第11話 気持ち悪いラブレター

翌朝、僕はいつも通り学校へ登校する。


今日は、狂人ランキング第4位の "超絶超愛 一途川" と、狂人ランキング第3位の "災厄の阿修羅"がやってくる日だ。


一層気を引き締めないとな。


てか、まだ転校してきてから一週間も経ってないのに色々ありすぎないか?


それもこれも全部、この黒月高校に狂人が多過ぎるからなのだろう。


学校に到着して教室まで歩いているのだが、立ち話をしている生徒達から一途川さんや阿修羅君の話が耳に入ってくる。


やはり、あの2人が戻ってくるという事は大ニュースなのだろう。


僕は教室のドアを開け、自分の席に着いた。


すると早々に山君が声を掛けてきた。


「 紫電君、おはようございます。あそこに座っているのが一途川さんです」


山君は、廊下側の列、後ろから二番目の席を指差した。


「 おはよう。あれが一途川さんか……」


そこに座っていたのは、黒髪に桃色のメッシュをした美少女。

山君の言っていた通り、完全に地雷系ギャルの見た目だ。

そして、両腕には包帯を巻いている。これも山君が言っていた通りだ。

あの包帯の下には無数のリスカ跡があるんだろうな。


僕みたいな陰キャが惚れられる事はまず無いだろうが、できるだけ関わらない方がいいだろう。


「 もう1人、阿修羅君についてはまだ登校していませんね」


「 そっか」


阿修羅君はまだ来てないのか。


というか、ふと思ったんだけど。


「 阿修羅君って超不良なんでしょ? 普通に学校くるの?」


僕は山君に尋ねた。


「 た、確かに……。言われてみればそうですね……。少年院に入るまでは何回か学校に来てたそうですが……」


「 何回か、か……。じゃあ最悪今日はサボった可能性もあるな……」


「 そうですね……」


正直、阿修羅君にはかなり興味があったんだけど残念だな……。

まあ、気長に待つしかないか。


僕たちは一途川さんと阿修羅君について話していたのだが、昨日の事を思い出し、小声で山君に話し掛ける。


「 山君、愛宮さんに謝った?」


「 い、いえ……まだ……」


そう。山君は昨日、愛宮さんを怒らせてしまったのだ。


「 山君、こういうのは長引くと面倒な事になるかもしれないし、早めに謝った方がいいと思うよ」


「 そ、そうですよね……。今から謝ります」


「 え? 今? 急だな」


山君は僕の右隣の席に座っている愛宮さんに話し掛ける。


「 あ、あの、愛宮さん」


「 なに?」


愛宮さんは冷めた表情で返事を返した。

かなり怖いが、それでも山君は口を開く。


「 昨日はその、愛宮さんの目の前で失礼な事言ってしまって本当にごめんなさい」


山君は深々と頭を下げた。


愛宮さんの反応は……。


「 別にもういいよ」


愛宮さんは山君の事をあっさり許した。


「 愛宮さん、ありがとう!」


山君の表情は明るくなり、とても嬉しそうだ。


そんな山君に愛宮さんはゆっくりと口を開いた。


「 じゃあさ山君、仲直りって事で話したい事があるんだ。今からちょっといいかな」


「 え?」


ああ、これは……。


告白か……。


山君はその誘いを断れるはずもなく、愛宮さんと一緒に廊下へと出ていった。


さすがは "告白中毒のイズナ" ……。


全く読めないな……。


てか、山君この前告白されてたばっかじゃん……。


まあそれはさておき、カバンから荷物出さないとな。


僕はカバンから教科書や筆箱を取り出し、机の引き出しにしまっていく。


あれ? なんだこれ?


引き出しに教科書をしまおうとした時、引き出しの中にピンク色の封筒が見えた。


僕はその封筒を取り出し、見てると……。


これってまさか……ラブレター!?


そう。明らかなラブレターだ。

ラブレターには差出人の名前はない。


一体誰だ?


僕は転校してきてまだ数日しか経ってない。

そんな僕にラブレターを出す人なんているはずがない。てかそもそも僕陰キャだし。


つまりこれは……。


愛宮さんの仕業か!


"告白中毒のイズナ" め……。直接告白するだけでなく、ラブレターという戦法まで使うのか。


恐ろしい女だ……。


まあでもとりあえず読もう……。


僕は封筒を開け、ラブレターの中身を読む事にした。


ラブレターの内容はこうだ。


『 琴葉ちゃんへ

 あなたのおっぱいを一目見た時から、俺は

 あなたのおっぱいの虜になりました。

 気が付けばあなたのおっぱいを目で追っ

 てしまいます。

 あなたのおっぱいは人に幸せを運ぶ幸運の

 おっぱいです。

 あなたのおっぱいを見る度に俺の心は浄化

 され、清々しい気分になります。

 これ程までに美しい二つの頂を見たことが

 ありません。

 差し支えなければ、おっぱい揉ませてくだ

 さい。

 あと付き合ってください。

             十六夜天夜いざよいてんやより』


「 ……………」


なるほど……。


どうやら十六夜君が、金谷さんの机と間違えて、僕の机の引き出しにラブレターを入れてしまったという事か……。


十六夜君は僕と同じクラスの男子生徒。

派手な金髪にピアス。見た目はチャラいがかなりのイケメンだ。


そんなチャラ男が金谷さんにラブレターか……。


てか………………。


こんなのラブレターじゃねぇ!!!!!!!


ただのセクハラだ!!!!!!!


終わってるだろ十六夜天夜!!!!!!!


とりあえずこのラブレターは絶対に金谷さんへ渡してはいけないから、十六夜君に返すとしよう。


というか……。


今日は一途川さんと阿修羅君の事しか頭になかったのに、余計なイベント盛り込んでくるな!!


僕は心の底からそう思った。

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