第18話 愛宮泉菜 VS 一途川奈緒
僕と一途川さんは、お互いの上履きをしゃぶり続け、数分経った。
「 はぁ〜! 私は大満足! 今度こそお昼ご飯食べよっか!」
「 そ、そうだね」
一途川さんは机の上のお弁当箱の蓋を開けた。
そこには唐揚げ、卵焼き、煮物など様々なおかずに加え、お米には桜でんぶで大きなハートマークが描かれていた。
ハートはともかく普通に美味しそうだな……。
僕の口内は上履きの味で満たされていたため、普通の食べ物を欲している。
そう思っていると……。
「 あっ!! いけない! 教室にお箸忘れてきちゃった。ちょっと待ってて! すぐに取ってくるから!」
一途川さんはそう言うと、教室を飛び出て行った。
僕は別館の空き教室に1人となった。
そう思ったら、一気にため息がこぼれ出た。
「 はぁ〜〜〜。これからどうしたらいいんだよ……。何をやっても肯定されるんじゃ、嫌われるなんて不可能だぞ……」
どうやってあの狂人に嫌われるか考え込んでいると……。
ガラガラ……。
教室のドアが開いた。
ん? もう一途川さん帰ってきたのか?
この別館の空き教室と僕のクラスはかなりの距離があるのに……。
僕はドアの方へ視線を向けた。
するとそこには……。
「 え!? 愛宮さん!?」
そこにいたのは愛宮さんだ。
「 紫電君と一途川さんが一緒に教室を出て行くところは見たけど、こんなところにいたんだ……」
そう呟いた愛宮さんに僕は聞いた。
「 なんで愛宮さんがこんなところに?」
「 実はさっき、廊下ですれ違った化学の先生に実験器具の荷物持ち頼まれちゃって。実験室は別館にもあるからこっちにきてたんだよ」
「 なるほど……」
愛宮さんは告白中毒でさえなければ完璧美少女と山君が言っていた。
こういった荷物持ちとかも断らずにしっかりやるあたり根は良い人なんだろうな……。
ほんとに告白中毒なのが勿体無い……。
「 それより紫電君、一途川さんは一緒じゃないの?」
「 あ、ああ、一途川さんなら箸を教室に忘れたから取りに行ってるよ」
「 そうなんだ……。じゃあ、今ここにいるのは私と紫電君だけって事だね……」
「 え?」
愛宮さん……。
まさかまた……。
「 紫電君……私、あなたに伝えたい事があるんだ……」
急に上目遣いになった……。
これは確定だ……。
確定演出だ……。
愛宮泉菜の告白確定演出だ!!
「 私、紫電君の事が大好き!! 私と付き合って!!」
愛宮さんの告白は予想通り。
完全に予想通りだ。
だが、予想外の事が起きてしまった。
本当に最悪な予想外の出来事が……。
ガラガラ……。
「 ねぇ、今のどういう事? 何勝手に告白してんの?」
愛宮さんが告白した直後、一途川さんがちょうど戻ってきてしまった。
しかも、愛宮さんの告白を聞かれていた。
一途川さんの表情から、かなり怒っているのが伝わってくる。
とりあえず一途川さんに説明して止めないと!
「 一途川さん! ちょっと待って! これには」
「 紫電君。私の告白の答え、まだ聞いてないよ?」
僕が一途川さんに話し掛けるも、話の途中で愛宮さんが遮った。
「 愛宮さん! 今それどころじゃ」
「 無視するんじゃねーーーーーー!!!!」
今度は愛宮さんに話し掛けた途端、一途川さんが大声を出した。
そのまま一途川さんは愛宮さんに向かって走り出し、大きくジャンプして横に一回転した。
そして、その回転を利用し、愛宮さんに強烈な回し蹴りをお見舞いした。
バシッ!!
しかし、愛宮さんは一途川さんの回し蹴りを片手で受け止めた。
「 そっちこそ、なに勝手に私の告白の邪魔してんの?」
2人ともなんつー身体能力だよ……。
愛宮さんは不良すらも一方的にボコれる程強いのは知っている。
だが、まさか一途川さんまでこんなに身体能力が高いとは……。
愛宮さんは受け止めた一途川さんの足を離した。
愛宮さんと一途川さんは2人とも至近距離で睨み合い、お互いに口を開く。
「 紫電君は私のものなんだよ。勝手に告白してんじゃねーよクソビッチ。てかお前誰だよ。きめーんだよクソブス。殺すぞ」
「 あー怖い怖い。誰に告白しようが私の勝手でしょ? てかあなた、前に好きだった男刺して精神病院に隔離されてたんだって? 紫電君、こんなヤンデレ女に付き纏われて可哀想でしょうがないな〜」
2人の言い争いが始まった……。
2人ともまじで怖い……。
でも、これはさすがに止めた方がいいよな。
でもどうやって止めれば……。
2人とも簡単には引き下がってくれなさそうだし……。
僕が2人をどうやって止めようか考えていた時、一途川さんが動き出した。
「 死ねやクソブス!!!」
一途川さんは愛宮さんを罵りながら、愛宮さんの顔面に殴り掛かった。
しかし、愛宮さんは一途川さんのパンチを軽やかに避けた。
「 全然遅いわね」
愛宮さんはそう言うと、パンチを避けた事でガラ空きになった一途川さんの胸ぐらを掴んだ。
「 これでお終い」
愛宮さんはそのまま一途川さんを一本背負いした。
まずい!!!
一途川さんがこのまま一本背負いで背中から地面に叩きつけられたら、間違いなく大怪我だ!
僕はコンマ数秒でそう思ったのだが……。
ドンッ!!
一途川さんは、背中から地面に叩きつけられるのかと思いきや、背中より先に両足を地面につけ、その両足でブリッジ状態になりながら踏ん張っている。
……。
まじかよ一途川さん。
一本背負いを完封しやがった。
まじでとんでもない身体能力だ。
一途川さんは、自分の胸ぐらを掴んでいる愛宮さんの腕をブリッジ状態のまま掴み返し、体を捻りながら立ち上がった。
「 私に勝ったと思った? クソブスさん」
「 へー。意外と頑張るじゃん」
2人はお互いに不敵な笑みを浮かべた。
そんな2人を見て、僕は思った。
なんだかバトル漫画みたいだな……と。
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