第14話:レイン・アルフィード
今目の前に立っている女性の名はレイン・アルフィード。
シュバルツの実の母親であり、俺の継母でもある。年齢は三十代前半だ。
レインは切れ長な瞳が特徴的で物凄い魅惑的なグラマラスボディを持っている超絶美人な女性なんだけど、常に睨まれてるかのような錯覚に陥ってしまう程の怖い顔付きもしている。
だから正直レインからはアニメや漫画に登場するような悪い継母みたいな雰囲気が滅茶苦茶醸し出されている。つまり何というかレインは敵キャラっぽく見えてしまうという事だ。
「お、お久しぶりです。レイン義母さん」
そしてそんな滅茶苦茶怖い敵キャラっぽい見た目なので、俺は少し緊張しつつもしっかりと頭を下げて挨拶をしていった。でも……。
「えぇ、お久しぶりです。セラス君。息災でしたか?」
「は、はい、元気に過ごしていましたよ」
「ふむ。それなら良かったです」
でもそんな怖い敵キャラっぽい見た目な反面、性格は思いっきり優しい人格者だった。
レインは血の繋がってない俺の事を息子同然のように可愛がってくれていたし、アルフィード家に住む人々の中で唯一俺に優しくしてくれた人でもあった。
でも俺の母親であるエリス・アルフィードが亡くなって繰り上がり第一夫人となったレインは、エリスと二人で行っていたアルフィード家の外交仕事を全て一人で引き受ける事となった。
その結果としてレインは外交のため出張がとても多くなってしまい、年にたった数回しかこのアルフィード家に帰ってこれない程の超多忙な人物になっていってしまったのであった。
「ふむ、それにしても……セラス君はまだこのような掘っ立て小屋に住まわされているのですか? 私からも散々とあの人にセラス君を本屋敷に戻してあげてくださいと言ってるのですが」
するとレインは少しムっとした表情をしながらそんな事を言ってきた。怖い見た目がより一層恐ろしくさせてくる。
「い、いえ、全然大丈夫ですよ。逆にこれくらい小さい住処の方が静かなので勉学に集中して励む事が出来ますからね。だからレイン義母さんはそんな事気にしないで大丈夫ですよ」
「そうですか。そういえばセラス君は昔から凄い努力家でしたものね。ふふ、きっと天国にいるエリスさんはセラス君の頑張りを見て凄く喜んでくれてますよ」
「え? 母さんがですか? はは、そうだったら嬉しいですね」
レインはムっとした怖い表情から一転して柔和な笑みを浮かべながら俺に向かってそう言ってきた。その表情からしてやっぱりレインはとても優しい女性なんだと察する事が出来た。
そして実は俺の母親であるエリスと継母であるレインは幼少の頃から親交があり、血は繋がってないけどまるで本物の姉妹のようだと周りから言われる程に仲が良かったらしい。いつかレインに俺の母親の事を聞いてみたいものだ。
「あ、そうだ。それでレイン義母さんは今回はいつまでアルフィード家に居られる予定なんですか?」
「え? あぁ、ごめんなさい。今から隣の領地で開かれる会議に出席しなければならないんです。そしてその会議で必要になる書類があったので今日はそれを取りに屋敷に戻ってきただけなんです。だからまだ当分は帰ってこれそうにもありませんね……」
「あぁ、そうなんですか。相変わらず外交の仕事が忙しそうですね。でもそんなにも世界各地で沢山の会議を開かないといけない事が起きてるんですか?」
「……そうですね。セラス君はもう立派な大人ですし……いいでしょう。それでは今この世界で何が起きてるのかセラス君にも教えてあげましょう」
「え?」
突然とレインの話す雰囲気が変わった。レインはとても真剣な表情をしながら俺に向かってこんな事を言ってきた。
「実はここ数年前から……魔王が復活する兆候が出ているのです」
「え? 魔王がですか?」
「はい、そうです。ここ数年前から世界中のモンスターの異常発生が確認されており、さらに一年程前から魔族と思われる種族が世界各地で少しずつ発見されてきています。これは今から数十年前に起きた魔王復活の時と状況が全く同じなのです」
レインは真剣な表情をしながら俺にそんな事を教えてきてくれた。
(なるほど。それじゃあ今から近い内に魔王が復活して……それでソードファンタジアの本編に繋がるというわけか)
俺はこの数年間、モンスターを倒したり調合でアイテム生成をしたりなどしてソードファンタジアの世界を普通に楽しんでたんだけど……でもよく考えたら俺はまだ一度も魔族や魔王と出会っていなかった。
でもその理由も今のレインの話を聞いて納得した。なるほどな、この世界ではまだ魔王は復活してなかったんだな。
「なので我々人族は復活した魔王や魔族の襲撃に備えて会議や議論を行っているのです。そしてそれは王族や貴族だけでなく、軍や教会、冒険者組合とも連携する必要があるため世界中の至る場所で毎日のように話し合いをしている所なのです」
「なるほど。そういう事だったんですね」
(なるほど、だからアーシャ達はこの五年間一度もこの街に訪れる事が出来なかったんだな)
だいぶ昔に俺はアーシャとフランツとこの街で再会するという約束をしたんだけど、それから五年経った今もまだ彼女達とは再会する事が一度も出来ていなかった。
でも今のレインの話を聞いてそれにも納得した。レインの話を聞いた限りだと、おそらくアーシャやフランツも軍や聖女としての仕事が沢山あって激務な毎日を送っているという感じなんだろうな。
アーシャ達と未だに再会出来てないのはちょっと悲しいけど、でも魔王関連の件はかなりヤバ過ぎるからな。だってゲーム本編では魔王が本当に世界を滅ぼしかけるわけだしさ。
「あともう一つ……今この国ではかなり深刻な事件が起きているのですが……あぁ、いえ、この話はセラス君は気にしなくて大丈夫です……」
「?」
すると唐突にレインはちょっとだけ落ち込んだ様子になりながら少し含みのあるような事を言ってきた。
まぁそんな事を言われたら普通に気になるけど……でもレインは気にしなくて大丈夫だって言ってきたし、今は深く追求をするのは止めておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます