第6話 ツンデレ女王
次の日、僕はカバンに3つのクマちゃんストラップを付けて登校した。
「 このクマちゃんストラップを目にした愛宮さんは、間違いなく釘付けになる! そして、そこから自然に会話を広げ、まずは友達になってやる!」
僕は教室の前で意気込み、ドアを開けた。
よし、教室に入ったらまずやる事は……。
無駄にストラップをジャラジャラさせて、自然な感じで愛宮さんにアピールするんだ!
僕は自分の席に向かって足を踏み出す度に、ストラップをジャラジャラさせた。
よし! 自分の席にたどり着いた! 次は……。
ゴトッ。
え?
何かが地面に落ちる音がした。
床を見てみると、そこには赤色の筆箱が落ちている。どうやら左隣の席の人が、カバンから荷物を取り出している時に落としてしまったようだ。
本来なら次のステップとして、大袈裟にカバンを机に置き、右隣の席に座っている愛宮さんにアピールするはずだ。
だが、その前にまずは落とした筆箱を拾ってあげた方が良いだろう。
左隣の席の人の名前は
昨日、桃色髪のツインテールロリである "妹改革の桜花" という美少女に出会ったが、彼女は貧乳だった。
しかし目の前にいる金谷さんはなんと巨乳。
素晴らしき頂がそびえ立っているのだ。
まあ、見た目からして金谷さんは気が強そうなので僕の得意なタイプではないけど……。
とりあえず筆箱を拾ってあげるか。
「 あ、あのこれ……落としたよ」
僕が金谷さんに筆箱を渡すと、金谷さんが急に大きな声を出した。
「 あ、ありがとう……。で、でも勘違いしないでよね! べべべ別にあんたに拾って貰いたくてわざと落としたんじゃないんだからね! たまたま落としちゃっただけよ!!」
……。
ツンデレ……だと……?
まさかこの子、金髪ツインテロリ巨乳の上に、ツンデレという属性も持ち合わせていたとは……。
かなりの逸材だな……。
そんな金谷さんの圧倒的なツンデレを見た周りの男子達がざわめく。
「 か、かわいい」
「 だ、抱きしめたい」
「 ち、ちゅーしたい」
「 む、胸揉みたい」
「 あ、足の匂い嗅ぎたい」
「 お、お尻に顔埋めたい」
「 わ、脇舐めたい」
「 お、犯し……」
おっと、どうやらこのクラスは性犯罪者予備軍が大量にいるようだ。
てかこれ本人に聞こえてない? 大丈夫?
さすがは狂人ランキングが作られるだけの高校だ。
周りにもかなりイカれた奴らがいるようだな。
それはともかく、筆箱を渡し終えた僕がやるべき事はクマちゃんストラップをアピールする事だ。
僕はストラップをアピールしながらカバンを机に置こうとしたその時……。
「 は? クマのストラップとかきっしょ」
左隣の金谷さんから僕の心をえぐる一言が飛び出した。
そして、金谷さんの言葉に反応した愛宮さんが僕のカバンのストラップを見る。
そうだ! 金谷さんには酷い事を言われたが、僕の目的は愛宮さんだ! 愛宮さんならきっと、可愛いとか素敵とか言ってくれるはずだ!
……はずだったのだが、僕の思いは届かなかった。
「 あのさ紫電君。君みたいな陰キャがクマのストラップを付けないでくれるかな? クマのストラップが可哀想だし、何より君がそれを付けていることが気持ち悪い」
愛宮さんはそう言って僕から視線を逸らした。
……。
両隣の美少女から気持ち悪がられてしまった僕は、ひとつ決心した。
昨日買ったクマのストラップ、全部捨てよ。
カバンに付いたクマのストラップを見ると、そのクマの表情はどこか寂しそうに見えた。
その日の昼休み……。
「 紫電君、今朝は酷い目に遭いましたね……」
「 見てたか山君……。どうやら僕たち陰キャはクマさんのストラップをカバンに付ける事は許されないようだ……」
「 ですね。僕も今後は気を付けないと……」
僕たちは今後、クマさんのストラップを付けない事を誓った。
「 それにしても、まさか金谷さんまであんな酷い事を言うなんて……」
「 金谷さんか……。なんか凄いツンデレだったな……」
「 そりゃそうですよ。彼女こそ狂人ランキング第11位、 "ツンデレ女王 金谷琴葉" です」
「 え? 彼女が狂人ランキングに入ってるの!? ただツンデレってだけなのに……」
僕は驚きを隠せなかった。
ただツンデレなだけで狂人ランキングに入るのか?
そう思っていたのだが、山君は僕の発言を否定した。
「 いいえ、彼女はただのツンデレではありません。異常なまでのツンデレなんです!」
「 異常なまでの?」
「 はい……。"ツンデレ女王 金谷琴葉" は、事あるごとにツンデレを発動してしまうのです。もはやツンデレに取り憑かれていると言っても過言ではありません。その異様なツンデレぶりから狂力は2900という高数値にまでなっています」
「 狂力2900か……。愛宮さんや桃園さんに比べると少ない数値だが、一般人の狂力を100と考えるとかなりの狂力だな……」
「 その通りです……」
と、このような会話を普通にしているのだが、よくよく考えてみると、僕たちは一体何を言っているんだろう? と、なってしまう。
狂人ランキングだの狂力だの、この学校に早くも慣れてしまった。
それも全てこの学校がおかしいせいだろう。
僕たちは、周囲からすればおそらく異様だと思われる会話をして昼休みを過ごした。
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