第11話:剣聖との邂逅
そんな感じでその後もアーシャと楽しく話を続けていると……。
「アーシャ!」
「え……って、あっ! フランツ叔父様!」
「うん?」
アーシャと楽しく話を続けていると、急に後ろからアーシャの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
なので俺達は後ろを振り返ってみると、そこには20代後半くらいの男の人が立っていた。どうやらこの男の人がアーシャの連れ添いの者のようだ。
……って、あれ? この人の顔何処かで見た覚えがあるような気が……。
「あぁ、良かった……アーシャに何かあったと思ったら気が気で無かったよ……」
「ううん、大丈夫よ叔父様! だって私の事はセラス君がずっと守ってくれたから!」
「え? セラスって……あぁ、もしかしてそっちにいる男の子の事かい?」
「うん、そうよ! セラス君っていうの! 凄く優しくてカッコ良くて素敵な男の子なの!」
「へぇ、そうなのかい! ありがとう、セラス君! アーシャの事を守ってくれたなんて本当に助かったよ!」
「え? あ、あぁ、はい、それなら良かったです」
アーシャの付き添いの男性は俺の顔をじっと見ながら優しく微笑んできた。その様子からしてこの男性も優しい大人なんだろうなというのは容易に想像がついた。
まぁそもそもこんな子供に対して敵対心剝き出しに接してくるヤバイヤツなんているわけないよな。そんな事をしてくるのは俺のクソ親父くらいだけだしな。はぁ、全く……。
「あれ、どうかしたかい? 何だか急に表情がどんよりとしてきたようだけど……?」
「え? あぁ、いえ、何でもないです。気にしないでください」
「そうかい? まぁ君がそう言うのなら気にしないでおくよ。それじゃあ改めて君にお礼を言っていきたいんだけど……えぇっと、そういえばセラス君は下の名前は何というんだい?」
「あぁ、はい。私の名前はセラス・アルフィードと言います。どうぞお見知りおきを」
「え? アルフィード? もしかして君は魔術の名門であるアルフィード家のご子息なのかい?」
「はい、その通りです。もしかしてアルフィード家をご存知なのですか?」
「おぉ、そうだったんだね! うん、もちろん。アルフィード家といえば魔術の名門一家として有名だからね。最近だと“業火の魔術”を極めたという研究論文を発表されて注目を浴びてたね」
目の前の男の人はそう言って何度も頷いてきた。やっぱりアルフィード家は王都でもそこそこ有名な貴族家のようだ。
でも俺の身体を焼きまくって手に入れた研究結果を論文で発表するって中々に鬼畜過ぎねぇか? まぁ別にどうでも良いけどさ。
「ふふ、それにしてもセラス君はまだまだ幼いというのに、人助けをする優しくて立派な心を持っているなんて本当に素晴らしいね」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。人として当然の事をしたまでです。って、あ、そうだ。そういえば貴方のお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
俺はその男の人に向かってそう尋ねていった。
「あぁ、そうだよね。名乗るのが遅くなって申し訳ない。僕の名前はフランツ・ジェザード。このお転婆娘の兄代わりと言った所かな?」
「ちょ、ちょっと叔父様! 私はお転婆なんかじゃありませんよ! せ、セラス君の前でそういう事を言うのは止めてください!」
「はは、ごめんごめん。まぁ僕はこの子の保護者代わりと言った所だよ。改めてよろしくね、セラス君」
フランツはアーシャとじゃれ合いながら俺にそう言ってきた。その様子からして二人はとても仲が良いというのが伝わってくるな。
「なるほど、フランツさんと仰られるのですね。はい、それでは改めてお見知りおきを……?」
俺はさっきからこの男の人を何処かで見た気がしていたんだけど、でもお互いに自己紹介をしていったその瞬間……。
(……って、あぁっ!)
その瞬間俺は気がついた……この人ってアレじゃん! “孤高の剣聖”のフランツじゃん!
◇◇◇◇
フランツ・ジェザードとはソードファンタジアの終盤に登場するキャラだ。
ゲーム本編だとフランツは王都出身の現役軍人で“剣聖”という称号を持っている剣のスペシャリストだった。この時代でも既に剣聖の称号を持っているのかはわからないけど、でもゲーム本編だと滅茶苦茶強い最強の剣士っていうイメージがある。
そしてそんなフランツもゲーム本編で仲間になるキャラの一人だった。
そしてここからがちょっと面白いんだけど、アーシャはゲームを開始してすぐに仲間になる一番最初の上級お助けキャラなのに対して、フランツはゲームで一番最後に仲間になるキャラだったんだ。
つまり今俺の目の前には一番最初に仲間になるキャラと一番最後に仲間になるキャラの二人が揃っているという事だ。何だこれめっちゃ興奮するんだけど!
ちなみにフランツは物語上では魔王との戦いに敗れて魔王城の牢屋に閉じ込められていて、主人公達がラストダンジョンである魔王城を攻略する際に牢屋を開放すると仲間になってくれる最後の仲間キャラだ。
そしてフランツのステータスは滅茶苦茶に高いため、ラストダンジョンで仲間になるにも関わらずレベリングを一切しなくても即時スタメン起用する事が出来る程のチート火力を出せるキャラだった。
それにフランツは見た目が凄く渋いイケオジかつ声もかなりカッコ良かったためプレイヤー人気は相当に高かった。もちろん俺もフランツはめっちゃ好きでいつも愛用していたっけ。いやマジで懐かしいなー。
「うん、改めてよろしくね……って、どうかしたかい?」
「えっ? あ、あぁいえ! 何でもありません! 改めてよろしくお願いします!」
俺は慌てながらそう誤魔化していき、そのまま深々とお辞儀を交わしていった。
ゲームでよく使用してたキャラ達と出会えた事が嬉しすぎてめっちゃ興奮してましたって本人達に言っても意味がわからないだろうしな。
「でもセラス君はその若さで礼儀良くて優しい心を持っているなんて本当に素晴らしいね。改めて今日はアーシャの事を助けてくれて本当にありがとう。この恩は一生忘れないよ」
「いえ、私はそんな大層な事はしていませんよ。困っている方を助けるのは人として当然の行いですし、そして何より……アーシャのような凄く可愛らしい女の子を助けるのは男として当然の事ですしね」
「え? か、かわっ!? ふぇっ!?」
「そっかそっか。ふふ、セラス君は本当に良い少年だね」
俺がそんな事を言っていくとアーシャはどんどんと顔を真っ赤にしていった。そしてそんな俺達のやり取りを見ていたフランツは俺達に向けて優しく微笑んできてくれた。
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