第6話:街の冒険者ギルドにポーション薬を卸していく
という事で俺はセラスのためにもそんな大きな目標を掲げていったわけだけども……。
「……まぁ、でも今はそんな事よりも……」
―― ぐぅうう……
俺のお腹から急激に大きな音が鳴りだしていった。そして俺はお腹を押さえながらこう呟いていった。
「はぁ、腹減ったなぁ……」
さっきも言ったように俺のお世話をしてくれるメイドや従者なんて一人もいない。
だから俺は身の回りの事は全部自分で行わなければならないし、もちろん食事の用意だって自分でしなければならないんだ。
まぁ百歩譲って十一歳の子供に身の回りの事は自分でさせるのは別に良いという事にしても、そうなると必要になるのは一人で生活するための金だ。
だけどクソ親父は俺に対して毎月滅茶苦茶少ない生活費しか渡してこない。そして少ない生活費を使って自由に生活しろと毎月ドヤ顔で言ってくる。
毎月どんなに頑張って倹約しても絶対に足りない程の少ない生活費しかクソ親父は毎月支給してくれないんだ。俺にまともな生活をさせる気がないんだ、あのクソ親父は。
はは、まぁでも残念ながら……。
「うーん、腹も減ってきたし……よし、それじゃあいつも通りアルバイトに行ってから飯を食う事にしよう」
まぁでも残念ながら俺にはとある金策があるんだ。だからクソ親父の思い通りにはならないんだよなぁ。
という事で俺はそう言って近くに置いていた鞄を背負いながら小屋から出て街にある冒険者ギルドに向かう事にした。
◇◇◇◇
それから程なくして。
俺は背中に大きな鞄を背負いながら街の中を歩いている所だった。目的地は街の中央に建てられている冒険者ギルドだ。
「こんにちはー」
「うん? って、あぁ、セラス君ね。いらっしゃい」
冒険者ギルドに到着した俺は中に入って受付のお姉さんに話しかけていった。するとお姉さんは優しく笑みを浮かべながら俺にそう声をかけてきてくれた。
「今日はダグラス支部長っているかな?」
「えぇ、もちろんいるわよ。支部長に用事なのかな? それじゃあ今から呼んでくるね」
「うん、ありがとう」
そう言ってお姉さんは奥の部屋に入って行った。そしてそれからしばらくすると奥の部屋から大柄の男が出てきた。
「おー、セラ坊主! 一週間ぶりだな! 今日はどうしたよ?」
大柄の男は俺の顔を見るなり豪快に笑いながらそう言ってきた。
この大柄の男がダグラス支部長だ。元々は有名な実力のある冒険者で、今はこの街の冒険者達を束ねる冒険者ギルドの長を務めている優秀な男だ。
「支部長、久しぶり。今日もいつものようにポーション薬を売りに来たんだ」
「おぉ、そっかそっか! いつもありがとな、セラ坊主! それじゃあ早速持ってきてくれたポーション薬の確認をさせてくれるか?」
「うん。それじゃあ……はい、これ。この鞄の中に入ってるのが全部そうだから確認お願いね」
そう言って俺は背中に背負っていた鞄を降ろしてダグラスに手渡していった。鞄の中には俺が作ったポーション薬が30~40本くらい入っている。
「あぁ、了解だ! それじゃあすぐに確認していくから少し待っててくれ!」
「うん、わかった」
そう言って俺は再びダグラスに呼ばれるまで冒険者ギルドの待合席で座りながら待機していく事にした。
という事で俺はこの一年間、毎日剣の素振りをするだけではなく冒険者の仕事も行っていた。俺が冒険者になった理由には鍛錬のためってのも当然あるけど、でも一番の理由は金策のためだった。
実はソードファンタジアにはとある特殊なシステムがある。それは“調合”というシステムだ。
ソードファンタジアでは敵を倒してアイテムをドロップしたり、ダンジョンや街中などでアイテムを拾ったり購入したりする事が出来るんだけど、それらのアイテムを組み合わせる事で別のアイテムを作り出す事も出来るんだ。それが“調合”と呼ばれるシステムだった。
そして作り出すアイテムに必要な素材はそのアイテム毎に決まっており、さらに調合レベルに応じて作れるアイテムもどんどんと増えていくという成長系のやり込みシステムだった。
ちなみにポーション薬は調合レベル1から作り出す事ができて、“スライムの体液”と“薬草”で調合する事が可能だ。
さらにポーション薬は最初から作れる割に売却価格がそこそこ高く設定されているので、ゲームの序盤だとポーション薬の調合&売却ループで金策をするという小ワザがあったんだ。
なので俺はその小ワザを実践するためにすぐに冒険者ライセンスを取得して、さらに行商人から調合台を購入してそれをボロボロの掘っ立て小屋の中に設置していった。
そして自己鍛錬と魔術訓練以外の空いてる時間を全て使って冒険者ギルドでスライム討伐依頼を受けまくって“スライムの体液”を集めまくる日々を送っていた。
それと薬草自体は行商人から購入できるので、そこから手に入れた薬草とスライムの体液を調合してポーション薬を大量に作りまくり、それを冒険者ギルドに売り払って生活費の足しにさせて貰っていたのであった。
(それにしてもスライムを倒しまくって経験値を稼ぎつつ、ポーション薬で金も稼げるなんて一石二鳥だよなー)
という事で今の俺は転生前にやり込んでいたゲーム知識のおかげで俺は貧しい生活を送らずにちゃんと毎日金を稼いで豊かな生活を送る事が出来ていた。
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