第21話 事件

 エルフ領なら安心だと思っていたがサイモンさんが『国から国へと移動する旅人や冒険者、商人などに魔人が装って情報集めをしているかもしれませんぞ』の一言で反省。


前に油断して慌ただしく街を出た経験があるからね。やっぱり指輪の空間で過ごしてもらう事となった。もう少しの辛抱だ。


エルフの国ソルレンティスと獣王国ガウリンガルとの間にはベルフレッソという王国が在る。


とは言ってもエルフの国境と獣王国の国境の間にベルフレッソ王国の北部の一部が飛び出ていて、その部分が挟まれている感じになっているので、そんなに距離は無いがエルフの森に近い為、冒険者達が集まるので大きな街が1つ在る。


何事もなくその街、バルソルに到着。


「この街には何をしに?」

「獣王国に行こうと」


「冒険者かい?」

「はい」


「そうか」


なんかあるのかな?と思ったが入街の税を払うとすんなり通してくれた。



『ヘイシロウ様、殺気立ってますね、この街』


「確かに門番も違和感が有ったな。セシリア、どう思う」

「そうね、イズナの言う通りピリピリしているわね」


「何かあったのかな?取り敢えず冒険者ギルドに行ってみるか」


「そうしましょう」




冒険者ギルドは直ぐに見つける事が出来た。大きくなかなか立派な建物だった。ギルド内は冒険者でごった返ししている。


魔人が居ないか直ぐに確認する。暫くしてイズナからの連絡が入る。


『ヘイシロウ様、魔人はいないようです』

「うん、こっちにも居ない。戻っておいで」

『分かりました』


「どうやら魔人はいないようだ」

「良かったわ、それにしても凄い混みようね」


「それもそうだがAランクやSランクの冒険者がかなりいる。珍しいな」


「間違いなく何か有るわね」

「訊いた方が早いな」



ごった返してはいるが依頼を受ける行列はなかったので受付の職員に話を聞くことが出来た。


「何か有ったのですか?」


「ああ、半年前から各地で産まれたての赤ちゃんが拐われるという事件が続いておこっていてな、各国のギルドで連携して調べていたんだが何もつかめなくて困り果てていたんだが、匿名のタレコミがあってそれを基に調査したら赤ちゃん達の居場所が判ったのさ」


匿名のタレコミ?


「救出に行くのですね」


「タレコミの中には相手はかなりの強者が揃っているという情報もあった為、高ランクの冒険者にも来てもらっているが、まだまだ人手が足りないのだ君達も参加してくれるとありがたいのだが」


「考えて見ます」

「ああ、期待しているよ」



「どうするの?」

「どうも匂うんだ」


「もしかして魔人が絡んでいるとか?」


「結論から言うとそうなんだが、タレコミの主も気になる」



「……あの古代銀貨をくれた人達?」

「いい勘してるね」


「じゃぁ?」

「「参加決定!」」



ーーーー



赤ん坊達の救出に向かうのは総勢45名。Sランクが3人、Aランク10人、B~Dランクまでが32人となっている。


相手が魔人だったとしてもSランクが3人もいるのだから大丈夫だろう。


ちなみに俺達は何だかんだでDランクになっている。



「でも大丈夫かしら?Sランクがいるとは言え、あの時みたいに強力な武器や魔道具を持っていないかしら」


「この魔剣みたいなやつか?」


「ホント、ちゃっかりしてるわよね、自分の物にしちゃって」


「魔剣ノスフェラトゥ、カッコいいでしょ?欲しいならコピーするよ」


「いいわ、血を吸う剣なんて」


う~ん、セシリアの得意とする攻撃は相手の精気を触手で吸い尽くす必殺技で同じ様なものじゃないの。などとは口が裂けても言えない。


「そうだよね。後、こんなのも有るけどいかが?」


「あ~、それってエルフの姿が視えなくなるやつじゃないのよ」


「どう?」

「それはちょっと欲しいかも」

「はい、ご注文を受けたまりました」


ーー



救出作戦決行は今日の夜になった、ギルドの大広間で打ち合わせを行う。



赤ん坊がいると判明した所は北の山の中だという。段取りと役割り分担が決められて行く。


指揮官はSランクのマッカラムという人だ。Aランクのマックが手を挙げた。


「ちょっといいかい?」

「何だね」


「これだけ多くの人数だ、相手の能力も判っていないのだろう?相手に察知されないように近づけるのか?」


「もっとな意見だ。だが心配無い、このイリヤの同化のスキルを使えば問題はない。もっともみんなで手を繋がないとイリヤからスキルの恩恵はもらえないがな」



同化か、面白いスキルが有るものだ。姿を消せるエルフの魔道具に気配を完全に消せる事がプラスされた様なものなのかな。


俺がコピーした魔道具の意味が無くなってしまった。残念。


「他に質問は?……無いのであれば決行時間まで各自準備万端にしておいてくれ、解散!」




「夜まで暇になったわね、どうする?」

「そうだね、軽く腹ごしらえでもするか」


「緊張感が無いわね。でも賛成」




宿に戻りサイモンさんと獣人の娘達と指輪の空間で調達してきたバルソルの郷土料理を堪能する。スパイスが効いててなかなか美味い。


食事をしながら出発が遅れる事を話す。獣人の娘達は早く帰りたいのだからガッカリするかと思ったが、魔人が関わっているかもしれないと知ると絶対に成敗してくれと応援された。


恨み骨髄なのだろうね。



ーーーー


「皆、揃ったな」

「「「「おう!」」」」


「では出発する」



かくして救出作戦が始まった。


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