第5話閉じ込められちゃった?

(ドンドン、扉を叩く音)


「と、閉じ込められちゃったね。体育倉庫に閉じ込められるなんて、漫画の世界だけだと思ってたよ」


「さっきの体育が5限目だったから、授業一個サボっちゃうね。仕方ないか-」


「体育用のマットも敷いてあるし、この上で休もっか。授業が終わって、部活の時間になれば誰か来るはずだよね」


(ぽすん、マットに腰を下ろす)


「こういうマットって固いよね。もっと柔らかいのにすればいいのに」


「ごろん。ほらほら、一緒に寝よ?」


(マットに寝転がる音)

(声が近くなる)


「あはは、近いね。ん……変なにおい、しない?」


「良いにおい? そ、そっかぁ。えへへ」


「でも恥ずかしいな。あ、離れないで。私、がんばってるから」


「君をこれだけ誘っておいて、いつまでも恥ずかしいって言いたくないの。だから、こうさせて?」


「えへへ、君に甘えてばっかりだね。ダメだなあ私は」


「そうだ、こういうのどうかな」


(ぽん、ぽん、断続的に優しくお腹を叩く音)


「昔よくおかあさんにやってもらったんだ。お腹をぽん、ぽんって叩いて、寝るまでお話するの。もうずっとそんなことないけどね」


「子どもっぽいけど、こうすると安心するらしいよ。人は人の肌に触れると、ストレスが軽減するんだって。よくは知らないんだけどね」


「君の近くにいると気持ちいいのって、そういうことなのかな。それなら納得かも」


「ぽん、ぽん、ぽん。体を優しく叩く音って、小気味良いよね。そう思うと、人が人に触れるのって、凄く良いことなのかな」


「私ね、いつかこうやって恥ずかしくなくなったら、君をぎゅーっと抱きしめたいんだ」


「あ、あのあの、ごめんね急に変なこと言って。変だよね、付き合ってもないのにこんなこと言うの」


「え……今すぐやっても構わない? ま、まだ恥ずかしいからな-(声が上ずる)」


「優しいな、もう」


「昔から寝るのが好きだったから、こうすれば君に、少しずつでも近づけると思って誘ったの、いつが最初だったかな」


「いつの間にか、事あるごとに一緒にいてくれるようになったよね。私のわがまま聞いてくれて、ありがとう」


(優しく叩く音がやむ)


「このまま寝ちゃおっか。君のお腹に手を置いたまま、じんわりと伝わってくる暖かさを感じたまま」


「君も、私のお腹に手を置いてくれないかな」


(ぽん、ぽん、断続的に優しくお腹を叩く音)


「あう、叩いてくれるんだ。気持ちいい。眠気が湧いてきて、その中に溶けていきそう」


「君の隣で寝られる時間、やっぱり好きだな」


「目が覚めたら、授業サボったって怒られちゃうかな」


「私となら平気? えへへ。私も」


「だから、私が勇気を出せるようになるまで、もうちょっと待ってね」

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