第2話授業中に寝よ?
(黒板にチョークが走る音)
「ねえねえ。暇そうですね」(囁き声)
「どうせ丸暗記するところだから、後で読み返した方が覚えるの早い? ほへー、かしこーい」
「私はそんなに頭良くないから、聞いてるだけで眠くなっちゃう」
「いつもそうだろうって? そんなことないよー。授業中の眠気は格別に強いよ。話はわからないし、窓が開いてても風が弱いから、ぽかぽかの空気がのしかかってくる」
「ん……ぱあ。あくびを抑えるのだって大変なんだから」
「ふわ……やっぱり眠っちゃおうか。暇なら一緒に寝ようよ」
「授業中に寝るのはまずい? 大丈夫だよ、この授業の先生は寝てても怒らないから」
「そういうことじゃない? そーなのかなー」
「一応、教科書を立てて、腕を丸めて枕にして、こう」
「どうかしたの、変な顔してる。堂々としてるなって? 大丈夫な授業だからね」
「君も寝ようよ。サボっちゃお?」
「授業中は緊張してるから寝られない? じゃあ、はい。私の手を握って」
「なんでって、あ」
「ごめん……君が隣で寝てたとき、凄く暖かくて、安心したから。君もそうかなって思って」(段々と小さくなる)
「そんなわけないよね。ごめんなさい。自惚れ過ぎちゃった」
「顔が赤い? かわいい? えへへ、ありがとー」
「ふあ。落ち着いたらまた眠くなっちゃったな。ねえ、やっぱり一緒に寝よ?」
「まだ抵抗あるの? じゃあ、寝なくてもいいから、こう頬杖着いてみて」
「そうそう。そしたら、まぶたの力を抜いて、でも目を閉じないように小さく上げて。そのままゆっくり、軽く倒れ込むように頭を腕に乗せて。そう、私の声に集中して」
「景色が薄く、揺らめいていく。そうしていると仄かな熱が体の底から上がってきて、じんわり広がっていくね」
「呼吸が腕だけにかかって、そこだけ熱が引く。温度差が気持ちいい。意識を保とうとしているうちに、いろいろなものが曖昧になって――」
(チャイムの音)
「あ、起きたかな。おはよー」
「私よりよく寝ちゃってたね。腕、痺れてない?」
「あはは、痺れてて動けないか。椅子に座りながら寝ると、どうしてもそうなっちゃうんだよね。私? 私は授業が終わる前に起きたから、もう大丈夫だよー」
「それにしても、君、疲れてるの? あんなにぐっすり寝るなんて思ってなかったよ。寝付いたのも私より早かったし、本当はお昼寝大好き?」
「わかんないかー。そうだよね、疲れてるのってわかりづらいよね」
「あ、そうだ。もし疲れてるなら、良いところがあるの。よかったら帰り付き合ってよ」
「えへへ、ありがとう。じゃあ今日は、帰るのも一緒だね」
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