第4話:絶対に生き残ってみせる!
「って事は……俺はいつか野盗に襲われてこの家から連れ去られるって事か?」
これは作中で語られるセラスの話なんだけど、セラスは由緒ある貴族家の長男として生まれるのだが、十六歳くらいの時に野盗に襲われて奴隷商人に売り払われていき、そのまま変態貴族に買われていってしまうんだ。
そこでセラスは変態貴族の性奴隷として毎日酷い仕打ちを受けていき、次第にセラスは精神がぶっ壊れていく事になる。でもセラスは精神が壊れて廃人になるのではなく頭のネジが外れた狂人になるんだ。
それで精神が壊れて狂人となったセラスは変態貴族の家に置かれていたナイフを手に持って、主人である変態貴族の事を惨殺していく。
そして変態貴族を惨殺したセラスはそのまま金目の物を全て奪い去っていき、その財力を使って最強の傭兵集団を作り上げていくんだ。
そしてそのセラスが率いる最強の傭兵集団が魔王と手を組んで悪逆非道な行為をし尽くすというのが本編の物語だ。
というわけで胸糞ボスのセラスにも実は可哀そうな過去があるわけだけど……でも俺の最推しキャラであるお姉さんを強姦しまくって廃人にさせた末に笑いながら首を撥ね飛ばすとかいう非道過ぎる行為をした時点で情状酌量の余地なんてないけどな。
「はぁ、でも何でそんな波乱万丈な人生を歩む悪役に転生してんだよ……俺はスローライフな人生を送らせて貰えるだけで十分なのにさぁ……」
俺はため息をつきながらそう呟いていった。
だって俺は近い内に野盗に襲われていって、変態貴族に売り払われてケツ穴掘られまくって精神をぶっ壊すのが確定してるって事なんだろ? いや変態貴族に毎晩ケツ穴を掘られるとか絶対に嫌だよ……。
しかも最終的に軍隊に捕らえられて酷い拷問の末に処刑されるってのも確定してるって事だろ? 何だよそれ絶対に嫌だよ、俺は死にたくなんてねぇよ……。
って、あれ? いやでも待てよ?
「……いやそもそもだけどさ、野盗に襲われたとしても、それを返り討ちに出来るように俺自身が強くなっておけば良いだけなんじゃね?」
確かセラスは十六歳の時に野盗に襲われてしまい、そのまま奴隷商人に売られていったという話だったはずだ。
でもそれが事前にわかっているのなら今の内にしっかりと身体を鍛えて野盗に襲われても負けないくらいの力を持っておけば良いだけなんじゃね?
「しかも俺ってゲーム中最強格のボスだったセラス・アルフィードなんだろ? それなら今の内にしっかりと鍛えておけば野盗なんかに負けるわけないよな?」
俺はすぐにそんな結論に思い立った。
おそらくゲーム本編の俺が野盗に捕まったのは俺に力が無かったからだ。そして今日のクソ親父との会話から考えるに、俺は子供の頃からずっと魔術の勉強をさせられていたんだろう。
でも俺ことセラス・アルフィードには魔術の才能は一切ないんだ。だから俺が子供の頃から毎日魔術の勉強をした所でそれは全部無意味なんだ。
そして何で俺がそんな事を知っているのかというと、それはゲーム本編でセラスのステータスにしっかりと反映されていたからだ。
ゲーム本編でセラスとは何度も戦う事になるしステータスも毎回確認出来るんだけど、セラスの魔力値だけは最初から最後までずっと“0”のままだったんだ。
でもその代わりに最終戦でのセラスのステータスは魔力値以外全てがカンストしてるというガチで恐ろしい状態になっていた。
そしてそんなぶっ飛んだステータスだったからこそセラスは倒すのが滅茶苦茶難しい最強格のボスだったんだ。正直ラスボスの魔王戦なんかよりもセラス戦の方が遥かに手こずったからな……。
「という事は魔術の勉強ばかりしてるわけにはいかないよな。これからは生き残るためにしっかりと身体を鍛えていかなきゃだな!」
それで野盗に捕まらずに返り討ちにする事が出来れば、きっとその後の俺の人生は闇落ちする事なく幸せな日常を歩めるはずだ。
そしたら絶対にのびのびとしたスローライフな人生を歩んでみせるぞ!
「よし、それじゃあこれからは野盗を返り討ちにするために自分の身体を鍛える事と、最終的にスローライフを楽しむのなら今の内に金策も考えていかないとだな!」
俺の最終的なゴールは畑を耕したり釣りをしながらまったりと過ごすスローライフな人生だ。そのためには絶対に金が必要になるはずだ。
まぁでも金の稼ぎ方については既に一つ名案を思いついていた。それについては今度街に行った時に試してみる事にしよう。
「ま、とりあえず現状考えておくべき所はこんなもんかな?」
もちろん不安な要素はこれ以外にも沢山あるけど、でもとりあえず今は俺が力を付けていく事と、金策をどうにかする事さえ出来れば後はどうにでもなるだろ。
「よし、それじゃあ早速、まずは剣の素振りから始めていくとするかな!」
という事で俺はこの日から毎日鍛錬を始めていった。まず最初に小屋の中に置かれていた護身用の剣を手に取って体力の続く限り素振りをやり続けていった。
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