第8話もっとぎゅっとしていい?
(椅子を引く音)
「あ……あの、おはよう。ゆ、夕方になっちゃったね」
「ごめんね登校してからずっと話しかけようと思ってたんだけどちょっと話しかけづらくて。あ、いや、嫌とかじゃないんだけど、なんとなく意識しちゃって」(早口)
「えっと、あ、あなた」
(ガタン、椅子にぶつかった音)
「わっ、や、やっぱりこの呼び方、変かな? 付き合うってなったら、君って呼ぶのも変かなって思って」
「君でいい? うん。そうするね」
「私、付き合うって初めてだから、変になってるかもしれないけど、がんばるからね」
「じゃあ、はい。手を広げて」
「……え、えっと、付き合ってるぽいってことしようと思って、取りあえず抱き合おうかなって」
「えへへ。うん。私がしたいだけ」
(ズズ、椅子をずる音)
「えへへ。じゃあ、わっ」(ぎゅっ、抱きつく音)
「あはは、君から来てくれるとは思わなくて、びっくりしちゃった」
「やっぱり気持ちいい……ん」
(ぎゅっと、抱きしめる音)
「もっと、もっとほしい」
(ぎゅっ、ぎゅっと、何度も抱きしめる音)
「……わわっ、凄い顔してるよ。だらしない……っていうのかな? 口開けっ放しになってる」
「気持ちよすぎて頭ぼーっとした? やり過ぎちゃったかな」
「今ならいっぱい甘えていいかなって思って、ごめんね。どんな関係でも気を遣わないとダメだよね」
「気なんか遣わなくてもいい? 謝り過ぎ? そ、そう?」
「えへへ、そっかあ」
(ぎゅ、抱きしめる音)
「ひゃっ。え、今度は君から? (ぎゅ、抱きしめる音)ひゃう」
「凄い……凄い、安心する」
「目も体も君しか感じられなくて、それがとっても安心するの。君から求めてきてくれるのって、私、こんなに嬉しかったんだ」
(ぎゅ、抱きしめる音)
「ん、強い。あ、大丈夫だよ。もっと、もっとやって」
(ぎゅ、ぎゅ、何度も抱きしめる音)
「ん、はあ。熱くなってきちゃった。ふわあ」
「このまま寝るの、まずいかな。誰か来たら大変なことになっちゃう?」
「でも、眠いなあ(あくび混じりに)」
「えへへ、もうこのまま寝ちゃお?」
(ぎゅ、抱きしめる音)
「うぇへ……あ、誤魔化さないで。むう」
「ね、一緒に寝よ?」
「えへへ。ありがとう」
「肩、借りるね。頭を乗せるよ。目もつぶって、ほら君も」
(ここから囁き声)
「ドキドキするね。もし見つかったら、なんて。でも、私は君ならいいよ」
「あ、今ビクってした。えへへ、こうしてると、お互いの反応が全部わかっちゃうね」
「近くで聞くと余計眠そうな声してる? そうかも。少し話が途切れたら、そのまま寝ちゃいそうだもん」
「私たち、色んなことをしたような気がするけど、一緒に寝てただけだよね。そう考えると変な感じ」
「色んなところで寝られたら、それでもいっか。普通の付き合ってる人でも、色んなところで寝ないもんね」
「前よりよく喋るようになった気がする? うん……そうかな。君と話してるの楽しいから、そうなったのかも。えへへ。私が変わっていたとしたら、全部君のお陰だよ」
「ねえ、次は私の部屋に来て?」
「……あれ、寝ちゃったの?」
「今の、結構勇気出したのに」
「わ、違う? びっくりしただけ?」
「えへへ、うん。今日はこのまま遅くなっちゃうと思うから、明日ね」
「残念そうな声出さないでよー。今は、このまま寝よ」
「ふわあ。もう限界だよ」
「もし起きたときに誰かに見つかってたら、明日から一緒に登校しよ?」
「えへへ、もしもだよ」
「それじゃあ、おやすみ」(尻すぼみに声が弱くなる)
(寝息が聞こえる)
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