第17話:ダグラスと固い握手を交わしていく

「えっと、それで? どうして唐突にエリクサーが必要になったんですか?」

「あぁ、いや、まぁ、何というか……申し訳ないがこれは機密事項だからセラ坊主にも詳しくは教えられないんだ。まぁでも教えられる部分だけを伝えるとすると……この国にとって凄く大切な人物が重い病気にかかってしまい……つい先日に危篤状態に陥ってしまったらしいんだ。だからその病気を治すためにも大至急エリクサーが必要になってるんだ……」

「なるほど? よくわからないけど、何だかかなり深刻そうな事態になっている感じですね」


 機密事項ということで“誰”が重い病気になっているのかまでは教えて貰えなかったけど、でもダグラスの焦った様子からしてかなり深刻な状態のようだ。


「あぁ、そうなんだ。でもエリクサーなんて“万物の秘薬”をダンジョンから取ってこれる冒険者なんて滅多にいないっていうのに、それ程のレアアイテムをどうやって今すぐに入手すれば良いんだよ……って事で皆でざわついているんだ……」

「なるほど、そういう事だったんですね。まぁそれなら良かったらエリクサー差し上げましょうか?」

「あぁ、本当に……って、は、はぁっ!? せ、セラ坊主……お前さん、エリクサー持ってんのか!?」


 俺はいつも通りの口調でそう言っていくと、逆にダグラスは思いっきりビックリとした様子でそんな事を尋ね返してきた。


「はい。ちょっと前にエリクサーを作るために必要なレア素材を全部入手したんで、試しにエリクサーを一本作ってみたんですよ」

「え……えぇっ!? エリクサー自作したのかよっ!? ダンジョンで偶然入手したとかそういう訳じゃなくて!?」

「え? はい、そうですね。調合で作り上げてみた感じです」


 俺はこの数年間ひたすらと調合で遊びまくってきた事で、調合レベルは既にカンスト状態となっていた。


 だから今の俺は調合システムで作れるアイテムは必要素材さえあれば何でも作れるんだ。やっぱり継続は力なりってやつだよな。


(まぁでもエリクサーを作るにはレア素材を大量に使うから、調合で作る場合の難易度もかなり高いんだけどな)


 でも俺は野盗と戦う時にもしもの緊急薬としてエリクサーを一本用意しておきたいと思っていたので、俺はエリクサー一本分の調合素材を数年かけて頑張って集めていったんだ。


 それでつい先日に素材を集め終える事が出来たので試しにエリクサーを作ってみたんだ。それが今俺が手に持っている自家製のエリクサーだ。


「す、凄いなセラ坊主は……エリクサーを自分で調合出来るなんて……お前さん……本当に凄すぎるよ!!」

「俺は別に凄くも何ともないですよ。ただひたすらと調合の勉強をしてたら作れるようになっただけですから。まぁ調合素材が重すぎるから滅多には作れないですけど、それでも困ってる人がいるのなら是非ともこのエリクサーを役立ててください。という事で……はい、それじゃあこれをどうぞ」


 俺はそう言いながらエリクサーが入ったガラス瓶をダグラスに手渡していった。そしてそれを受け取ったダグラスは興奮気味になりながら目を輝かせていった。


「あ、あぁ間違いない……これは正真正銘のエリクサーだ! これさえあればあの人も助かる! あぁ、本当に……本当にありがとうセラ坊主!」

「はは、それなら良かったです。まぁ誰かわかりませんけど、この国にとって大切な人が助かるようなら俺も嬉しい限りですよ」

「あぁ、本当にお前さんは……本当に凄いヤツだよ! って、あ、そうだ……。それとエリクサーの買取金についてなんだが……すまんがエリクサーの買取は大金過ぎるからギルドの財源では一括で支払う事は出来ないんだ。だから分割で支払わせて貰っても良いだろうか……?」


 興奮気味だったダグラスは一転して非常に困ったような顔をしながらそう言ってきた。まぁゲーム内でもエリクサーは買取不可と言われてしまう程の希少アイテムだったしな。だから実際に買い取るとしたら莫大な金がかかるんだろうな。


 という事で俺は……。


「別にお金なんて要りませんよ。ダグラスさんや職員の人達にはいつもお世話になってますからね。それに困ってる人のために役立ててくれるのであれば俺はそれで良いですよ」

「えっ!? だ、だがエリクサーは滅多に手に入らない超レアアイテムなんだぞ!? これ一本だけで何不自由なく暮らせる程の莫大な金が手に入るんだぞ? だからちゃんと報酬は支払――」

「いやいや、本当に気にしなくていいですよ。今まで冒険者ギルドには何度も回復薬を買い取ってもらったので貯金は沢山ありますし、それにダグラスさんや職員の皆さんは子供だった俺の事を何度も助けてくれたじゃないですか。だからこのエリクサーは俺の恩を返したい気持ちって事で受け取っておいてください。そしてこれからも何かあったら俺の事を助けてくれると嬉しいです、あはは」

「セラ坊主……あぁ、わかったよ! 俺達ギルド職員は今回の恩義を絶対に忘れないからな! そしてこれから何があったとしても俺達は全身全霊でセラ坊主に力を貸す事を誓うよ!」

「はは、そう言ってくれると心強いですよ。それじゃあこれからも変わらずよろしくお願いしますね」

「あぁ、わかった! それじゃあ今日は本当にありがとな! この恩は一生忘れないからな!!」


 という事で俺はそう言ってからダグラスと固い握手を交わしていったのであった。


 これから近い内に野盗に襲われるイベントもあるわけだし、俺の事を味方してくれる人物がこんなにも身近にいるという事が本当に心強かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る