第3話 ヤバイのに出会った

 自分のスキルにもなれて来たので北の森の西端から南に上がって行く。この辺りはシルバーウルフとかオークなどが出てくる。


単体ならEランクでもこなせるが、集団で出て来られるとパーティを組むかCランクじゃないとちょっと苦しいだろう。


録画スキルのお陰で俺はサクサクとオークの集団でも狩る事が出来た。それに録画で物などを取り込めば"編集ソフト"スキルで数値を"改竄"できる事が判った。


例を上げると剣や防具の攻撃力や耐性を変えられる。これは色々と応用ができそうなので期待大だ。


オークとシルバーウルフを狩りに狩って1週間が経った。そろそろもっと奥に行こうと思い、前を見るとシルバーウルフが20m先に屯ってこっちを伺っているのが見えた。


俺の録画スキルの有効範囲は20mなので、少しでも近づいて来たら即発動だ。


この頃になると頭の中にブルーレイレコーダー画面、パソコン画面が戦闘機のコックピットの様に思い浮かべる事ができるようになっていた。


「ん?」


いつもの録画表示に1が付いてる。直ぐ隣に録画2の表示がある。スキルアップでもしたのか?


「おっと、シルバーウルフの奴ら俺を食料にする気だ。丁度良い」


試しに録画2を発動。何も起こらなければ、いつもの録画で対応すればいい。


走って来るシルバーウルフ5頭は録画2スキルを発動させると眼の前から忽然と消えた。


「これは……」



タイトル:シルバーウルフX5


まるごと録画したのか?生きてるのかな?このまま消すとどうなる?


取り敢えず1頭だけ再生してみよう。



眼の前にシルバーウルフが現れた。俺を見つけると飛びかかって来た。


「うわっ!」


直ぐに録画2で消す。


「びっくりした。やっぱり生きてるんだ」


という事はだ、中のデータを書き換える事ができるって事だよな。凄くない?


1頭残して消してみよう。無くなってもコピーすれば良いもんね。


削去するとデータは消えた。何も起こらない。


「文字通り消え去るだけ……か。じゃ、コピーしてみよう」


シルバーウルフX2になった。…………待てよ、これって録画したら何でもコピーできるんだよね……つまりお金も物も1度録画すれば……。


「働かなくても良い……?」


ウエルカム、怠惰な生活。サラバ、貧しき生活。もう食うに困らない。


そしてもう1つ禁断の考えが思い浮かぶ。

人をコピーしてクローンとして使ったり能力も奪えるのではないか?これはよく確かめねば。


「となると後は殺されなければ良い。俺のスキルは半端ないが俺に足りないものは何だ?」



ユニークスキルという特別な物は別として、この世界にある基本的なスキルと魔法の種類は勉強した。


俺が欲しいスキル、魔法は回復系と気配を消す、察知するというものだ。


回復系は人の事なら俺のスキルが使える気がする。ヘタをすれば死んだ者も生き返らす事ができるかもしれないが、自分は疑問だ。


自分を録画できないかもしれないからだ。


「となるとパーティを組むか……いや、俺のスキルを知られたくない。とすると……従魔だな」



俺の腹は決まった。ダンジョンに行って魔物を捕まえ、最強の従魔を造ってやる。





        ☆☆☆☆☆


ー8年前ー



「人には関わらない方がいい」

「でも……」


「この子が将来苦しむ事になるかも知れんぞ」

「それでも放って置けない……貴方も力を貸して」


「解った」


「……これで安心。しっかり生きるのよ」


「さあ急ごう、追っ手が来る」

「ええ」





ーーーー



「お嬢様、セシリア様!だ、旦那様、こちらにいらっしゃいます!」


「セ、セシリア」

「傷は有りますが、命に別状は無い様です」


「良かった。まだ近くにグレートウルフがいるかもしれん、屋敷に早く戻ろう」


「畏まりました」










★★★ーーーー現在

        


「な、何をするのキンジィー」


「セシリア、貴女はもう用済みですって。ジェド様に始末するようにと頼まれたの、今日のダンジョンの演習が良い機会だもの」


「ジェド様が……嘘よ」


「これだから世間知らずのお嬢様は、吐き気がする。ダンジョンの奥底で魔物に喰われておしまい。それ!」


「いや、止めて……きゃあ~あああぁ……」


「はい、おしまい。さようならセシリア、この転移の罠の部屋は最下階に通じているそうよ、アハハハハ。いい気味」





ーー




「コフッ、ゴボッ」 口の中もぐちゃぐちゃだわ。血の味がする。ああ、これまでなのね。腹にもろに当たってしまった。血が止まらない。


キンジィー、何でこんな事を、許さない。……ウフフ、この様では無理か……ヒュドラが止めを差しに来る、もう終り。



父上、母上さようなら。覚悟をして目を瞑ろうとした時、私の身体に変化が起こった。


穴の空いた私の腹から、触手の様な物が無数飛び出し、ヒュドラの9本の首にそれぞれ突き刺さった。


ヒュドラは抵抗できずに干からびていく。訳も解らず眺めていた私の前に宝箱が有り、私の腹は塞がっていた。


何が起きたの?暫く呆けていたが、起き上がって宝箱を開けた。"時空の指輪"が入っていた。時を自在に出来る空間が、造れるらしい。優れ物だ。


だけど、私はどうなってしまったの?ステータスを調べてみよう。


「ステータス!」


最初に目に飛び込んで来たのは、種族の所に有る幻姿・魔人と言う文字だ。


私は人では無くなったの?何て事。何で、どうして?同じ事がぐるぐる回る。こうなったのはキンジィーせいだ。今すべき事はこのダンジョンを出てキンジィーの所に行く事だ。


色んなスキルが付いていた。魔物の居場所も周囲の事も全て判る。ヒュドラのスキルらしい。


流石に、転移スキルは持っていない。残念だけど地道に階段を上がって行くしかない。出てくる魔物は相手にならなかった。


ミノタウロスでさえ、途中でマンティコアを倒して獲た、幻惑の剣で一撃で倒せる。だけど幻姿になってもお腹も減るし、眠くもなる。


時空の指輪で造った空間の中に入り、ダンジョンに吸収されて消える前に空間に取り込んだミノタウロスのお肉を、火の魔法で炙って食べる。とても美味い。


お腹が膨れたので横になる。そう言えば、私は子供の頃にも、死ぬ思いをした事が有るのを思い出した。


6歳の時だ、森でグレートウルフの集団に襲われた。腕に噛みつかれ引きずり回されたっけ。その後の事は覚えていない。気が付いたら屋敷のベットだった。


みんなは助かったのは、奇跡だと言っていた。今も私は生きている。幻姿だろうが、なんだろうが奇跡と言う事か?


何故、私は殺されなければならないの?ダンジョン内の試験を利用して始めから殺す気だった。学校から貰った脱出用の転移の巻物にまで細工をして、ダンジョンの底まで罠で飛ばしたのだから。


理由を聞かねばならない、急ごう。


だいぶ上階に上がったけど、まだ他の冒険者と会わない。階数が判らないのはもどかしい。




ー☆☆ー



従魔を造る為にダンジョンに入って10日が経つ。スキルのお陰で苦も無く進んで来れたが、細い通路の奥に異様な雰囲気を醸し出している人の姿が見える。注意しながら近づくと女の娘だった。


身の安全の為に出会う人達は録画し、スキルやステイタスを確認する事にしていたので女の娘も録画し確認した。


うっ……。何だこのステータスは?落ち着け録画1してある。俺に危害を加えるのであれば消すだけだ。



「私の顔に何か付いているのかしら?」


「いや……」


ヤバい、なんて誤魔化そうか?


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