ムシン
金時Aya
第1話
現代よりずっと昔のお話。幻とされていた、今ではありえない高度な技術を持った文明がありました。
それは今よりも、とても発展しており、現代ではありえない、鳥の如く空を自由に飛び回れる道具、遠方までの距離を一瞬にして移動することができるテレポーテーション、無尽蔵に使えるエネルギー…そして禁忌とまで言われた、歴史をも改変させてしまうタイムトラベル。
昔はそんなものが当たり前だったのです。
しかしながら、そんな文明がいつまでも続く訳がありませんでした。
その文明は同じ種族間の争いによって一晩で消えてなくなってしまったのです。
高度な技術を持ったが故に自分たちの首を絞めてしまったのでした。
しかし、そんな高度な技術を持ってでも不可能なことがありました。
それは感情を創ることです。人間の感情を作るということは今も昔も難しいことは変わりなりませんでした。ロボットはあくまで人間の命令によって動かされていたためにそれ以外のことはできない仕組みになっています。
しかしとある博士は人もただ複雑になっただけのロボットのようなもの、つまりロボットにも感情を宿すことは可能。
そう考えたのです。
そうしてその博士はロボットに感情を宿そうと創り始めたのです。
博士は実験を繰り返しいくつもの試作品を創っていったのです。
何十、何百の試作品が創られたか。
創られては捨てられ、そういう運命を辿ったロボット達。
ところが556体目の個体は他の個体とは違いました。
「ボルト静脈、静脈正常、演算装置正常、エネルギー循環装置正常、二次演算思考プログラム正常、起動」
そう言い博士は起動スイッチを押した。
特殊な液体の中に入ったロボットが導線から外され独立して動き始め、1歩2歩と動き、博士の前まで行き口を開いた。ロボットが自力で動き、口を開くなど今前まではありえないことだ。博士は小さくガッツポーズをし、そのロボットを見つめた。
「おはようございます。マスター」
「よし、成功だ、今日から試作実験体556番。お前の名前をココロと名付ける」
「ありがとうございます。マスター」
「ココロ。最初で最後の任務を告げよう。これからお前は一人になるかもしれない。きっとあと数時間で我々人類は滅びるだろう。だがお前だけはなんとしてでも守る。」
「過去にこんな高度な文明があったことを証明するために。お前の任務は……だ」
「了解しました。マスター」
「ココに禁忌であるタイムマシーンがある。未来にしか行けない片道切符だ。ココロよ、これを使い未来にいけ。そして任務をこなすんだ。」
「了解しました。マスター」
ココロに任務を説明する博士は何処か寂しそうな顔をしていた。
これから滅びゆくこの文明を案じてのことだろうか、それとも生まれたばかりなのに博士の命令に一切疑わず従うロボットに罪悪感が沸いてしまったのでしょうか。
だけど、感情がないロボットであるココロにはそんなことは一切わかりません。
そしてココロという生まれてまもないロボットは博士の最初で最後の任務をこなすべく未来へ向かってしまうのだった。
ーーー【あとがき】ーーー
頑張って作ってみました
気に入ってくれると嬉しい限りです
ムシン 金時Aya @KintokiAya
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