第12話 十六夜天夜の告白
朝のホームルームが終わった直後、僕はセクハララブレターを手に取り、十六夜君の元へと向かった。
十六夜君の席は窓側の列、後ろから三番目の席だ。
十六夜君とはまだ話した事がないし少し緊張するけど、このラブレターについてしっかり話さないとな。
僕は十六夜君に話し掛けた。
「 あの、十六夜君。ちょっといいかな?」
「 ん? 転校生の紫電じゃん。俺になんか用? つかちゃんと自己紹介してなかったよな! 俺は十六夜天夜! よろしくな!」
十六夜君は僕みたいな陰キャにも明るく挨拶してくれた。真の陽キャとはこういう人の事だろう。
だが、彼はおっぱいの事しか頭にない変態野郎だ。
「 よろしく。それで十六夜君に話し掛けたのは、これが僕の引き出しに入ってたからなんだ」
僕は十六夜君が金谷さん宛に書いたラブレターを渡した。
「 まじか! お前の席と間違えちまったのか! 悪いな紫電! 俺、今日の朝めっちゃ緊張しちゃってさ! それでテンパって間違えちまったんだろうな!」
十六夜君は笑いながらそう言った。
「 つーか紫電、お前俺のラブレターを読んだな? 封筒には宛名は書かなかったから、中を読まないと分からないはずだ」
「 ご、ごめん……」
「 いーよいーよ! 気にすんな!」
十六夜君は笑いながら許してくれた。
もっと色々言われると思ったんだけど、案外優しいし喋りやすいな。
だが忘れるな。十六夜君はおっぱいの事しか頭にない変態野郎なんだ。
「 それで、俺の書いたラブレターどうよ?」
十六夜君が僕に感想を求めてきた。
「 うん……十六夜君。これは金谷さんには絶対に渡しちゃいけないよ?」
「 な、なぜだ!?」
十六夜君が凄く驚いている。
そんな十六夜君に僕は、はっきりと言った。
「 いや書いてあることゴミすぎるだろ! こんなのラブレターじゃない! おっぱい揉みたいなんてラブレターで伝える事じゃない!!」
「 な、何言ってんだよ! 俺は男だ!! 男らしく俺の気持ちを真っ直ぐラブレターに書いただけだ!!」
「 それがダメだって言ってるんだよ! 大体、男ならラブレターじゃなくて、自分の口で伝えたらどうなの!?」
「 !?」
僕のその言葉に十六夜君は何かを思ったようだ。
「 そ、そうだよな……男だもんな。男なら気持ちを直接伝えるべきだよな! ありがとう紫電、お前のおかげで目が覚めたぜ。俺は今日の放課後ケリをつける!」
「 え?」
「 今日の放課後、琴葉ちゃんを屋上に呼び出して告白する!!」
「 い、いきなりだな……」
「 でもやっぱ、一人で告白するのは勇気がいるな……。なぁ紫電、これも何かの縁だ。お前、俺の告白するところを見守っててくれないか?」
「 え!? 僕が!?」
「 そうだ! なぁ頼むよ! 誰かが見守っててくれないと直接告白なんて無理だ! 少しでも不安な気持ちを和らげたいんだ!」
「 わ、分かったよ……。そこまで言うなら……」
「 よし! 決まりだ!! 放課後頼むぜ!!」
「 う、うん……」
僕は十六夜君の勢いに負け、告白を見守る事になった。
ま、まあでも直接告白するなら、さすがの十六夜君でもおっぱい揉ませてとかそんなことは言わないだろう。
その後、一途川さんとは何もなく、阿修羅君も学校に登校しないまま平和な一日が終わった。
そして放課後……。
「 紫電君、一緒に帰りましょう!」
「 ごめん山君。今日は予定があって……」
「 そうですか……。では、僕は先に帰りますね! また明日!」
「 うん。また明日!」
山君には申し訳ないが、今日の放課後は十六夜君の告白を見守る約束をしている。
山君が教室を出てすぐ、十六夜君が僕の元へ歩いてきた。
「 紫電、これから俺は告白する。俺の勇姿を見ていてくれ!」
「 うん。頑張って!」
僕たちは屋上へ向かった。
そして……。
「 それで、私をこんな所に呼び出して何の用?」
金谷さんが屋上に来た。
「 じ、実は君に伝えたいことがあるんだ……」
十六夜君は少し顔を赤らめて口を開いた。
僕はというと、十六夜君の告白を見守っている。
…………十六夜君のすぐ隣で。
そう、すぐ隣だ。
普通こういうのって物陰から隠れて見るものじゃないの?
僕、めちゃくちゃ堂々と金谷さんの前に立ってるんだけど。
これ合ってるの?
だが、十六夜君は僕の事なんてお構いなしだ。
「 それで、私に伝えたい事って何?」
「 じ、実は……初めて見た時からあなたのおっぱいに釘付けでした!! おっぱい揉ませてください!!」
……。
は?
こいつ何ラブレターに書いた事と同じ事言ってるんだよ。
甘かった。考えが甘かった。本人に直接ならさすがに言わないと思っていたが全然甘かった。
こいつ本人に直接言いやがった。
金谷さんは!? 金谷さんの反応は!?
「 死ねやオラァァァ!!」
「 フンヌラゴ!!!!」
金谷さんは十六夜君の顔面を思い切り殴った。
十六夜君は殴られた反動で地面に倒れ込んだ。
こ、怖ぇぇ……ガチ殴りじゃん……。
十六夜君は殴られた頬に手を当て金谷さんに言った。
「 い、痛い! 痛い! ごめん! 謝るから許し……ぐはぁぁっ!!」
金谷さんは十六夜君の謝罪を遮り、顔面に蹴りを入れた。
……。
どうやら金谷さんを怒らせてはいけないようだ。
今の "ツンデレ女王 金谷琴葉" からは、デレを一切感じない。
まじで怖い……。
金谷さんの目は笑っておらず、どうやらガチで怒っているようだ。
十六夜君に何度も蹴りを入れる金谷さんを見て、僕はついボソッと呟いてしまった。
「 金髪ツインテロリ巨乳怖ぇ〜」
「 は?」
「 え?」
「 あんた今、私の事なんて言った?」
や、やばい……つい呟いてしまった。
聞こえてたか!?
「 い、いや、何も言ってませんよ……」
僕はそっぽを向き何とか誤魔化そうとするが、もう遅い。
「 あんた今私の事、金髪ツインテロリ巨乳とか言ってなかった? 言ってたわよね?」
「 あ、いやその……」
金谷さんが僕の方に近づいてくる。
なるほど……。
終わった……。
「 死ねやオラァァァァ!!!」
金谷さんは僕に思い切りラリアットをかました。
「 フンヌラゴ!!!」
僕はひっくり返って頭を打ち、そのまま地面に倒れ込んだ。
「 痛って!! 痛った! まじ痛い……え?」
僕が地面に這いつくばり頭を抱えていると、金谷さんと目が合い……。
「 死ね! 死ね! 死ね! 誰が金髪ツインテロリ巨乳よ! 変なあだ名付けんな!!」
金谷さんは寝転がっている僕の全身を何度も蹴る。
「 痛い! 痛い! 痛い! ほんとごめんなさい!! もう二度と言いませんから許してください! お願いします!!」
僕はただ謝ることしかできなかった。
「 死ね死ね死ね!! お前らマジで死ね!!」
「「 ご、ごめんなさい〜!」」
僕と十六夜君はひたすら蹴り続けられた。
数分ほど経ち、金谷さんの蹴りの嵐がおさまった。
「 次、私に変な事言ったり、変なあだ名で呼んだらマジ殺すから」
「 もう二度と言いません。すみませんでした……」
「 もう二度と呼びません。すみませんでした……」
僕たちは金谷さんに土下座した。
僕は思い知った。
"ツンデレ女王 金谷琴葉" ……彼女を怒らせたが最後、僕らの命は無いのだと……。
その後、金谷さんは不機嫌なまま屋上を降りて行った。
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