第3話公園で寝よ?

「よかった-。公園のベンチ空いてるよー」


「ここが良いところかって? そうです。公園です。なぜかあんまり人がいないよね」


「来たことない? そっか、遊具も少ないもんね。この時間だと近所の子どもたちも帰っちゃうし」


「うん、ここのことなら詳しいよ。外でぼーっとしたいときはよく来るからね」


「ほら、ここに座ろう」(木製のベンチを叩く音)


(ベンチに座る音)


「どうして連れてきたって、気持ちいいから。弱い日が当たって、風も通って。背もたれに体を預けると、すーっと楽になる」


「ふーはー……気持ちいいねー。すぅ」


「ん、なになに、急に大きい声出して……。無防備すぎる? こんなところで寝るの危ないって、そうかなー」


「あ……えへへ、もしかして心配してくれたの? ほんとー。えへ、嬉しいなあ」


「でも、今は君がいてくれるから大丈夫だよ」


「ふふ、本当は一緒に寝て欲しいけど、隣にいてくれるだけでも嬉しいから」


「それでも寝ちゃうのは心配? 自分も寝ちゃうかもしれないから? そっかぁ。けど折角だしなあ」


「じゃ、じゃあ、手を繋ごうよ。手を繋ぐとね、人って安心できるんだよ! それに、人に触れてたら寝付きづらいと思うから」


「ん……ごつごつして、しっかりしてる。わあ、えへ、えへへ」


「顔赤い? は、恥ずかしいなあ」(声が高くなる)


「私、恥ずかしがり屋だからこんなんだけど、こうやって手を繋いだり、だ、抱きついたりとか、したいんだ」


「今はまだすっごく恥ずかしいけど、いつかね」


「俺のこと好きなのかって……うん。好きだよ」


「いた、いたいいたい。手、手がいたいよー」


「ごめんね、びっくりさせちゃって。君のこと、好きだよ」


「俺も好き? えへへ、えへ、えへへへ。ありがとう」


「けど、まだ恥ずかしいから。付き合うとか、そういうのは後にして欲しいな」


「そう言われると本当なのか心配? いくら私でも、好きでもない人に隣で寝て欲しいなんて言わないよ」


「えへへ。もう寝るね。これ以上は恥ずかしくて持たないや。また起きるまで、待っててね」


(少し遠くから吐息が連続して聞こえる)


「すー……んー」


「あ、ごめん。元々君が疲れてるからって誘ったのに、私だけ寝ちゃって」


「え……寝顔かわいかった? 寝息も? 疲れは吹き飛んだ? そ、そっか。えへへ」


「でも、君も寝て欲しいな。私のお気に入りのスポットだから、ここ」


「目を閉じて。(ここから耳元で囁く)背もたれに体を預けて。軽く空に顔を向けて、まぶたの下から太陽に向かう。すーはー」


「手の力も抜いて……そう……私の声に集中して」


「風が吹いている。小鳥が鳴いている。遠くから人のざわめきが聞こえてくる。それらも全部、段々、だんだん遠くなっていく。私の声と、自分の呼吸だけが残ってくる。みんな、みんな遠くに行って」


「おやすみ」

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