第7話君の部屋で寝よ?

(スー、床に足を伸ばす音)


「お、おじゃましてます」


「あ、これ言うのもう五回目だよね。ごめんね。えへへ」


「なんていうかさ、人の家に入るのって小学生以来だから緊張しちゃって。ごめんね、私から来たいって言ったのに」


「君も緊張してる? そ、そうなんだ、あはは」


「家族の人は、帰ってくるまで時間があるんだっけ。それまでには私も帰るよ。その、気まずいし。あはは」


「……え、気になるなら寝てもいいって? あ、あはは、君のベッドを見ていたの、バレちゃってたかあ。あはは。うん、じゃあ、お言葉に甘えるね」


(ぽすん、ベッドに横になる音)


「んん……君の匂いがする。はあ」


「恥ずかしい? そっかあ、えへ」


「君も来て。いいでしょー」


「私、勇気出してるよ」


「勇気の出し方が変? そ、そんなことないよ。確かにちょっとおかしなテンションだったかもしれないけど、でももうここまでやってるし、ほらほら」(早口で言う)


「それに……冷静になると、頭爆発しちゃいそうだから……ね」


(ぽすん、ベッドに横になる音)


「えへへ、ありがとう、えへへ」


(長い吐息が続く)


「目の前に君がいて、君がいつも寝てるお布団に私がいて、なんだか君に包まれてるみたい」


「えへへ。意識したら、どんどん体が熱くなってきちゃった。お布団の上だと余計熱いや」


「ううん。熱いけど、このままがいいな」


(しばらく吐息だけが続く)


「あはは。君のことじーっと見てたら、君のことばっかり考えちゃうね」


「君も? へ、変なこと考えないでね。まだ恥ずかしいから」


「そんなに残念そうな顔しないでよ。まだってことは、いつかならいいってことだよ。だから、あ」


「その、そういうこと、だから。だから……」


(ギュッと、抱きしめる音)


「こういうのが、恥ずかしくないくらいになるから」(耳元で囁く声)


「暖かい……君に直接抱きつくことが、こんなに気持ちいいなんて知らなかった」


「えへへ。なぁに、その顔。びっくりしてるのか、嬉しいのか、固まってるのか、わかんない中途半端な顔してる」


(ギュッと、抱きしめる音)


「ひゃっ。えへへ、急に背中に手を回されたから、びっくりしちゃった」


「私はわかりやすい顔してるって? そ、そんなことないよー。えへ、えへへ」


(ここから囁き声での会話)


「ん……力、つよい……。君って、こんなに頼り甲斐ある体だったんだね。ずっと近くにいたのに、こうするまでわからなかった」


「そうでもない? 大して鍛えたりはしてない? ううん。私にとっては、とっても頼れるよ」


「暖かいな。君とこうしているだけで、暖かくて、ゆったり溶けていきそう」


「離さないでね。じっとしてて。しばらくこうして、温もりを感じていたいの」


「寝ちゃダメだよ。家族の人が帰って来ちゃったら、気まずいもん」


「えへへ。私たち、あとどれだけこうしていようね」


(吐息が一際大きく聞こえる)


「この、まどろみの中で、お互いを感じる時間。私には、とっても幸せに思えるよ」


「君と、ずっとこうしていたいなあ」


「なんてね。えへへ」


(吐息だけが流れる)


「…………そろそろ、帰らないと、かな」


(お互い離れる音)


「本当は、もっとこうしていたいけど、そうもいかないよね」


「ありがとう。たぶん、思い出すとすっごく恥ずかしいことしちゃったけど、嬉しかった」


「君も、良かった? えへへ、じゃあ、よかった。えへへ」


「じゃあ、また、明日」


(立ち上がり、ドアを開ける音)


「あ、あのさ」


「その、こんな流れで言うの、変かもしれないけど」


「わ、わた」


「私と、付き合ってください」

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