第4話雨宿りしよ?

(雨の降る音)


「雨、やまないね」


「下校途中なのにお互い傘も持ってなかったときはどうなるかと思ったけど、近くのバス停に屋根があって助かったね」


「夕立みたいだし、すぐやんでくれるかな。その前にバスが来ちゃったらどうしよっか。えへへ」


「ねえ知ってる? 傘の中って、その人の一番綺麗な声が聞こえるんだって。たぶん、今も同じような状況なんじゃないかな」


「告白するなら今にすればよかったかなーって思っただけ。えへへ」


「で、あのさ、ここの椅子って背もたれがないよね。でも、ちょっと寝たいの。だから、君の体を貸してくれないかな」


「大丈夫だよ。こんなところで本当に寝たりしないから。少し横になりたい気分なの。寄りかかるだけだから」


「いい? えへ、ありがと」


(体がぶつかり合う音)


「ううん……暖かい。君ってやっぱり気持ちいいね」


「目をつぶったときの雨音って、不思議だよね。どこからでも聞こえるのに飽きなくて、雑に降ってるのに綺麗で。この世界に自分と、雨音しかないような気がしてくる」


「今は君がいるけどね。ふふ」


「服、ちょっと濡れてるね。生暖かいや」


「ごめん、私の髪も濡れてるよね。冷たくてお腹壊しちゃうかな」


「暖かい……わがままだけど、しばらくこうしてていいかな」


「雨に混じって、君の体が動く音が聞こえる。あ、今ちょっとビクッとした。恥ずかしいんだ。あはは」


「私も恥ずかしいな。でも離れたくないな」


「ふわあ。外が冷たいから、こうして体が熱くなると気持ちいいや」


「君に寄りかかっているのって、こんなに安心できたんだね。知らなかったよ。本当に寝ちゃいそう」


「ん、一回離れるね」


(ヒロインが体を起こす音)


「ふわ……ああ。んー。気持ちよかった。ありがとね、あのままいたらぐっすり眠れたと思うよ」


「んー? 君も同じことしたいの?」


「んん……恥ずかしいけど、私もわがまま聞いてもらったんだもんね。い、いいよ」


(体がぶつかり合う音)

(ヒロインの声が近くなる)


「わ。濡れた髪が首元を撫でてきて、ちょっとくすぐったいかも。いやでも、大丈夫だよ」


「あはは、体が固まって動かないや。君が近くにいるのって、慣れてきたと思ってたんだけどな」


(呼吸音が連続で聞こえる)


「心臓、早くなっちゃったみたい。これじゃリラックスしづらいよね。ごめん、えへへ。ひゃう!」


「せ、背中に急に手を当てないでよ。冷たくて、びっくりしちゃった。変な声出ちゃったし……」


「え、凄い動いてる? 息が動いてるのがわかる? うぇーん、恥ずかしいよぉ」


(激しい呼吸音)


「君に、私の呼吸まで感じられちゃってる。ドキドキして、体中火照ってきちゃった」


「ん……あ……」


(しばらく呼吸音と雨音が続く)


「ご、ごめんね。恥ずかしがり過ぎだよね。全然、気まずいなんて思ってないよ。えへ、えへへへ」


(雨音が弱くなる)


「あ、晴れてきた」


(強く地面を踏んで立ち上がる音)


「帰ろっか。あの、本当に全然変なこと考えてないからね」


「で、でも、今すぐ目を合わせるのは、少し恥ずかしいかも」

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