第9話 お試し期間付き奴隷オークション

 この国の武術大会が2ヶ月近くかかるのには理由が有る。


「なあセシリア、この世界での人族以外の種族の立ち位置、特にエルフと獣人なんだけど、どんな感じなんだ?」


「どうしたの?急にそんな事」

「実は……」





ーーーー



大会の出場受付が終って2日後から各会場で予選会が始まった。


俺の予選ブロック会場は、北の森の入口付近の広場を利用して造られた所だ。


因みに俺は第6試合に出る。



「確かにこのペースだったら、もっと試合を組めるわよね。ヘイシロウの言う通り、わざと時間をかけてるとしか思えないわ」


「各国のスケベ爺い達が楽しむ為にやってるんだ」

「本当に男ったら許せない!」


そんな怖い顔で俺を睨まなくても。


「大問題よ、国どうしの争いになりかねない。今まで裏で卑劣で下衆で糞で……虫酸が走るわ」



「おいおい、伯爵令嬢が使う言葉じゃないぞ、落ち着け」


「だって……」


「だけど魔人達は頭が良い」

「奴らを称賛するの?」


「そういう訳ではないよ。他の者達に比べて能力が遥かに高いんだ。普通なら力ずくでこの世界を支配しようとする筈だろ?」


「……そうね、はるか昔に現れた魔王のように……か」


えっ、魔王なんていたの?……今度、調べておこう。


「そ、そうさ。でも奴らは違う、表には出ない。見なよ、この人達は魔人達に裏で支配されてるなんて、これっぽっちも思っていない平和そのものだろ。うん、言い方が悪かったね、奴らは狡猾なんだ」


「その通りね、耳が痛いわ」


そう、今この時だって裏で何が行われているかなんて誰も知らないのだから。



「次!シナガワク、ニテンサン流のヘイシロウ対ポンコ村チネン流ベンの試合を行う」


「あっ、俺だ」

「頑張ってね」




★★★




「どうだ今年の様子は?」

「例年以上に大盛況で御座います」


「エルフも獣人もツブが揃っていたし、ここのオークション制度は一味違うからな、各国の変態クズ貴族共も満足なのだろう」


「左様でございますな」


「せいぜい楽しめばよい。平和ボケして呆けてくれれば御しやすい、我らは楽が出来るというものだ」







ーーーー


この大会のルールは魔法使用不可、防具使用不可。違反すれば失格はもちろんの事、重大だと判断されれば死罪もあり得るそうだ。純粋に技と鍛錬を競うものとなっている。


勝ち負けは戦闘不能か棄権のみで、武器は木製なら何でも構わない、なので参加者の流派によっていろんな物があった。もちろん武器を使用しない体術でも良い。


俺は嵯哭さないさんのイメージに合う木刀に鍔を付けた物にした。



俺の初戦の相手ポンコ村のベン君は、俺と同じ14歳で最東端に在る村の出身で、村では1番強くて皆んなの期待を背負って大会に来たそうだ。


褒賞金がもらえる128位に入るには各ブロックでベスト8にならなければならない。


嵯哭さないさんに憑依され、オーガファイターとの闘いが俺にとってイメージトレーニングになったのだろうか?剣の術理が多少なりとも身についた感がある。


俺が嵯哭さないさんの力を借りずに放った面にベン君は反応出来ず一歩も動かない。


『えっ、うそ~』


そのまま木刀はベン君の頭に、かち割れた額から血が吹き出て戦闘不能により俺の勝利。審判のコールの後、救護班が慌て手治療に入った。開始から5秒後の事だった。



ベン君、悪い許せ。




ーー



もやもや、モヤモヤ、俺まで変な気持ちになって来る。


無事に初戦を突破したので敵情視察する事となった。


イズナが潜入している所は、貴族の居住地域の奥の奥に有るとある場所だ。



そこには前世のロシアに在るエルミタージュ美術館の様な建物が2つ並んでいる。


右側がこの国に招待された各国の重鎮や貴族達が滞在する宿泊施設。


左側が奴隷のオークション会場になっている。


オークションが行われるのは武術大会が終わり、城内でパーティが終わった後だ。


それまでは拐われた奴隷達は宿泊施設の方にいるので、イズナに潜り込んでもらっているのだが……。



「や、止めて」

「直ぐによくなるさ、それそれ」

「あひぃ~、いゃ~」


世界が変わっても色事の性癖、趣味趣向の種類は変わらないようだ。大人のおもちゃの形なども前世とほとんど変わらない。


このブヨブヨの太っちょ貴族はア○ルがお好みのようだ。凹凸のついた棒をゆっくりとア○ルに入れて行く。餌食になっているのはエルフだった。


セシリアが言った通りエルフは可憐で美しい。こんな人が側にいたら一発で惚れてしまうだろう。


可憐で美しい顔が苦痛……?で歪む。見ている俺も火照って来た。


「ずるいぞ私だけに奉仕させおって快感に浸るなど、今度はお前が奉しするのだ」


ブヨブヨ太っちょ貴族が怒張したイチモツを可憐で美しいエルフの口にねじこむ。


「うぐっ」


可憐で美しいエルフの口が凌辱されていく。不味い不味い、これ以上見てたら俺もおかしくなる。直ぐ側にセシリアがどんな様子?という顔で俺を見ているんだ。


助けてやりたいがジェド公爵を消去してからでないと俺の計画がおじゃんになる。すまない、堪えてくれ。


『イズナ、他の部屋を頼む。ジェド公爵が居るかもしれないので慎重にな』


『はい、畏まりました』


こんなのばかり見てたらキツイ。来ている連中がどんな奴らか録画しておこう。


『人がたくさんいそうな所に行ってくれ』

『はい』


まさか乱交部屋なんかないよな?ちょっと心配したがイズナが入った所はサロンのようだった。ワインを飲みながら歓談している。



「今年もまたお会いしましたな」


「ここは楽しみの1つですからな。良い娘はおりましたかな?」


「昨日のエルフは良かったですぞ。いい声で鳴きよる」

「14番のエルフでは?」


「その通り。やはり高値がつきそうですな」


「ガバ伯爵も言っていましたからな。そうそう、25番の獣人は試されたか?」


「まだです、どんな感じです?」

「尻尾でチョチョンとやらせるのがたまりませんぞ」


「ではこれから試してみますかな」

「大会が終わるまでじっくり試してみませんと」


「「くっ、くっ、くっ」」



なるほど、そういう事か。表向きは武術大会を観に来た体で、普通なら手に入らないエルフや獣人を期間中じっくり味わい試して性癖にあった奴隷を買って行こうというわけだ。



俺も若い頃は旅の恥はかき捨てという事で、社員旅行に行った時は夜の街に出て行って風俗嬢相手に色々やったもんだが……。


事が終わり待合室で同僚とバッタリと合った時などは、やはりいい気持ちはしない。


「なんだよ、平四郎と"穴兄弟"になっちゃうのか~、嫌だな」


それはこっちのセリフだ。



この世界の連中は、性癖、趣味趣向は一緒でも、"穴兄弟"という概念が無いのだろう。寧ろ、それさえも興奮する手段にしている感じさえある。


さて、セシリアにどう説明しようか?



ーー



俺の話を聞いたセシリアは怒り心頭。なだめるのに苦労したが、さっきやっと落ち着きを取り戻したので自分の部屋に戻って来た。


ベッドに横になるとあの可憐で美しいエルフと太っちょ貴族とのからみシーンが……。


確か東地区の奥は娼館街だったよな。ここは1つ……。思い立ったら吉日という事で、部屋を出る。



「ヘイシロウ、何処へ行くの?」


ギクッ!


「ち、ちょっと小腹が空いたんで何か食べに……」


「こんな遅くに外に行くの?私も怒り過ぎて喉が乾いたの、下の食堂に行きましょうよ」


「うん、そうだね」



あ~、蛇の生殺し。俺のこの熱い熱い欲情をどうしてくれる?


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