第20話:という事で王都に到着したんだけど

 それから程なくして、俺達は王都に到着した。


「確か入学試験ってのは明日なんだよな? それじゃあ今日は王都に一泊するって事か?」

「はい、そうです。僕は王都にある貴族専用の高級宿屋に泊まる予定です」

「へぇ、王都には貴族専用の宿屋があるのか。それは凄いなー。って事は俺もそこに泊まれる感じか?」

「あはは、面白い冗談ですね? 兄上みたいなゴミクズが貴族専用の宿屋に泊まれるわけないでしょう? 残念ながらそこに宿泊するのは僕だけです」

「ま、どうせそんな事だろうと思ったよ。それじゃあ俺はどうすれば良いんだ?」

「そんなの自分で勝手に宿屋を探してください。お金はこちらの方で支給しますので。それじゃあ、はい、どうぞ」


―― ちゃりんちゃりん……


 そう言ってシュバルツは俺に向かって銀貨を2枚だけ渡してきた。


「お、おいおい。こんな王都に銀貨2枚で泊まれる宿屋なんてあるのかよ……」


 俺はシュバルツから渡された銀貨を見ながらそう言っていった。この世界の物価は銀貨1枚で大体1000円くらいの価値となる。


「そんなの知りませんよ。泊まれる場所が見つからないなら野宿でもすれば良いんじゃないですか?」

「はぁ、そんな事を言われても困るんだけど……まぁいいや。わかったよ。それじゃあまた明日な」

「えぇ、それじゃあ失礼します」


 そう言って俺は馬車の停留所前でシュバルツと別れていった。という事でここからは明日の入学試験が始まるまでは完全に自由行動の時間となる。


「ま、とりあえずさっさと安い宿屋を探してみて、それからは王都を探索していってみよう!」


 一人になった俺はそう決めていった。まぁやっぱり王都ってゲーム本編で沢山訪れる場所だし、普通にワクワクとしちゃうよな。


◇◇◇◇


 それから一時間後。


「ふぅ、とりあえず宿は確保出来たな……」


 俺は何とか道行く人に尋ねまくって一番安い宿屋を探す事が出来た。まぁ明らかにボロボロの宿屋だったけど、野宿するよりかは遥かにマシだ。


 という事で俺は宿屋に荷物を置いていき、手ぶらで王都の街並みを散策していった。


「おー、すげぇ……! どこもかしこもゲームで見た事ある光景だ!」


 俺は感動を覚えながら王都の街並みを見続けていった。


 まぁゲーム本編開始時よりも7年くらい前だから多少は違う所もあるんだけど、でもやっぱり大体ゲーム通りの街並みになっている。とても綺麗で素晴らしい街並みだった。


「はは、これはいいなぁ、何だか聖地巡礼をしてるみたいで最高に楽しいんだけど!」


 という事で俺は終始興奮しっぱなしで街の中を歩き回っていった。


 でももしも貴族学院に合格したらこの王都に住めるって事だよな? いやそれはソードファンタジア好きの俺にとってはマジで最高過ぎじゃねぇか??


「……いや、まぁ試験科目の一つで0点を取るのが確定してる時点で合格は無理だけどな」


 これで俺が試験に合格したら逆にビックリするわ。まぁでもせっかく試験を受けるんだから他の科目でしっかりと頑張ってみよう。


「ま、それじゃあ今日は明日に備えて早く寝るかな……って、あれ?」


 俺は明日の入学試験について考えていると、前の方で地面に倒れている老人を見つけた。その老人は地面に何かを落としてしまったようだ。


「うーん、あれは助けてあげなきゃだな」


 俺は困ってる人はなるべく助ける事を信条にしているので、俺はその老人に近づいて声をかけていってみた。


「どうかしましたか? もし良ければ力になりますよ?」

「うん? あぁ、ありがとう、少年。実は先ほど花屋で花束を買ったんだが、その道中でうっかりと転んでしまってな。それで先ほど買った花を地面にばら撒いてしまったんだ……」

「なるほど。それは大変ですね。それじゃあ私も一緒に拾わせて頂きます」

「あぁ、ありがとう。すまないね、少年」

「いえいえ……って、あれ?」


 って、あれ? このおじいさん……何だかゲームで見た事がある気が……って、あぁっ!?


(こ、このおじいさんって……先代の国王様じゃないのか!?)


 ゲーム本編だと既に故人なんだけど、でも回想シーンでこんなおじいさんを何度か見た事があった。でもまだ生きているって事は“先代”じゃなくて“現国王”って事か?


 確か国王様は数十年前の先代勇者パーティに参加していた剣士だったらしい。王族でありながら邪悪な魔王と最後まで戦った勇敢なる剣士だったという話が語られていた。


 でも確かその先代の国王様は治療不可能な不治の病に犯されてしまい、ゲーム本編が始まる前に亡くなってしまったという話だった。


(でも不治の病に犯されるにしては全然元気そうな気がするんだけど……って、いや、そんな事よりも!!)


 いやそんな事よりも何でこんな所に超重要人物がいるんだよ!? 国王様に連れ添っている人とかいないのかよ!?


「……? どうかしたかい? 少年?」

「え……えっ? あ、あぁ、いや、何でもないです!!」


 俺は内心バクバクとしながらも平然な態度のフリをしながら国王様と話をしていった。ここら辺は転生前の社畜時代に培った能力だな。


 という事で俺はこの国のナンバー1の御方と一緒に地面に転がっている花を拾っていく作業を行っていった。

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