第10話 災厄の阿修羅
「 続いて、阿修羅君について説明します。本名は
「 狂力9700か……。どんどんインフレしていくな……。正直、さっき "超絶超愛 一途川" の話を聞いたから、それより上がいるなんて信じられないんだが……」
「 まあそうでしょうね。ですが話を聞けば阿修羅君のヤバさが分かると思います」
「 ……そうか。話を続けてくれ」
「 はい。まず、阿修羅君はこの辺りじゃ知らない人がいない程の超不良なんです。ガタイがよく、銀髪の長い髪をオールバックにしているのが特徴で、かなりイカつい見た目です」
「 不良か……」
「 ええ。ですが、阿修羅君の強さはそこら辺の不良とは次元が違います。30人の暴走族を相手に、たった1人で倒してしまう程ですからね。しかも無傷で……」
「 は!? 30人相手に無傷!? バケモンすぎるだろ!」
「 そうです。彼は本物の化け物なんですよ。去年の夏に暴走族のメンバーと揉めて喧嘩になったんですが、その暴走族は阿修羅君1人に潰されました」
「 まじかよ……」
「 はい。ですが、もっと恐ろしいのは強さではなく、その凶暴さと残忍さです。阿修羅君はかなり気性が荒く、目をつけた相手はとことん潰しに掛かります。暴走族を壊滅させた時も、暴走族メンバーは全員骨折以上の大怪我を負っています。中には顔を殴られすぎて骨格が変形してしまった人や、首の骨を折られ、下半身不随になってしまった人までいるそうです」
「 ……」
「 阿修羅君はその事件の後、少年院に入っていたので、おそらく明日帰ってくるのかと……」
「 暴走族30人を1人で倒す超不良か……」
「 はい。それに阿修羅君はほんの些細な事でもムカついたら周りに危害を加える……。関わってしまった人は
「 なるほど……」
今の話を聞いて分かった事がある。
阿修羅銀三は不良で悪人だ。
山君は知らないが、僕は悪人を倒す事が……いたぶる事が大好きなんだ。
阿修羅銀三か……。
ああ……。
ぶっ潰してぇなぁ……。
阿修羅君が僕みたいな陰キャにボコボコにされた時の顔が見てみたいなぁ〜。
だが、相手は暴走族30人を1人で倒す程の不良だ。そう簡単に勝てるとは思えない……。
どうしような……。
「 紫電君? どうしたんですか? 大丈夫です?」
考え事をしていた僕に山君が声を掛けた。
「 あ、うん、大丈夫。ヤバい奴2人の話がかなり衝撃的で……」
「 そうですよね。こんなヤバい奴らが2人とも同時に帰ってくるなんて最低最悪です……。そして2人とも同じクラスなのも絶望的ですね……」
「 は!?」
驚く僕に、山君は平然と答えた。
「 さっき、僕たちのクラスは空いている席が2つあると言いましたよね? そのうちのひとつが一途川さんで、もうひとつが阿修羅君です」
「 言った、確かに言ったけど……。まさか2人とも同じクラスだなんて……」
「 明日から気を付けた方がいいですね。一途川さんは、惚れられさえしなければ僕らに危害が加わる事は無いのでおそらく大丈夫でしょう。問題は阿修羅君です。彼の機嫌を損ねてしまったらその時点で詰みです。まあ、どちらにせよ、2人との接触は避けた方がよさそうですね……」
「 そうだな……。てか、なんかうちのクラス狂人多くね?」
僕はふと思った疑問を口にした。
僕の疑問に山君は苦笑いをしながら答えた。
「 そ、それに関しては担任の運が悪かったんでしょうね……」
「 運?」
「 そうです。黒月高校では、クラス決めを担任の先生によるくじ引きで決めるそうです。なんでも、平等に決めるためだとか……」
「 そうなのか……」
山君から話を聞き終えた僕は個室の時計を確認する。
「 もう19時過ぎてるな……」
「 本当ですね。つい話に夢中になってしまって……」
僕たちはカラオケ店を出る事にした。
「 じゃあ紫電君、また明日! お互い明日からの学校生活は気を付けましょうね!」
「 うん! 今日はありがとう山君! また明日!」
店を出て僕と山君は解散した。
人生で初めて入ったカラオケ店では、かなり濃い時間を過ごしたな……。
カラオケに来たら、愛宮さんと桃園さんに出会い、愛宮さんには何かしらの過去があり告白中毒になってしまった事を知れた。
さらに、狂人ランキング第4位の "超絶超愛 一途川"、狂人ランキング第3位の "災厄の阿修羅" 。
この2人の情報も得られた。
僕が明日からすべき事として、一つ目は引き続き愛宮さんを惚れさせる方法を探す事。そのために、愛宮さんの過去を知る事が目先の目標になってくるだろう。
そしてもう一つ。
それは、阿修羅銀三を潰す事。
山君の話を聞いて、阿修羅君に興味が湧いた。
ただ、潰すと言ってもそう簡単にはいかないだろう。だからまずは、同じクラスなんだし阿修羅君について観察しよう。仕掛けるのはそれからだ。
「 明日から忙しくなるな……」
僕は明日からの事を考えながら自宅へと帰った。
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