第9話私の部屋で寝よ?

(キィ、ドアを閉める音)


「い、いらっしゃい」


「わー。本当に君が私の部屋にいる。えへへ、なんだか照れくさいね」


「あ、あんまりじろじろ見ないで、恥ずかしいよ」


「かわいい部屋? 女の子っぽい? えへへ、よかった」


「ん、えへへ、人を部屋に呼ぶのって初めてだから、緊張するな」


「君も緊張する? そうだよね、私も君の部屋に入ったとき緊張したもん」


(ぽすん、ベッドに寝転がる音)


「あのときはこうしてたら、緊張とかわかんなくなったよね」


「来て」


(ぽすん、ベッドに寝転がる音)


「えへへ、もっと緊張しちゃった? 顔も体もガチガチになってるよ」


「私が君に包まれたみたいに、今日は君が私に包まれる番だね」


(ばたっ、布団を被せる音)


「電気、消すね」


「んー? 大丈夫だよ、今日はお父さん帰ってこないから」


「なんて言って、朝まで寝ちゃったらどうしようね。明日も学校なのに、大変だ」


「君も帰らないといけないもんね。じゃ、アラームかけとくね。よし」


「私たちって、寝るときなにしてたっけ。思い出せないよね。私も。ずっと昔から君とこうしていた気がするけど、本当はまだまだ最近のことなんだなー」


「ずっとそのままだと飽きちゃうよね。ちょっと遊ぼうか」


(ごそごそ、布団の中で動く音)


「えへへ、くっついた」


「手足が絡んでちょっと痛いかな。このくらいなら気持ちいい?」


「私の手、柔らかい? ちょっとぷにぷにしてるかな。手触りが良い? えへー。そんな褒められ方初めてだよ」


「君の手は固いね。君はずっと固いや。寄りかかっても安心できる」


「体に触り合うだけって不健全かなー? 今度は、ゲームとかもやろ。私はやったことないけど、君が好きなやつ、がんばるから」


「ね、本当にありがとう。取り柄のない私と付き合ってくれて」


「付き合い初めてからだけじゃないよ。こんな私の隣で寝てくれて、ありがとう」


「大袈裟? ううん。私にとっては凄いことだよ。今まで、とっても寂しかったから」


「こんなに満たされた気持ちになるのは、君のお陰だよ。えへへ」


「君も、私がいてくれて楽しいって? えへ、えへぇ-」


(どたどた、足をばたつかせる音)


「嬉しくて、寝られる気がしないや。ね、今日は顔じゃなくて、天井見よ」


(ごろん、体勢を変える音)


「今日は、こうしないと寝られそうにないんだ」


「私は君が隣にいるだけで、温もりを感じる。君も、私のこと、感じて?」


「ううん。寝られなくても、こうしてるだけでも、私は幸せ」


「だから、君のこと聞かせて。眠るまでの間、なんでも聞きたい」


「好きな食べ物とか、嫌いな食べ物とか、なんでもないことでも、なんでも」


「ねえ。いいよね」

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