第6話屋上で寝よ?

(ガヤガヤと教室で話す声)


「昨日怒られたこと、まだ気にしてるの?」


「君が怒るのもわかるよ。私たち、閉じ込められた側なのにね」


「ほらほら、むすっとしないで。そうだ、ちょっと着いてきてくれない?」


(階段を上る音)

(ドアを開ける音)


「んー。風が押し寄せてくる。はあ」


「屋上の鍵っていつも閉まってるけど、今日は空いてる日なの。点検日なんだって」


「そういう日を狙って、たまにここに来るんだ。危ないから、入り口の近くにしかいないけどね」


「ふふ、嬉しそう。屋上ってやっぱりテンション上がるよね。高いところってだけで気が大きくなるし」


「バカっぽいかな? あ、笑った-。もー、君だって同じなんだからね」


(チャイムの音)


「あ、予鈴だ。もう授業始まっちゃうね」


(バタン、寝転ぶ音)


「え、どうかしたの? 君から寝っ転がるなんて」


「誘われると思ったから、誘いやすいようにした、って。いいの? もう授業始まっちゃうのに」


「えへへ、もちろん私は嬉しいよ。じゃあ、一緒に授業サボっちゃおっか」


(バタン、寝転ぶ音)


「えへへ、固いね。屋上なんてなにもないから、当たり前だけど」


「ひんやり冷たくて、自分の体の熱がよくわかる。上から撫でるように風が吹いてきて、自分の熱も剥がそうとしてくる」


「きっとここにいたら、どんどん寒くなっちゃうんだろうな」


「んー? 今、そんなに悲しそうな顔してた? そうかなー」


(風が吹く音)


「そうかもね。思い出すことがあって」


「聞かせてほしいの? うん、いいよ」


「私のお母さん、小さい頃に遠くに行っちゃったの。そう、もう会えない」


「だから、夜寝るときはいつも一人で。お父さんはよく一緒にいてくれたんだけど、毎日ってわけにはいかなくてね」


「寂しかったな。でもね、夜に目をつぶると、お母さんの暖かさを思い出すの。いなくなるまでは一緒に寝てくれて、寝る前に私をぎゅーっと抱きしめてくれた」


「今でもよく思い出すんだ。けど、どうしても寂しいけどね。えへへ」


「いつもいつも、隣で誰かが一緒に寝ていてほしかった。だけどそんなこと人には言えないし……」


「君を誘えたのは、なんでだろうね? 話しかけやすかったからかな。それとも、君がいつも私のことを見ていたからかも」


「えー気づいてたよ。授業中とか、放課後とか、チラって私のこと見て、すぐ目を逸らしちゃうの。えへへ、私も照れちゃって目を逸らしてた」


(一際強く、風が吹く音)


「話してたら熱くなってきちゃった。私の恥ずかしい気持ち、風に持っていってもらわないとね」


「君も熱い? うん。寝る前って、熱くなるよね」


「熱くてふわふわしてて、テンション上がってて、今ならなんでも言えちゃいそう。ねえ」


「今日、君の家に行ってもいい、かな?」

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