第1話:新たなる挑戦
2024年4月26日、夜20時過ぎ。和歌山県串本沖約400km、太平洋上空。
『
〈マンボ・シエル
『マンボ・シエル
〈マンボ・シエル
高度11500メートルで夜の太平洋上空を飛行するコックピットで交わされる、東京
「――しかし、何度か後席に乗ってフライトしたことはあるものの、完全な夜間飛行というのは初めてだ」
だが、先程管制と交信をしたパイロットの真後ろに着席するもうひとりの乗員が、装着した酸素マスクの中に内蔵されたマイクからインコム越しにパイロットに声をかけている時点で、その想像は誤っている。
「――夜空を雲や地上の灯りにほぼ遮られることなく見上げながら空を飛べるのは、
搭乗中の機体・F-2B/XR 23-8114号機・通称『サムライ・ヴァイパー』の機長を務める岩崎昇平三等空佐が鋭く周囲に視線を巡らせ安全確認をしつつ後席の搭乗者の言葉に反応する。
現在当機は本日までの約一年間、日本本土から遠く離れた民間人とは無縁の島・硫黄島の航空基地で行われていた機体性能評価試験を終了後、この機体を運用する特種技術実証機試験隊が所属する岐阜基地へ向けて一時帰投すべく、民間航空機と同じ速度・航空路を使いフェリーフライトを行っている最中だった。
「――こうして戦闘機の後席に座って飛べるのも、今夜限りだろうなぁ」
前席に座る岩崎の言葉に、後席の男は周囲に広がる漆黒の夜空を瞼に焼き付けようとじっくりと見渡していた。
「前で飛ばすパイロットが変わるだけで、『搭乗検査員』資格持ちの機付長の出番がないとは限らないっしょ?」
航空路上を管制の指示通りにオートパイロットが機体を飛行させているとはいえ、引き続き計器と漆黒の夜空を交互に確認することに余念がない中でも、何気ないような口調で返す岩崎の言葉を、この機体の機付長である村田亮平三等空曹は到底真に受けられなかった。
今回のフライトをもって、当機の専属メインパイロットの座が岩崎から『本来のメインパイロット』へ移ることが決まっている。岐阜基地でしか行えない整備の実施を兼ねて、後任パイロットを『受領』した後直ちに硫黄島へとんぼ返り。その後は休む間もなく硫黄島で朝から晩まで後任専属パイロットの速成練度向上訓練を完了させる。
そしてその後再び岐阜基地内で『最終整備』を実施したのち――。
「――『向こう』で搭乗検査が必要にならないように『
村田はとりあえずこの機の機付長としての責務からそう口にした。
そう答えてから、村田はふと考えた。一年前、前席に座る岩崎がこの機の『初代専属パイロット』として現れてから今日までの、長いようで短かった一年ほどの月日をどのような心持で過ごしたかを。そして村田をはじめとするこの機体に最初期から関わった人間がこれまで続けてきたことが、何故『ウエからのお墨付き』得たのかを。
考えるまでもない。これから先『
村田は改めてこの一年の月日を思い返す。そこでようやく、岩崎があの日から今日までの一年で、その『顔つき』を明らかに変えていることに今更ながら気が付いたのだった。
それに引き換え自分はどうだ?
いや、とてもじゃないが現段階では肯定の言葉を口に出せたものじゃない。
ここから先、この機を待ち受けている
「――例え俺が飛ばそうが『後任』が飛ばそうが、この機体は必ず無事に連れて帰ってくるし、この機体を最初にモノにした俺が徹底的に『後任』に訓練をつけてやる。だからそっちはそっちで、整備する場所が岐阜だろうが
どうやら、こちらのそんなざわめく幼稚な心の中は彼にはお見通しだったらしい。
もしかしたら、彼は自身の覚悟が一番伝わるように、本来ならばこの機の後を追うC-2輸送機に便乗して岐阜基地へ戻る予定だった自分をこうして後席に乗せたのではないか。
とんでもない雰囲気を持ったパイロットが現れた。
村田は一年前、岐阜基地の格納庫で岩崎と久方ぶりに再会した時感じたあの空気感を、高度一万メートル超の夜空の下で再び感じた気がした。
◇
2023年4月初旬。航空自衛隊岐阜基地。
「――飛行班、岩崎昇平三等空佐。参りました」
岐阜基地所属の主要部隊である飛行開発実験団を束ねる団司令執務室のドアの向こう側から凛とした誰何の声が聞こえた。
「入れ」
飛行開発実験団司令・鳴海章一空将補がその声に対して入室を許可する。ドアの向こうから一歩入ってきた端正な顔立ちをしたフライトスーツ姿の男が、実に自衛官らしいメリハリのついた最敬礼をすると、団司令の執務机の前に背筋を伸ばし立った。
「――団司令直々に私をお呼びとは……、どのようなお話でありましょうか?」
気をつけの姿勢のまま直立する岩崎の姿をまじまじと眺めるばかりの鳴海に、痺れを切らした岩崎がたまらずに口を開いた。
「――『
鳴海が苦々しく口にしたその言葉に、岩崎の表情により真剣な色が深くなる。
「――国防に限らず、秘密を秘密たらしめるために最も重要な原則、それこそが『
鳴海のその言葉に、岩崎の表情が一瞬険しくなる。
「現時点でこの話に関する最適任者が君だ。そして今回の件はいち自衛官、いやいち
鳴海がそう問うと執務机に両肘をついてこちらを見上げる。その真剣なまなざしを真正面から受け止めていた岩崎の表情に、不敵な笑みが浮かんだ。
「――――団司令、僭越ではございますが、『
その言葉をある意味予期していた鳴海が胸の奥から大きくため息をつく。
観念した鳴海は執務机の鍵が掛けられた引き出しの中から、無地の丸タック付封筒を取り出し、その中身を岩崎の目の前に向けて置いた。次いで別の机の引き出しから取り出された書類・履歴書を手に取りめくり始めた。
「岩崎昇平、現在の階級は三等空佐。2007年63期航空学生として入学、2011年に操縦士資格を取得後戦闘機操縦課程へ進み、翌年三沢基地の第3航空団第3飛行隊に配属。
鳴海は一旦言葉を切ると、先ほどまで読み上げていた岩崎の経歴書に視線を落とす。
「しかもF-2だけでなく、原型機のF-16についてもアメリカでFWICを修了できるほどに熟知し、SEAD任務についても訓練を受講した経験を持つ。飛実団の歴代パイロットの中には、F-2開発に合わせてF-16の操縦訓練を受けた者は多いが、ここまで相互の機体を熟知している者は、恐らく君くらいのものだろう」
鳴海は、岩崎が着用しているフライトスーツに付けられたいくつかのワッペンに視線を向ける。飛行開発実験団所属を示すパッチとは別に、左腕の部分に付けられたふたつのワッペンに目を留めた。黄色と黒のツートンカラーに塗り分けられたダーツの的を象ったマークを取り囲むように"GRADUATE US AIR FORCE WEAPONS SCHOOL"と刺繍されたそれは、米空軍ネリス空軍基地に拠点を構える、米空軍士官に兵器に関する最新かつ大学院レベルの高度な教育を施し、トップクラスの教官にふさわしい士官を輩出することを目的とする米空軍兵器学校、そのうちのF-16
岩崎は
左腕についているもうひとつのワッペンは、イタチのキャラクターを取り囲むように刺繍された"WILD WEASEL"そして"YGBSM"の文字が入ったもの。これも本来空自の
イタチのキャラクターの下に刺繍された"YGBSM"というのは、You
本来であれば活きることのなかったこれらふたつのワッペンが証明する彼の能力が、今まさに必要とされようとしているのだ。
「――そんな君にだからこそ任せられる任務であり、これまで培ってきた能力を全て活用してもらいたい。では具体的な話に入ろう。君には今日限りで、飛行開発実験団隷下の『特種技術実証機試験隊』の飛行班へ異動してもらう。その試験隊が保有する機体の専属パイロット、ならびに試験隊隊長として、まずは君にその機体で飛んでもらう」
「――私が飛ばすのは、新型機でありますか?」
岩崎のその言葉をかき消すように、離陸する戦闘機のアフターバーナーの轟音がビリビリと響いてくる。岩崎が聞きなれたゼネラル・エレクトリック開発のF110ターボファンエンジンの爆音だった。
「――いや、君に飛ばしてもらうのは、君がよく『熟知』している機体をベースとした改造機だ」
鳴海はそういうと未だ轟音の残滓が響く窓へ暫し視線を向け、再び岩崎に視線を戻した。
「君もこの話を聞く前から薄々感づいていたとは思うが、飛行開発実験団が使用する格納庫の中にひとつ、やけに人の出入りがなく、厳重に立入規制されていた格納庫がある」
「――9番格納庫?」
岩崎にはその格納庫に心当たりはあった。日頃の任務上基地のあちこちに防衛機密が転がっているので極端に気にすることはなかったが、機密にするにしてもあまりに人の出入りのない格納庫だった。
「そこだ。そこに君に乗ってもらう機体がある。ついてきなさい」
◇
2016年、年末某日の夕刻。青森県某所。
「――
「
F-16DJブロック52Dタイプの後部座席から、砕けた口調ながらも厳しい指示を飛ばす米空軍の教官パイロットに、岩崎昇平一等空尉は了解の返答を返すのが精一杯だ。サイドスティックを握る右手の指先を微かに握っては開いてを繰り返して指先の緊張を解したつもりになった岩崎は、F-16の特徴である前方を遮るものが一切ないキャノピーの向こう側を飛んでいく景色全体に視野を研ぎ澄ませる。前後左右共に僅か数ミリ程度しか動かないサイドスティックに微かな力で入力を掛け、目の前に迫りつつある小高い丘陵の稜線を撫でるような超低空飛行へ持ち込む。
基本的な操作感覚は岩崎が普段乗るF-2と同様、サイドスティックへ入力されるミリ単位の傾きとその持続時間から、最適な飛行姿勢をコンピューターが計算して即座に操舵系統が反応するデジタルフライ・バイ・ワイヤだが、今操縦中のF-16は、巨大な国産
現在の飛行速度300ノット、時速で表せば550キロ以上の猛烈なスピードで飛ぶこのF-16DJが、しっかりと雪を纏った冬のみちのくの山地ギリギリを、右へ左へ鋭く機体をバンクさせて飛行を続ける。岩崎の本能が『もう少し高度を取れ』と警告を発するが、『もっと低く』という
今飛んでいるのは他国ではない。岩崎が生まれ育った日本のよく見知ったような景色だ。それがまるで他国、いや別の世界の景色のように目の前に現れ、瞬く間に飛び去っていく。
文字通りの恐怖感が、喉の奥から猛烈な勢いでこみ上げる。
(
そんな感慨が脳裏を過るより早く、瞬く間に次の丘陵へ急接近し、山肌を縫うべく翼を左右に振って旋回・低空回避する。
岩崎が所属する第3航空団第3飛行隊が行う任務でも、対艦攻撃任務の際には、例え海が多少荒れようが海面スレスレで飛行することはままある。しかし、海面は荒天だとしても数十メートル単位で海面の高さが変化することはないが、地上での低空飛行ともなれば話は別だ。
当時所属の第3航空団司令から『交換共同演習』として打診された今回の
機体は丘陵を越えて、再びみちのくの片田舎の真上をカッ飛んでいく。民家・田畑・道路・電力線鉄塔といった見慣れたものが、時速550キロオーバーで手が届きそうなほど近くを、瞬く間もなく飛び去っていく。やがて目の前に広がるなだらかな丘陵にポツポツと建つ棒のようなものが見えたかと思うと、その棒の先端に羽根車が視認できるようになる。岩崎は卵を握るより慎重にサイドスティックを触れながら、風車の羽の上限より下を飛び抜ける。直後視野の下方が広くなり、すかさずサイドスティックを左側にわずかに動かし
◇
2017年、真夏の某日。アメリカ合衆国・ネバダ州ラスベガス。
澄み渡った青空の下にはどこまでも広がるモハーベ砂漠の荒涼とした光景が続いている。空軍の演習空域が設定されたエリアに、人工物らしきものはほとんど見当たらない。あまりに人の営みに乏しい風景である。
ネオンサインのカクテルカラーの灯りが常時繁華街を照らし、24時間休むことなく陽気で軽薄な空気に包まれ続ける『眠らない欲望の街』。
ラスベガスと聞いて世のほとんどの人が思い浮かべるのは、このようなイメージだろう。
一方の岩崎がラスベガスと聞いて思い出すのは、どこまでも続く荒野とやたらめったら大きい空軍基地の施設、それに加えてこの広大な荒野のあちらこちらに点在する『あまり長いこと注視し続けてはいけない
「――どこだ……? どこに逃げやがった……?」
そんなラスベガスの空の上でF-16CJブロック52Dタイプのコックピットに『縫い付けられた』岩崎が、周囲一帯ほぼ遮るもののないキャノピー越しに四方に鋭く視線を飛ばし、高度15000フィート上空で旋回の軌跡を描きながら毒づく。
突如操縦しているF-16CJブロック52Dタイプの
「どこだ? どこにいる?」
岩崎が何度も四方に鋭く視線を飛ばす。数秒後、
「
再び毒づいた岩崎の捉える景色の中、米粒よりも小さく、それでいて鍛えられた強靭な眼がはっきりと、鳥やキャノピーの汚れと明確に異なる『敵機』の姿を捉えた。それも、自機のほぼ真後ろという、
「ックショウ! 空自舐めんなよ……ッ!」
だからといってそこで彼が潔く白旗を上げるわけがない。そのような人間に
そして今
〈
「クソッ!」
岩崎の左手が握り拳となってコックピットのフレームに叩きつけられた。
ラスベガスに本拠地を置くネリス空軍基地内には、『アメリカ空軍兵器学校』という学び舎が門を構えている。
ここで学ぶ者たちはいわゆる『
その学び舎のひとつこそが、
岩崎そこへ航空自衛隊から『留学生』として単身渡米し、"F-16 Fighter Weapons Instructor Course"にてF-16の兵装教官を目指し意気揚々と学び舎の門を叩いた。
そこで待っていたのは日々繰り返される
これまでにも、自身より圧倒的に『強い』相手と
結果として、アグレッサーパイロットはとにかく強かった。彼らの使用機体が空中戦を得意とする制空/邀撃戦闘機のF-15DJという点を差し引いても、である。同じF-15Jを運用する実戦部隊と
しかし、アグレッサーパイロットの真の本領は空中での
しかし、このネリスにおけるF-16 FWICでの訓練で味わった『挫折』は、空自のアグレッサーからの比ではなかった。何せFWICの教官パイロットの中には米空軍の任務で実戦を幾度となく経験した猛者揃いだ。実戦経験のない空自のアグレッサーが弱いのではない。強い者をさらに上回る強さで、彼らは容赦なく襲い掛かってくるのだ。そして訓練後のデブリーフィングも、アグレッサーより輪をかけて理詰めで問い詰め続けてくる。それが自らの力でいかなる状況からも敵を倒し基地へ帰還することができるための能力を、教官レベルにまで高めるためのステップであることは、空自時代の経験でわかってはいるのだが、これまでのキャリアで自身の中に培われた『自信』など、ここでは屁のツッパリにさえならないことを思い知り、より謙虚に己の戦技を磨くという、基礎中の基礎だが得てして忘れがちな教訓を、ラスベガスの荒野に広がる空の上で身につけることとなったのだった。
団司令執務室を出て基地の
どんなF-2が、どんな任務が待っているのか。
それは件の第9格納庫の入口に手をかけるまで、岩崎には見当もつかなかった。
◇
航空自衛隊岐阜基地・第9格納庫。
人間用の入口の扉に設置されたテンキーと静脈認証を通して開錠した鳴海がドアを開け、岐阜基地に在籍して4年となるが今まで一度も足を踏み入れたことのない第9格納庫の中に岩崎は立った。天井の明り取り窓から射し込む春の陽光が作るスポットライトに照らし出されて、1機のF-2Bがそこに鎮座していた。
「団司令、いらっしゃいましたッ!」
庫内のどこかで腹の底から飛び出したその声に、これまで訪問者などそっちのけで熱心にF-2Bを整備していた整備員たちが一斉に顔を上げると、全員がF-2Bの前に整列し、最敬礼した。鳴海は整備士たちまで歩み寄って彼らの最敬礼に答礼すると、岩崎を一瞥した後に口を開いた。
「本日付で特種技術実証機試験隊飛行班へ異動となった岩崎昇平三佐だ。彼には本日以降このF-2B/XR・114号機の機長として試験飛行の任務をこなしてもらうとともに、この特種技術実証機試験隊の隊長も務めてもらう。では岩崎新隊長」
鳴海による簡潔な紹介が終わり、話のバトンが早々と岩崎に引き継がれる。まだ横で話を聞いていると思い岩崎が話し始めようとしたところ、鳴海はそそくさと整備士たちへ敬礼し、後は任せたと背中で語りながら去っていった。鳴海の姿が格納庫入口のドアの向こう側へ消えたところで、岩崎は改めて整備士たちと相対し、敬礼の後に口を開いた。
「――本日付で特殊技術実証機試験隊飛行班、ならびに同隊長に着任した岩崎昇平三佐だ。第3飛行隊から飛行開発実験団に転属となった後に、今回この職を拝命することとなった。よろしく頼む」
とりあえずは自衛隊式の型にはめた挨拶を『儀礼』として終わらせて、岩崎は早速最初の『仕事』にかかった。
「とりあえず堅苦しい挨拶は一旦ここまで。さてと……」
岩崎は居並んだ整備士たちの中によく見知った顔を見つけた。
「お久しぶりです、村田三曹。百里の3
「こちらこそお久しぶりです、岩崎三佐。ようこそ、我が特種技術実証機試験隊へ。整備小隊隊長兼114号機機付長をしております」
ごつごつとした手を差し出してきた彼の名は村田亮平。航空自衛隊に入隊後、整備畑一筋で主にF-2の整備に携わってきたスペシャリストであり、岩崎をはじめ部隊のパイロットが全幅の信頼を置く整備士のひとりでもあった。
「よろしく。――とりあえず、今は団司令もいらっしゃらないので、互いの階級や職務に関することは一旦忘れてくれ。少しみんなから話を聞きたいんだが……、村田さん」
「は、はぁ……」
新隊長の着任後らしからぬ展開に、村田が少々戸惑いながら岩崎を見返す。
「――こう言っては隊長の面目が潰れてしまうが正直に聞きたい。まずはこのF-2Bが何者で、こいつは一体何の任務に就いていて、最終的に我々に何をさせようとしているのか、わかる範囲で教えてもらえないか?」
そんな岩崎の発言に、村田だけでなく整備士一同が驚愕の表情を浮かべる。
無理もない。新任隊長が部隊・装備・任務の詳細のいずれも何も知らされないまま着任するなんて、自衛隊どころか
「――鳴海団司令は、本当に何も説明されなかったのですか?」
鳩が豆鉄砲を食ったような村田の表情もよくわかる。その問いに岩崎が頷くと、村田はため息ひとつ深々と漏らして話し始めた。
「今回の話、今の団司令からすれば、せっかく手塩にかけて育ててきたテストパイロットをいきなり召し上げられたわけだから、必要最小限、もう極力関わりたくないってことなのでしょう。そもそもここがこうなったのは先々代の団司令の時の話なので」
村田のその言葉で、鳴海の団司令執務室での何かが引っかかるような物言いの正体にようやく気付くことができた。
「先々代となると……、俺の転属と入れ替わりで防衛装備庁へ出向になった福井空将補か……。まさかここでもうひとり『知ってる人』の名前が出てくるとは」
岩崎が肩をすくめる。福井は以前、岩崎が所属していた第3飛行隊の隊長だった元F-2パイロットだ。
「世の中広いようで狭いものです。で、今はこうして『特殊技術実証機試験隊』なんてそれっぽい部隊名称が付いていますけど、元々はその……、言ってしまえば『非合法』にやっていたものでして」
その言葉に岩崎は耳を疑った。岩崎より長い月日をこの航空自衛隊で過ごし、真っ当な下士官としてキャリアを積んできているものと思っていた村田が、よもや『非合法』な活動に関わっていたとは――。
「安保法制も大きく変わり、さぁこれからより本格的に防衛力の強化をしっかりとやっていける……、と直後は淡い期待を抱いてはいたものの、結局法制が変わっただけでは早々容易く予算枠の幅は変わらなかったわけで。本当は予算要求を出して国会で審議された上で、結果降りた予算で真っ当に研究開発をしなければいけないわけです。ただこれもまた岩崎さんには釈迦に説法でしょうが、この国の周辺キナ臭い国ばかりですからね。特に中国などの航空戦力は年々指数関数的に量・質共々向上している。実戦部隊の戦闘機配備数では中国軍に勝てないのは火を見るより明らかな状況で、何もしないでただ手をこまねいているわけにはいかない。さらには
その言葉で、3
「確かに、3
「で、空自で保有する戦闘機のうち、まだ今後10年程度運用される予定があり、我々が手を加えやすいということで、テストベッドの白羽の矢が立ったのがこの114号機」
格納庫内に鎮座する機体を見上げる村田に習って岩崎もそのF-2Bを観察する。塗色は通常の量産機と変わらない、青と紺色のツートーンで構成された独自の洋上迷彩を纏っているが、いつもなら原型機のF-16と同様に機首下に大きく開いた口のような半円形のエンジン用のエアインテークが設置されているはずだ。しかしこの114号機のそれは操縦席の真下部分が丸くコブのように膨らみ、インテークの入口も通常は横から見て垂直に切った断面のような開口部となっているものが、インテーク下部がスコップのように突き出した、不思議な形状に改造されていた。
「――やっぱり気になりますよね、エアインテーク。これはダイバータレス超音速インレット、通称DSI。とりあえず今はまだ話すことが山ほどあるから手短に言うと、従来型より軽量・コストダウン・亜音速比過剰出力の向上、さらには雀の涙程度ではあるが、前面の
そう言って村田は114号機のエアインテークをトントンと叩いてみせた。
「こういった部分に始まって、兵装・アビオニクス双方を、現在研究中の世界各国のありとあらゆる新装備を実際に装備して試験するための拡張性なども考慮して広範にわたって既に改造され、地上での適合試験なども行っています」
「世界各国からありとあらゆるって……、日本以外から装備を試験導入するのはままあるけど、ここまで極秘裏に行わなくとも」
「岩崎さん、例えば飛実団でイスラエル製のミサイルなど装備を試験導入して、一般市民からも見えるこの岐阜基地の周辺環境で他の装備品同様に試験できると思います?」
村田が意地悪気な笑顔を浮かべながら発したその言葉に、岩崎は納得するしかなかった。
イスラエルは、その歴史上の経緯から武器に関し積極的な研究開発への投資と、『自国防衛』という名目での実戦投入で得られた高い技術力と実績を持つ国だ。それはつまり、周辺のアラブ諸国ととことん関係が悪いという問題も孕む。
困ったことに我が国は、イスラエルとも、彼らからすれば『敵』であるアラブ諸国とも長年の友好関係がある。双方日本の国益に適う関係のため、双方共に波風を立てるようなことは表向きやりたくない。それがこの国の基本的な中東外交での考え方である。
「もちろん、我が国で開発した装備も多数搭載済みです。P-1の技術を応用したジャミングに強い戦闘機用
「――技術的なご講釈の最中に申し訳ないんだが……」
技術的な面を実に楽しそうに話す村田に、岩崎がわざとらしく咳払いをしてブレーキを掛ける。3
「ところでこのF-2B、いったいどこから持ってきたのよ。少なくとも飛実団に配備されている機体は俺がこれまでの4年間で全機乗ってきたし、そもそもB型の量産機は東日本大震災の津波で松島の機体がやられて常時定数が不足気味っていうのに――」
「――それですよ。この114号機、元々松島所属の機体だったんです。何せ松島時代にコイツの整備を担当していましたからね。それを兵装実験機としての改造込みで復活させたのが、このF-2B/XR 114号機。まぁ多くの関係者はコイツのことを『サムライ・ヴァイパー』なんて呼んでるそうですが」
「ちょっと待った。津波で被災したB型は修復後全て松島に再配備されて、なんなら他の部隊からも何機か回して機種転換訓練を行っているのに、そこから引っ張り出せる余裕なんて――」
岩崎が思わず身振りまで出るほどの疑問をぶつけられた村田は、今度は先ほどより落ち着いた口調で語りだした。
「そうです。確かに訓練用のB型で『正規』に復旧された全18機中13機は全て松島に再配備されたと『公表』されました。そしてそのリストの中に、この114号機は含まれていません」
村田は一旦言葉を区切ると、機首のキャノピー直下に記された『114』の機番をしばし見つめた後、言葉を続ける。
「この114号機の松島での機付長、私の先輩でしてね。岩崎さんならよく分かると思いますが、我々整備小隊の人間にとって、担当する機体は『我が子』同然です。その我が子同然の存在を突然津波で喪ったんです。私もですが、松島時代の機付長が特に、相当堪えてましたよ。ただ、それでも我々は松島の、第4航空団第21
村田が我が子を愛でるように114号機の機体に触れる。
「この114号機は辛うじて再飛行まで持ち込めるか否か、その瀬戸際くらいの損傷具合でした。東日本大震災の被災地を映した写真で、松島の庁舎に
村田の話を黙って聞いていた岩崎が114号機をじっと見つめ直す。その姿に大津波に揉まれ、建物に突っ込んだ形跡など一切ない。まるでそんなことなどなかったかのように、そこに力強く佇んでいた。
「なるほど、東日本大震災の被害で一度『死んだ』はずの『帳簿にいない』機体を蘇らせる、と来たか。空将補もなんとまぁ大胆な計画を考えたものだ。にしても、こんな非合法活動がバレたら、それこそトップクラスの不祥事で上へ下への大騒ぎになりそうなものを、一体どうやって一応の部隊の体裁まで整えさせてもらえるまでに持ち込めたんだ? 普通なら関係者諸共懲戒免職モノだろうに」
岩崎の言うことはもっともな話である。シビリアンコントロールの下、国防の任務を担う自衛隊を始めとする官公庁は本来、年度ごとに予算要求として事細かに予算の金額と使用使途共々、国民の代表である国会議員が国会で審議し、可決されてはじめて動くことができるのだ。予算の目的外での、それも非合法な使用など露見すればたちまちスキャンダルとしてマスコミに叩かれ、関係者はトップ含めてまとめて処分、最悪は時の政権にまでダメージが及ぶ、というのが定石のはずだ。
「それはまぁ、『ウエ』の鶴の一声、ですよ」
「『ウエ』って、航空開発実験集団司令官? それとも防衛大臣?」
いずれも否定されたところで、岩崎の表情に驚愕の色が濃くなる。
「今の国際情勢、特にウクライナが戦禍に見舞われ西側諸国に対して支援を求めている中、我が国も被殺傷性の武器以外という制限を掛けつつ自衛隊装備品を供与したり、民間からも地雷除去やインフラ復旧などの人道的な支援はたくさん行われている。しかし、この国はどうしても『武器』そのものの直接的な提供にはゴーサインが出せない。戦争への介入のエスカレートによる巻き添えを恐れたり、それ以上に反発される『かもしれない国民の声』に怯えて。何より、今この国から『供与』という形を採ることができる機体など1機もないカツカツの状況ですからね」
村田の言葉を岩崎は腕を組み、黙って聞き続ける。
「しかし、今ここにいる114号機という機体は、表向きにはもう『装備』ではない扱いです。コイツは本来我が国の会計上では『あるはずのないモノ』、そして『本来あってはならないモノ』というわけです。『ウエ』としてもこれほどなんとか表沙汰にせずに『処分』したいものはない。そして、このF-2の原型機であるF-16を供与して欲しいとウクライナは西側諸国に求めている。まだアメリカの大統領が首を縦に振らない関係で正式に決まったわけではないが、今年の議長国ということもあって、広島サミットまでにはなんとか我が国としては外交的なケリをつけたいはず。それを国内政治的にこの上なく面倒なコイツの『処分』も兼ねてまとめてケリをつけてしまおうと、そういうことです」
岩崎が深くため息を付く。鳴海があれほど露骨に『辞令の拒否』を申し出ても悪いようにはしない、とも取れる言葉を並べ立てていた理由が、十分にわかったからだった。それでも、岩崎は敢えて村田に訊ねる。隊長として、部下たちのことは誰よりもちゃんと理解し、彼らの責任を負わねばならない。それが佐官たる幹部自衛官のやるべきことだからだった。
「それで、俺はこの114号機を飛ばして、何をするんだ? 最終的に、俺たちはどこへ向かうんだ?」
「我々がまず最初にやるべきことは、F-2BからF-2B/XRという別の戦闘機に生まれ変わったこの114号機が、設計要求通りの性能を発揮して運用ができるかどうかのテストフライト。それが終わったら、今頃からF-2への機種転換訓練が始まる新しいパイロットをF-2・F-16どちらに対しても『教官』パイロットを務めるにふさわしいレベルにまで育て、育ち次第前席に乗せての運用訓練。最終的には、ウクライナ上空で、実際にこの機体で新装備や兵器をテストする。もちろん、実戦で」
村田が岩崎の目を真っすぐ見つめている。どこか現実味のないその視線を受け止めながら、岩崎は彼とは全く違う感慨を抱いていた。
◇
岩崎が特殊技術実証機試験隊へ着任してから、彼らの計画の進捗速度は目に見えて早くなっていった。
スーパーコンピューターで実物を試作せずとも工学的問題を事前に洗い出し、その上で実物を作り上げることが可能な分野も広がりつつあるまで技術は日々進歩している。しかし金属・複合素材など数十万個もの部品を複雑に組み合わせて作られた航空機には、数値上の解析だけでは見つけ出すことのできない問題が未だ無数に眠っている。いくら腕利きの整備士や技術者たちが集結していたとしても、彼らが組み上げた成果の結晶たる機体に文字通り命を預けるのはパイロットだ。整備士や技術者にはないパイロットの眼や感覚による眼差しが入ることではじめて、航空機の能力は保障されるのである。
岩崎は最終整備に入ったF-2B/XRの状態確認と並行して、岐阜基地内に設置されている多目的フライトシミュレーターを使い、飛行開発実験団の本来の任務の合間を縫ってF-2B/XRのフライトトレーニングに明け暮れていた。基本的な性能はF-2Bと変わらないように設計されているとはいえ、制御系がフライ・バイ・ワイヤからより反応速度の速いフライ・バイ・ライトに置き換わり、エアインテークの形状が変わったことによって音速以下の速度で飛行する際の余剰推力、つまりは『力の余裕』の度合いが変わってくるなど、試験飛行でチェックすべき点を事前に予習しておく必要がある。変更点があればどれだけ些細な事であったとしても、可能な限りフライトシミュレーターで演算するモデルの諸元に反映し、その特性を細かくかつ正確に把握する。
そうしておかなければ、実機で試験飛行した際、ある操縦を実行するためにサイドスティックや
その語感や世界的に有名な映画での描写などから、どうしてもテストパイロットという存在には『勇猛果敢』『命知らず』といった表現が当てはめられがちである。しかし、現代に生きる実際のテストパイロットは決して勇猛果敢でも、ましてや命知らずでもない。操縦する機体が超えてはいけない限界の淵ギリギリを、時に臆病な心を、時に『論理的な勇敢さ』を胸に、正確無比な操縦を行い、データと機体を基地へと持ち帰る。それがテストパイロットという仕事なのであり、今は同時に
シミュレーターでの予習が進む中、深夜帯に滑走路での
それら地上で可能な試験がすべて完了すれば、早速改造後の初飛行に移行する。通常なら初飛行は離陸地周辺を飛行して基本的な状態を確認次第そのまま同じ飛行場に着陸するのだが、今回の場合は出来る限り一般市民の目が確実に届かない場所に移動をしなければ満足な試験飛行を行うことができない。そのため、岩崎は必要な私物を先発の輸送機に預けると、岐阜基地から遠く太平洋上の一般市民立入禁止の島・硫黄島の航空基地へとロングフライトを敢行したのであった。もちろん、ほぼ前例のないフライトであるため、岩崎を始めF-2B/XRに関わる面々は緊張のし通しではあったが、幸い機体にはこれといった不具合も出ず、無事に硫黄島航空基地までフライトすることに成功したのだった。
硫黄島に着陸しメンバー全員が揃い、硫黄島恒例の戦没者慰霊碑への慰霊を済ませたところで岩崎は休む間もなく試験飛行へと飛び立っていく。聞くところによれば、岩崎が後にこの機体を預けるパイロットは、無事に来日を済ませF-2機種転換に向けた実地訓練を始めているという。その訓練が終わり我々のところへそのパイロットが送り届けられるまでに、この機体の諸元の正確性や改善点などを洗い出し改修を済ませておかなければならない。そのため、離陸して試験飛行して着陸して、極力短時間でデブリーフィングを行いそれが終わったら次のブリーフィングを行い離陸する……、といった一連の流れが昼夜問わず連日続けられることとなった。
〈――
「現在ALT 35020,HDG 288.
〈――了解〉
太平洋沖の硫黄島航空基地専用の試験空域を飛行するF-2B/XRの機内には、遠く本土の岐阜基地からの無線が頻繁に届く。この機体の飛行データは高度に暗号化された後に硫黄島内の伝送施設経由で、岐阜基地内に設けられている
「――OK.じゃあ、ライトターン」
岩崎が短く無線に吹き込むと、サイドスティックをわずかに傾け、右側の
操作を行った直後、ほとんどタイムラグなく岩崎の身体にズズッ、ズズズッ、と重力が暴力的に牙を剥く。岩崎はヘルメットのバイザーに映り込んだ
「OK.
岩崎が試験項目をひとつ終了させたことを報告する。それが終わればまた次の試験を決められた手順通り正確に行う、これが予定されている飛行時間いっぱいまで繰り返される。
先程の旋回のような場合も、掛けていく負荷は段階を踏んで、もちろんコンマ以下の単位まで正確に合わせなければ、技術者はその性能が正解かどうかを判断することができない。まるで精密機械のような再現性のある正確さと、機械のセンサー以上に細やかな感覚を掴み、着陸後のデブリーフィングで技術者に正確に意図が伝わるように説明する。そのような日々が、何日も何日も繰り返された。
ある日の深夜、硫黄島航空基地・格納庫内。
「――――で、今回の
「
「確かに水平尾翼の感度が上がって、機体の尻尾がより大きなヨーモーメントで動いている感覚はある。あるんだけど、なんだか頭の中では普通に旋回している感覚なのに、実際に体感する感覚ではまるでドリフトしているかのように感じて、
格納庫に収められたF-2B/XRのコックピットに座った岩崎と、その横に掛けられたタラップに寄り掛かった状態の村田が、テストパイロットとチーフエンジニアとして、熱の籠った表情と声で互いの意見をぶつけ合う。試験飛行でデータを取り、修正する必要があれば修正し、もう一度試験飛行してもらう、のエンドレス。現代の航空機は、機体制御のほとんどを搭載されたコンピューターにインストールされた制御プログラムのパラメーター如何で大きくその性格が変わる時代となって久しい。テストパイロットが感じる『感覚』を、この機体の面倒を見て責任を持つ機付長がプログラムをコーディングする技術者との間に入り、円滑にコミュニケーションをとって無駄のない試験飛行を行う。今はそのような能力が最も必要とされる状況であった。
あと数日で硫黄島における岩崎の操縦による試験飛行が終わる。
それが終われば、あとは『試験』ではなく『演習』となる。
潰し忘れた問題など残さぬよう、連日の疲れさえ忘れてのミーティングは深夜まで続けられた――。
◇
2024年4月26日、夜23時過ぎ。愛知県常滑市沖5km、伊勢湾上空。
〈――マンボ・シエル
航空無線から当機を呼ぶ声が聞こえてきた。
〈パイロッ
「パイロッ
太平洋の洋上飛行はとうの昔に終わり、紀伊半島の東側を舐めるように北北東の方角へ飛行を続け、機体は愛知県常滑市沖、中部国際空港付近へと接近していた。この空域まで到達すれば、24時間空港の傍とあってこの時間帯でもそれなりの飛行中の
「――――岐阜に降りたら、もう待っているんだよな」
村田は、岩崎の動きが一瞬落ち着いたタイミングを見計らって、そう声を掛けた。
「あぁ、もうだいぶ前に百里から
岩崎はいつもの調子でそう答えると、再び周囲に鋭く視線を向けていた。
この機体が真夜中の岐阜基地に着陸し、我々が降機したそのタイミングから、計画は新たなる
これからは、『専属実戦パイロット』ふたりと機付長として向き合っていかなければならない。
その次の
いよいよ、そのさらに先、NATO諸国での集中訓練を挟み、我々の機はついに『実戦空域』へと躍り出る。
「――ウクライナの今日は、明日の日本かもしれないな」
不意に、岩崎がそのようなことを、特段声色を変えることなく、しかし明らかに深刻なものとして村田にそう言葉を掛けた。
ウクライナの今日は、明日の日本。
数刻の間を置いて、村田はその岩崎の言葉を言い得て妙だな、と思った。
核兵器を持たず、エネルギー資源を国外からの輸入に頼り、なおかつ周囲に『厄介』な国を抱えている。
そんな共通点を持つウクライナは今、ロシア軍による大規模侵攻に敢然と立ち向かい、自国の独立と存続の尊厳を護り抜くべく戦い続けている。
そんなウクライナの空で起きることは、いずれ日本の空にも起きるかもしれない。
そんなウクライナの『実戦空域』での『経験』を、必ず勝ってこの手で持ち帰らなければいけない。
ウクライナの未来のため。
そして我々日本の未来のために。
機体は、着実に岐阜基地へと近づきつつあった。
第1話:新たなる挑戦 終わり
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