第23話:剣聖との再会

 という事で受験生の魔力測定が全員終わった後。


「それではここからは魔術の実技試験及び体力測定を行っていきます。そしてここからは幾つかの試験会場に分かれて試験を行いますので、名前を呼ばれた者から指定された試験会場に移動を開始していってください。それではまずは……」


 どうやらここからは個別試験になるらしい。まぁでも魔術の実技訓練と言われても魔術が使えない俺は体力測定をしてすぐに終わりになりそうだけど。


「それでは次。セラス・アルフィード君」

「はい」


 そんな事を思っていたら俺の名前が呼ばれたので試験官の前に出ていった。


「セラス君は第四試験会場に行ってください。そちらの道をまっすぐに歩いて突き当りを左に向かって行けば第四試験会場が見えてくるはずです」

「はい、わかりました」


 俺はその指示に従って第四会場へと向かい歩き始めていった。するとその時、またシュバルツが下卑た笑みを浮かべながら俺を見ていたけどそれは無視しとく。


「えぇっと、第四試験会場は……この突き当りを左だったな」


 試験官に言われた通りの道順で歩いて行くと“第四試験会場”と書かれた扉の前に辿り着いた。そしてその扉の前には試験監督の補佐らしき生徒が立っていた。


「セラス・アルフィード君ですね。今はまだ前の受験生が試験中ですので、こちらの扉の前で待機していてください」

「はい、わかりました」


 俺はその指示に従って扉の前でビシっと直立不動で待機していった。だけど扉の前に立っていても試験会場の中からは何の物音も聞こえてこなかった。


(あぁ、なるほど……おそらくこの補佐官の生徒が魔術を使って中の様子がわからないようにしているんだろうな)


 まぁ入学試験なんだから当たり前か。どんな試験内容かわかってしまうと、後から受験する生徒達の方が有利になっちゃうしな。


 でも外にいる受験生に俺の恥ずかしい姿が見られずに済むのは普通にありがたいな。だって魔術の実技試験なんて俺は一切何も出来ないんだからさ。


 って事であとは俺を担当する試験官が魔術の実技試験が出来なくても全然許してくれるような優しい人であるという事を祈るだけだな。


『……よし。それでは次の受験生。中に入って来てくれ』


 それから程なくして。扉の外に設置されているスピーカーから男性の声が聞こえてきた。どうやら前の受験生の試験が終わったようだ。


「わかりました。それでは失礼いたします」


―― ガチャ……


 俺はそう言って第四試験会場の扉を開けていった。中はちょっと小さめの体育館といった感じだった。そしてその第四試験会場で待っていたのは……。


「やぁ、久しぶりだね。セラス君!」

「え……って、あぁっ! フランツさんじゃないですかっ!」


 なんとその試験会場にはゲーム終盤で仲間になる剣聖フランツが待機していた。やっぱりゲームで使ってたキャラと出会えるのは何度だって興奮してしまうよな!


 でも今は受験中なので俺は興奮しているのは全力で隠していきながら、あくまでも冷静なフリをしてフランツに話しかけていった。


「え、えっと、お久しぶりです! 大体五年振りくらいですかね?」

「うん、そうだね。大体それくらい振りかな? でもごめんね、いつかまた会いに行くと約束したのに全然会いに行けなくてさ。僕もアーシャもいつかまたアルフォンス領に行こうと思ってたんだけど……でもお互いに仕事が多くて全然行けなかったんだ」

「いえいえ、全然気にしないでくださいよ。あ、そういえばアーシャは元気ですか?」


 そしてフランツの口から“アーシャ”という懐かしい人物の名前が出てきたので、俺はアーシャについてもフランツに聞いてみた。


「うん、相変わらず物凄く元気だよ。アーシャはこの貴族学園に通っている学生なんだ。でも今日は家のお仕事の関係で隣の領地に出かけている最中なんだ。確か予定では明後日には帰ってくるはずだよ」

「あぁ、そうなんですね。はは、アーシャも元気そうなら良かったです」


(家のお仕事って事は……聖女としての仕事って事かな?)


 アーシャのお仕事という事はおそらく聖女としての仕事なんだよな? という事は各地にある教会に行って祈りを捧げるお仕事中なんだろうな。


 そういえばゲーム本編でもアーシャは聖女として地方の教会に祈りを捧げている時に主人公と出会ったんだよな。


 それで新人冒険者だった主人公のために色々と戦闘とかのチュートリアルを教えてくれるキャラだったんだ。本当に美しくて優しくて主人公思いで素敵なお姉ちゃんキャラだったのになぁ……。


「あ、そうだ。そういえばアーシャは明後日に王都に帰ってくるんだけどさ、良かったらその時にご飯でも一緒に食べに行かないかい? きっとアーシャもセラス君の顔を見れたら凄く喜ぶはずだからさ」

「え? ご飯ですか?」


 フランツはそんな提案を俺にしてきてくれた。それは何とも魅力的な提案であった。だけど……。


「うーん、それは凄く嬉しいお誘いなのですが……しかし、私は入学試験が終わったら弟と一緒にすぐに領地に帰宅する予定なのです。実はもう帰りの馬車も明日のお昼に予約してあるので……」

「あぁ、そうなのかい? うん、わかったよ。それじゃあまた違う機会にまたご飯でも食べようね。あ、そうだ! 出来ればその時に君の事を紹介しておきたい人がいるんだけどさ……良かったらその人も呼んでも良いかい?」

「私に紹介したい人ですか? はい、それはもちろん大丈夫ですよ」

「うん、わかった! ありがとうセラス君! それじゃあまた今度、改めて日を設けて皆でご飯でも食べようね!」

「はい、わかりました!」


 という事で俺は試験中にも関わらずフランツとそんな楽しそうな約束を交わしていった。でも……。


(でも俺に紹介したい人って一体誰の事だろう?)


 もしかしてフランツやアーシャみたいなゲーム本編に登場するキャラを他にも紹介してくれるのかな? もしそうだったらめっちゃテンション上がるな!

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