第17話 紫電 VS 一途川 イカれた戦い2

「 紫電君のかっこいい歌も聞けた事だし、そろそろお昼ご飯食べよっか!」


一途川さんはそう言うが、お昼ご飯を食べるにはまだ早い。


イカれた行動その①『歌詞、リズム、メロディが意味不明な自作の曲を勝手に歌い出す』が失敗に終わった以上、僕はすぐさま次の手を打つ。


できればこれはやりたくなかったんだけどな……。


一途川さんに嫌われる事がかなり難しいと分かった以上、この手を使うしかない。


「 一途川さん、お昼ご飯の前にちょっといいかな?」


「 うん、どうしたの?」


僕は一途川さんの目を見つめ、真剣な表情でお願いした。


「 一途川さん、上履きを脱いでもらえないかな?」


「 え? いいけど、どうしたの?」


一途川さんは、上履きを両足とも脱いだ。


そして僕は自分に言い聞かせた。


これは一途川さんに、完全に……完璧に嫌われるために必要な事なんだ!!


僕は、一途川さんの脱いだ右足の上履きを手に取り、上履きのつま先に口づけした。舐めた。咥えた。しゃぶった。


しゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶりまくった。


「 う〜ん、美味! 実に美味だよ一途川さん!! 予想はしていたが、君の履いていた上履きは本当にデリシャスだよ!!」


僕は、イカれた行動その②『 女子の上履きをしゃぶりまくる』を発動した。


「 一途川さん。僕は女子生徒の上履きをしゃぶるのが大好きなんだ!」


僕はそのまま一途川さんの上履きをしゃぶり続けた。


どうだ!! "超絶超愛 一途川" !


これにはさすがの君でもドン引きせざるを得ないだろう!!!


そう思いながら、僕は一途川さんの方を見た。


一途川さんは、特に驚いた表情を見せる事なく口を開いた。


「 なんだ〜。それならそうと早く言ってよ〜! はい! 左足の上履きもしゃぶっていいよ!」


なんと、一途川さんは左足の上履きを笑顔で僕に渡した。


……。


嘘だろ!?


目の前で自分の上履きしゃぶられてるんだぞ!?


なんで驚かないんだよ!

なんで気持ち悪がらないんだよ!

なんで引かないんだよ!


てか、もう片方の上履き渡してくるんじゃねーよ!!


こんな事やられたら普通は通報案件だろ!


一途川さんに嫌われる事は無理なのか……?


僕は、とりあえず一途川さんに渡された左足の上履きをしゃぶり、怪しまれないよう狂人を演じる。


「 左も美味だよ一途川さん!! ああ……僕はなんて幸せなんだ……」


僕はそう言いながらも、心では泣いていた。


どうせ嫌われないなら、最初からこんな事しなきゃ良かった……。


後悔していた僕に、急に一途川さんが上目遣いで話し掛けてきた。


「 ねぇ紫電君。紫電君がしゃぶった私の右足の上履き貸して?」


「 え? うん……。貸すっていうか、元々一途川さんのだしね……」


僕はそう言い、右足の上履きを一途川さんに返した。


上履きを受け取った一途川さんは、なんと……。


上履きのつま先に口づけした。舐めた。咥えた。しゃぶった。


しゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶりまくった。


「 はぁ〜〜〜! 紫電君の唾液付き上履き最っっっっっっ高!!! 私たち、間接キスしちゃったね♡」


…………。


は?


僕は一途川さんの行動に絶句した。


まじかよこの女……。


まじかよ……。


まじかよ……。


まじかよ……。


てか僕の初めての間接キス、上履きかよ……。


僕は驚きすぎて言葉が出なかった。

ただ黙って一途川さんが上履きをしゃぶっている姿をぼーっと見つめていた。


数十秒ほど時間が経ち、突然、一途川さんが口を開いた。


「 あのさ、紫電君。紫電君の履いてる上履き、脱いでくれない?」


「 ……え?」


「 ほら! 早く!」


僕は言われるがまま両足に履いている上履きを脱いだ。


まさか……一途川さん……。


一途川さんは僕の上履きを両方手に取り、同時にしゃぶった。


しゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶってしゃぶりまくった。


一途川さんは、僕の上履きをしゃぶりながら笑顔で言った。


「 紫電君だけ私の上履きしゃぶるなんてずるい! 私も紫電君の上履きしゃぶりたいもん! これでおあいこ!!」


こいつは何を言ってるんだ……?


頭大丈夫?


いや、大丈夫じゃない事だけは確かだ。


……。


ここまでやばいのか……一途川奈緒……。


一途川さんはそのまま話を続けるが、その表情から笑顔は消え、声のトーンも低くなった。

そして僕の目をはっきりと見て言った。


「 紫電君。私の上履きをしゃぶるのは全然構わないんだけどさ……もし、私以外の女の上履きをしゃぶったら……絶対に許さないから……」


僕は思った。


一途川さんに嫌われるのは不可能じゃないか?


一途川さんの愛は尋常じゃない。

惚れた相手の言動、行動の全てを肯定する。


こんな相手にどう嫌われればいいんだ?


「 どうしたの紫電君? 私の上履き、もっとしゃぶっていいんだよ?」


「 あ、うん……」


僕と一途川さんは、お互いの上履きをしゃぶりまくった。


なんだこれは?


どういう状況だ?


こんなところを誰かに見られたら人生終わりだ。


……。


いや、一旦考えるのはもうやめよう。


僕は無心で一途川さんの上履きをしゃぶった。

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