第25話 凄いね
赤ちゃんを無事に救出し生命を救う事が出来た事にギルド職員や携わった人達は達成感でいっぱいだった。
しかし皆が或ることに気がついた。赤ちゃん達の親を捜し出し迎えに来てもらわなければならないという事を。
エルフ、獣人、ドワーフならば国に連絡をすれば代表で誰かが直ぐに来てくれるだろうが人族は何処の出身か、などとは判らないのだ。
各地で赤ちゃんを拐われるという情報は掴んで、連携はとっているので、ある程度の手がかりは有るには有るが。
途方に暮れるギルド職員達を残して俺達は獣人国ガウリンガルの王都に向けて出発した。
「赤ちゃん達、早く親御さん達のもとに帰れるといいね」
「そうなんだけど、ヘイシロウの謎スキルで赤ちゃんの出身地なんて判っているのじゃないの?」
「……だとしても教えてあげられないでしょ?」
「むぅ~」
「だからさ、俺は獣人とドワーフの赤ちゃん達に関しては、これから行くのだから引き受けたのさ。せめてもの罪滅ぼしの為に」
「仕方ない。誰にも知られたくない事は有るものね。特に私達2人には」
御者はサイモンさんで、隣に膝の上にイズナを抱っこした猫族の娘がサポート役として馬車は獣王国領を順調に進んで行く。
「ヘイシロウさん、もうすぐバランシアの街に着きますよ」
「ホント、ミィさんはリックフェル商会って知ってる」
「ええ、もちろん。獣王国でも有名な大商会です、お知り合いでもいるのですか?」
「そこの頭首の赤ちゃんがいるんで、直接届けようと思ってさ」
「「ええ~」」
「ヘイシロウ、そういう事は早く言っておきなさい」
セシリアに散々お小言をくらった後、バランシアの街に入って暫く馬車は大通りを走ると大きな建物の前に止まった。
「ここです、リックフェル商会」
「大商会というだけの事はあるわね」
「頭首にお会いしたいのだけど」
犬族の店員さんに訊ねると返事が返って来たのは後ろからだった。
「旦那様にどの様な御用でしょうか?」
口調は丁寧だったが、銀色の尖った耳の狼族の娘の目は敵意に満ち溢れていた。
相当に腕のたつ冒険者だ。商隊の護衛なのかもしれない。
「ここの娘さんを返しに来たんだ」
「貴様、あいつらの仲間か?」
剣に手がかかる。あ~、面倒くさいなもう。ミィさんにいて貰えば良かった。
「貴女、店を壊す気?ヘイシロウも説明が下手なんだから」
「私にステータスが読めないなんてあり得ないのよ。貴方達はあいつらと同じ、白状しなさい」
「あ~、なるほど。困ったな」
仕方ない。ここに今いるのは犬族の店員さんだけだ。他に居ないか周りを確認してミィさんを指輪の空間から出す。
いきなり出されたミィさんはキョトンとしている。
「この娘、俺達のことを誤解してるんだ。説明してくれないか」
ーー
「本当にあいつらの仲間ではないのだな?」
「疑り深いな君は」
「ヘイシロウ、赤ちゃんを出してあげなさい」
「OK。ミィさん抱っこの体勢をとってくれる?」
「えっ、はい、こうですか?」
「それで良いよ」
ミィさんの腕の中に熊族の赤ちゃんが現われる。
「ミ、ミルフィ様。アンナ、旦那様をお屋敷から呼んできて頂戴」
「は、はい」
「大変失礼致しました。皆様方はどうぞこちらに」
良かった。やっと信じてもらえたようだ。
ーーーー
「お、おおっ!ミルフィ、我が愛しき娘よ」
熊族で猫ではないが猫可愛がりとはこの事だ。今にも舐め回しそうだ。まぁ、頬ずりされている赤ちゃんが喜んでいるのでいいよね。
「かたじけない。どんなに感謝してもしきれない」
「気にしないでください」
「そうもいきません。御礼はタップリさせていただくとして、犯人は捕まったのですか?」
「現場にいた奴らは死にました。正体については、ちょっと……」
「そうでしょうな、娘の居場所を吐かせようとしましたが、奴は口をなかなか割りませんもの」
「えっ、魔人を……おっと、捕まえたのですか?」
「はい。私の商隊の護衛達は優秀でしてな、今回は屋敷だったので後手を踏み娘は拐われましたが、そこのアイリスが1人を捕まえたのです」
「痛めつけたのですが、再生のスキルが有るらしく手足を折っても切り取っても直ぐに生えてきて平然としているのです」
狼族の娘は実力者だとは思っていたが、下っ端の魔人なのかもしれないが生かして捕まえるとは大したものだ。
「ギルドは知っているのですか?」
「いえ、捕まえた奴が言うには、このことを公にすれば娘は生きて帰って来ないと脅されたものですから」
嘘こけ、ハッタリをカマしやがって。
「ここにいるのですか?」
「ええ、地下に閉じ込めています」
……拷問の道具は揃っていないけど薬は有るしダメもとで、ここはリサにお願いしてみる価値はあるな。
「俺に尋問させてもらってもいいですか?」
「それはいいですとも、是非お願いします。やられっぱなし、というのは性に合いませんから」
アイリスさんに地下室につれてってもらう。中に入ると手枷、足枷を嵌められて壁に繋がれている魔人がいた。
「枷は魔道具になっていて魔法は封じて有ります」
「ふん、またゾロゾロとおいでなすったもんだ。俺を開放しないと俺の仲間がここを襲いに来るぞ」
「それは無いと思うよ、洞窟に来た連中は全部始末したし赤ちゃんは全員救出したからね」
「なっ……う、嘘だ。あそこにいる者達が負けるわけがない」
「お前より上位種だと言いたいのかい?」
「き、貴様、どこまで知ってる」
「おっと、訊くのはこっちだよ。『憑依召喚リサ!』」
「あらあら楽しい事になりそう」
「ヘイシロウ?また女性になちゃったのね」
あ~、どうも女性軍は影響力が強いようで、また精神をだいぶ持っていかれたようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます