第22話:いざ入学試験を受ける

 国王様とお忍びで墓参りをしていき貴重な短剣を貰うイベントがあった翌日。


「それでは次の生徒。前へ」

「はい!」


 今日は貴族学園の入学試験の日だ。という事で俺はシュバルツと一緒に貴族学園にやって来ていた。


 試験に関してはクソ親父に言われたように魔力測定、体力測定、面接の三つから成り立っているようだ。


 そんでクソ親父の思い描くシナリオとしては……俺は入学試験でボロボロの結果を叩き出して不合格になるけど、弟のシュバルツが主席合格をする事によって、シュバルツの優秀さをより際立たせるという作戦だろうな。


 そしてその入学試験を見てた由緒ある貴族令嬢達にシュバルツの名前を覚えさせて行くというのが一番の目的だろう。つまりシュバルツに良縁を結ばせるためだ。


 まぁそれにシュバルツもエロい事が大好きだから今の内にセックs……じゃなくて、今の内に結婚する令嬢を見つけたいと思ってるだろうから親父の作戦に乗っかってるはずだな。


(ま、俺に実害が無ければ当て馬でも何でも好きに使ってくれて構わないけどさ)


 俺はそんな事を思いながらぼーっと試験官に名前を呼ばれるのを待ち続けていった。そしてそれから程なくして。


「それでは次の生徒。セラス・アルフィード君。前へ」

「はい」


 俺は名前を呼ばれたので試験官の前にやってきた。そして今から魔力測定が行われる。


『おぉ、あれが魔術の名門であるアルフィード家の息子か!』

『きっと魔力適正も相当に高いんだろうなー!』

『でも何で17歳で入学試験を受けてるんだろう?』

『何か家の事情でもあったのかな?』


 俺が試験官の前に出ていくと周りにいた受験生達はチラホラと噂していっている。


 まぁやっぱりアルフィード家ってのはかなり優秀な貴族の家らしく、周りの人達もアルフィード家と聞いてどよめき立っていた。


 ……って事はこの後に起きる事は簡単に予想がつくんだけど。まぁいっか。


「それではセラス君。目の前にある水晶に手をかざして魔力を込めていってくれ。その水晶の輝きで君の魔力適正を測定する」

「わかりました」


 俺は試験官の指示に従って水晶前に手をかざしていつも通り魔力を込めていった。だけど……。


―― シーン……。


 まぁ案の定、目の前の水晶からは何の反応も得られなかった。試験官がキョトンとしながら俺の方を見て来る。


「え、えっと。もうすでに魔力を込めてくれているんだよね?」

「はい。全力で込めています」

「そ、そうか。それでは結果を報告する。セラス・アルフィード君の魔力適正は……0だ」


―― ざわざわ……!!


 その瞬間に周囲の受験生は一気にどよめきだした。


『あ、あの魔術の名門であるアルフィード家の息子が魔力適正が無しだって!?』

『そんな事があるのかよ!? 数年前にも素晴らしい魔術論文を発表してた凄い家系なんだぞ!? その家の子供が魔力適正が無いなんて……ま、まじかよ!?』

『あ、もしかして……魔力適正が無くて無能だったから15歳になってもすぐに入学試験を認めて貰えなかったとか……?』

『あぁ、確かにそれはあり得るな……』


 そんな感じで俺の事を囃し立てる声が聞こえてきた。まぁ予想の範疇内だ。


 それとこれは当たり前の話なんだけど……魔力適正のない人間なんてこの世には沢山いるんだ。というか適正のない人の方が多いし。


 だから別に魔力適正が0であっても別に恥ずべき事ではないんだ。ただ、俺が魔術の名門たるアルフィード家の長男というのがあるから恥ずべき事象になっているんだけど。


 まぁでも俺は魔力適正が無くて恥ずかしいっていう感情は特に持ち合わせてないから別にどうでもいい。むしろクソ親父と血が繋がっている事の方がよっぽど恥ずかしいからな。


「こほん。そ、それでは気を取り直して……シュバルツ・アルフィード君。前へ」

「はい」


 そう言って弟のシュバルツが試験官に呼び出されていった。


 そしてその瞬間、シュバルツは俺の事をニヤニヤと下卑た笑みで見下してきた。その笑みは親父そっくりでムカついたけど、まぁこんなの気にしてらんねぇから無視しとく。


『アルフィード家って事は……なるほど、さっきの無能だったヤツの弟って事か?』

『彼の魔力適正は一体どうなっているんだろうな?』

『さっきの兄と同じような結果になったらアルフィード家はもう終わりだな……』

『しっ! それは流石に不敬よ……』


 シュバルツの登場で周囲の生徒達はまたどよめきたってきた。そしてそのまま必然的にシュバルツに大注目が浴びせられていった。


 これにはクソ親父もニッコリな状況だろうな。だってこのシーンを生み出すために俺の事を当て馬に使ったんだからさ。


「それではシュバルツ君。君も先ほどのお兄さん同様に目の前にある水晶に手をかざして魔力を込めていってくれ」

「わかりました」


 そう言ってシュバルツは水晶に手をかざして一気に魔力を注入していった。するとその瞬間……。


―― パリンッ!!


「……え?」

「……へ?」

「……え?」


 その瞬間、シュバルツが手をかざした水晶は粉々に砕け散っていった。それを見ていた受験生達は途端に全員驚愕の表情を浮かべ始めていった。


 そして試験官もそれを見て絶句していたが、すぐに我に返ってシュバルツに結果を報告していった。


「え……って、えっ!? あ、え、えっと……それでは結果を報告する! シュ、シュバルツ・アルフィード君の魔力適正は……100点満点の文句無しのSSSランクだ!」


―― う、うぉおおおおおおおおおっっ……!!


 その瞬間、周りの受験生達から大きな雄叫びが聞こえてきた。


『さ、流石は魔術の名門たるアルフィード家の息子だなっ!』

『SSSランクの魔力適正なんて凄すぎる! これはきっとご両親の教育の賜物だな!』

『はは、それにしても先ほどの兄とは雲泥の差だな。きっと兄の才能は全部弟が持っていってしまったんだろうなぁ……』

『あぁ、それはちょっと可哀そうな気もするけど……でもこんなにも優秀な魔術師がいるなんてやはりアルフィード家は凄いな!!』

『えぇ、本当に素敵だわ……彼のような素晴らしい才能を持つ殿方と是非ともお近づきになりたいわ……』

『えぇ、そうね。早速お父様にお願いしてアルフィード家とのお茶会を開いてもらう事にしましょう』

『あ、ズルいわ! 私も是非とも誘ってくださいね! 私もシュバルツ君とお近づきになりたいわ!』


 そんな感じでシュバルツの名声が一気に周りに広がっていった。まぁクソ親父の望んだ結果になったようで良かったな。

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