第23話 救出 ②

 火、水、風、闇などの属性魔法が一箇所に集まり大爆発を起こした。


轟音が鳴り止むと、粉塵が次第におさまり視界がクリアになってきた。


「やったか?」


「あれだけの魔法を食らったんだ、平気でいられるわけがないぜ」


「しかも属性がぶつかり相乗効果で威力も上がってるしな」


粉塵が完全におさまりハッキリと攻撃箇所が見えた。


そこにあったのは奴らの黒焦げになりバラバラになった死体ではなく、キラキラ輝く球体だった。


「魔法シールド……」

「バ、バカな。意表を突いた筈、そんな暇は……」



「クククッ、我らに楯突く愚か者はどこの何方様ですかな?」


「問答無用!『魔法シールド消去』」


こうなる事をある程度予測していた俺はセシリア、イズナと共に余裕をカマしている魔人共に向かって切り込んで行く。


俺はこの世界の事をまだ完全に理解したわけではない。魔剣ノスフェラトゥの能力も魔法扱いになるかもしれないので作戦変更だ。俺の手にはセシリアからコピーさせてもらった幻惑の剣が握られている。


「へっ?何だ、お前た……ゲフッ」


横を見るとセシリアも無双している。


「セシリアも剣術や体術を体得したほうが良いよ」と言った俺の助言を聞き入れてくれて、暇を見つけては嵯哭さないに稽古をつけてもらって腕をかなり挙げたので当然だろう。


イズナはダークブレイドの剣技を使い、ダークスライムの能力で、ドサクサに紛れてどこにでもいそうな冒険者に擬態して戦っている。バレても惚けて誤魔化し通そう。


35人いた魔人は、5分もかからず全て真っ二つになり事切れた。



「な、何が起こった?」



「あっ、思い出した。あの冒険者、どこかで見た顔だと思ってたんだ。シング王国の武術大会で優勝した奴だ」


「お、俺も観てた。ヴェルデュノール流のバンティスを破った奴だ」



むむむ、顔が売れたせいで、言い訳せずにこの場は上手く切り抜けられそうだが、なんかスッキリしない気持ちだ。


「よくやってくれた」


「本当だぜ、奴らが生きてたと判った時は肝がチヂミ上がったぜ」


「さすがは武術大会の優勝者だ」


「お褒めに預かりありがとう御座います。それより奴らが魔法陣を使って転移して来たという事は、中には誰も居なかったのかもしれません。入ってみませんか?」


「そうだな、奴らのあの対応力は侮れん。マッカラムにも教えたいし行こう。パッソとロンは念の為、残っていてくれ。危険を感じたら逃げろ」


「あいよ」



ーー



「あっ、居た居た。イリヤさん、マッカラムさんがいましたぜ」


「マッカラム」

「イリヤか、外はどうした?」


「一戦交えた所だ。それより敵は侮れんぞ」


「……そうだろうな。まぁ、見てくれよ」

「これは……」



「マッカラムさん、なんなんだよここ?」


「解らん。それにあの魔法陣だ」


「……転移の魔法陣か?暗くて判らなかったが入口にも魔法陣が有った、奴らはそこから現われたんだ」


「やはりそうか」


「マッカラムさん、赤ん坊にくっついているの何ですかね?気持ち悪いし可哀想だ。引っ張って取ってやったらどうです?」


「ダメです。そんな事をしたら赤ちゃんが死んでしまいますよ」


「知っているのかい?君は」


「はい、俺の友達に治癒師がいるんですが、同じ様な物がくっついてる患者の治療をしている所を見たことがあるんです。これは寄生する魔物の様な物でこの状態は根がかなり深部にまで行っているかもしれません」


俺が録画2して、その部分のデータを消去すれば済む話しなんだが。



「治せるのだな?」

「はい、薬があれば」

「手に入るのか」


「ええ、この街に丁度来ています」


「解った。奴らがまた来るかもしれない、直ぐに赤ん坊を運ばなくては。ナック、ギルドへ行って人を集めてもらってくれ」


「了解」







それから人海戦術によって赤ちゃん達を街へと移動する作業が始まった。俺達は薬を作るという名目で街に戻る。


Sランクのマッカラムさん達とAランクの一部は洞窟に残り魔人の転移に備える。




「ヘイシロウ、結局あそこは何だったの?」


「セシリアに関わりがある魔人はベルモント家と言っていたろう?」


「そうね」


「家と付くからには人族の貴族と同じ立ち位置の身分と考えたんだけどどうかな?」


「それも解かるわ」


「貴族がいるなら、国王がいて国があるのが自然なんだが何で魔人の国というが無いんだろう」


「ヘイシロウが前に言ってたじゃない。奴らは狡猾だって」


「そうなんだけどさ、違和感が有るんだ。ここからは俺の想像なんだが、奴らは理由があって自分達の仲間を増やさないといけないし国王なんていないのかもしれない」


「手下と言うことなら人族を裏から上手く使っているじゃない?」


「本当の仲間さ、魔人のね」

「どういう事?」


「赤ちゃん達が抱いている卵みたいな物は魔人の細胞を基に造った魔核だよ」


「なによそれ……まさか赤ちゃんにそんな物を植え付けて魔人にしようなんて考えているわけじゃ……」


「相変わらず勘が良い。しかも手が出なかったエルフ、獣人、ドワーフまでも魔人にして世界を統一し、自分の国にするつもりだったりして」


「ヘイシロウが言うとそんな気になって来たわ。早く卵を外してあげないと」


「そうだね。他にもあんな場所があるかもしれないし」


「怖ろしい事を言わないでよ。それはそうと街にいる治癒師って誰よ」


「決まっているさ、サイモンさんさ」

「呆れた」



前世でバリバリ働いていた若い頃の勘が戻ってきた感じだ。俺の想像はきっとそんなに的は外れてはいないだろう。


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