと思っていた。


 だって俺はこの六年間、ひたすらに自己鍛錬を行いモンスターを倒し続ける日々を送っていた。だからある程度は強くなったと思う。でも対人戦は一度もやった事がない。


 でも俺の一応の最終目標は人身売買に手を染めてる野盗共を返り討ちにする事だ。だからこそ対人戦において今の俺がどれくらいの実力を持っているのかはちゃんと把握しておきたい。


 そして俺の目の前には人類の最強格である“剣聖”がいる。しかも試験官なので本当の殺し合いには絶対に発展しない。という事で俺は……。


「それじゃあ魔術の実技は無しという事で、それじゃあ体力測定の方にいこうか。体力測定は一応こっちの方で用意した試験科目が――」

「すいません、フランツさん。体力測定に関して出来ればフランツさんにお願いしたい事があるのですが……」

「お願い? うん、私で良ければ何でも応じるつもりだよ? 一体何だい?」

「はい、ありがとうございます。それでは軍の指南役を担当されているフランツさんに私と一つ……手合わせをお願いできませんか?」

「ほう? 私と手合わせを? もしかしてセラス君は武器に心得があるのかい?」

「はい、剣技を少々嗜んでおります」


 俺は毅然とした態度のままフランツにそう言った。するとフランツは数秒ほど俺の事をじっと見つめてから静かに頷いてきた。


「……なるほどね。道理で君の身体は貴族の少年にしてはガッチリとしている気がしたよ」

「え? そんな事までわかるものなんですか?」

「はは、そりゃあ今まで沢山の若者を教育してきた身だからね。服の上からでも大体は察せれるよ。うん、わかったよ。それじゃあセラス君からのお願いという事で……それでは少しだけお手合わせをさせて貰おうかな?」

「はい、ありがとうございます!」


 という事で俺は今から剣聖フランツと手合わせをして貰える事になった。これは色々と楽しみな事になってきたな。

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