第5話 イズナの弱点探し
僕は教室に入り席に着く。
右隣に座っている愛宮さんは僕の方を見向きもしない。
愛宮さんと話す事なく午前の授業が終わり昼休みとなった。
「 紫電君、一緒にお昼ご飯食べましょう!」
お昼休み早々、山君が話し掛けてきた。
「 その前に山君、少し相談があるんだ」
「 相談?」
僕は授業中に考えていた事がある。
それは、どうやって愛宮さんを惚れさせるかだ。
今朝、少しでも自分に意識を向けさせるため勢いで告白してしまったが失敗……。
相手は狂人ランキング第5位の "告白中毒のイズナ" だ。
常識が通用しない狂人……。
正攻法じゃ彼女を落とす事なんてできないだろう。
だから授業中、どうやったらあの狂人を落とす事ができるか考えていたのだが……。
何も思いつかなかった……。
だからこうして山君に相談する事にした。
「 山君、愛宮さんを落とす良い方法ないかな? 授業中に考えてたんだけど、あの狂人を落とす方法なんて全然思いつかなくてさ……」
「 なるほど……そういう事ですか……」
山君は少し考え込み、口を開いた。
「 愛宮さんの弱点でも探してみたらどうでしょうか?」
「 弱点?」
「 そうです。何か弱点でもあればその弱点を突いて落とせるかもしれませんよ」
「 なるほど……」
そういう手があったか。
さすが山君、相談して正解だった。
「 ありがとう山君」
「 いえいえこれくらい。……ですが相手はあの "告白中毒のイズナ" です。果たして弱点などあるかどうか……」
「 確かに……。だが、探してみる価値はある!」
「 そうですね! 僕も協力しますよ!」
「 ありがとう!」
僕と山君は愛宮さんの弱点を探す事にした。
「 それで山君、愛宮さんの弱点に心当たりとかは無いの?」
「 ハッキリ言って無いですね……。愛宮さんは告白中毒である事以外、ほぼ完璧なんです」
「 え? そうなの?」
「 はい。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群……。告白中毒でさえなければ、間違いなくこの学校でもトップクラスの人気者になれたはずなんです」
「 なるほど……。それじゃあ、弱点を見つけるのはなかなか大変そうだな」
しかし、話を聞く限りだと本当に勿体無い人だな……。
告白中毒でさえなければなぁ……。
「 紫電君、これからは愛宮さんの動向を監視しましょう! そうすればいつか弱点が見つかるかもしれません!」
「 そうだな」
僕たちは愛宮さんの動向を観察し、弱点を探し出す事を決意した。
そして放課後……。
僕と山君は下校中の愛宮さんの後をつけていた。
「 山君……これって僕ら完全にストーカーじゃない?」
「 いいえ違います! これは調査です!」
何やら山君はとても乗り気のようだ。
「 てか、愛宮さんって部活とか入ってないの?」
「 入ってませんね。僕と同じ帰宅部です。そう言う紫電君は部活動はどうするんですか?」
部活か〜。
正直めんどいな……。
「 僕も帰宅部かな」
「 さすが我が同士よ!」
愛宮さんの後をつけながら、そんなくだらない会話をしていた。
「 紫電君、愛宮さんがデパートに入っていきますよ!」
「 そうだな」
愛宮さんはこの辺りではかなり大きいデパートへと足を踏み入れた。
僕たちも愛宮さんの後を追ってデパートに入る。
「 愛宮さん、一体何を買うんでしょうね」
「 さあな、普通に日用品でも買うんじゃないの?」
僕はそう思っていたのだが、愛宮さんが向かった先はおもちゃコーナーだった。
「 紫電君! あの愛宮さんがおもちゃコーナーに入っていきましたよ!?」
「 ああ! 追いかけるぞ!」
まさかあの愛宮さんがおもちゃコーナーに入っていくなんて予想だにしなかった。
僕たちは物陰に隠れ、愛宮さんの方へと視線を向ける。
すると……。
「 はぁ〜〜〜! もう! 超可愛い!!」
僕たちの視界に入ってきたのは、大きなクマのぬいぐるみを抱きしめる愛宮さんだった。
「 愛宮さん……マジか……」
「 さすがに予想してませんでした……。あの愛宮さんにこんな趣味があるなんて……」
まさか愛宮さんが可愛いもの好きだったとは。
告白して振られる事以外に好きなものあるんだな……。
だがこれは大きな収穫だ。
まさかこんなにも早く愛宮さんの弱点を知る事ができるとは……。
愛宮さんはクマのぬいぐるみを抱きしめながらとても幸せそうな顔をしている。
「 山君……」
「 はい、紫電君……」
「 これは使えるぞ! 愛宮さんが可愛いもの好きと分かった以上、可愛いもので愛宮さんを釣るんだ!」
「 なるほど……。ですが紫電君、可愛いもので愛宮さんを釣るとは具体的にどういう事ですか?」
「 いいか山君。愛宮さんを落とすにはまず友達になって良好な関係を築かなければならない。そして友達になるためにはきっかけが必要だ!」
「 なるほど! そのきっかけに可愛いものを使うんですね!」
「 その通り! 明日、学校のカバンに可愛いクマのストラップでも付けていけば、向こうから声を掛けられること間違いなしだ!」
「 素晴らしいです紫電君! 完璧な計画です!」
僕と山君は明日に備えるため、クマのストラップを大量に購入した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます