第3話 逆告白大作戦
僕はアパートで一人暮らし。
両親は海外へ仕事に行ったきりで何年も会ってない。
両親から毎月通帳にお金が振り込まれてくるため、生活には困らない。
そんな僕が引っ越すことになってしまったのは、前に住んでいた地元で不良を狩りまくっていた事が学校にバレて、色々問題になってしまったからだ。
僕の事を知らないこの街に引っ越すことで一からやり直すつもりだ。
まあ、やり直すと言っても不良を狩る事はやめないんだけどね。
要はバレないように上手くやるって事だ。
僕は自宅で今までの事や今日あった事を振り返りながら過ごした。
そして翌日……。
学校の校門をくぐり、玄関へと向かって歩いていたのだが、校舎裏へ歩いて行く愛宮さんと山君が見えた。
これはまさか……。
愛宮さんが山君に告白するつもりか!?
僕はバレないように2人の後をついて行った。
そして物陰から2人を覗くと、早速愛宮さんが口を開いた。
「 あ、あの…山君……。私、山君の事が好きなの! 私と付き合ってください! お願いします!」
愛宮さんが山君に告白した。
てか愛宮さん、なんでこんな告白で頬を赤らめたり恥ずかしそうに照れたりできるんだよ。
「 ご、ごめん愛宮さん。愛宮さんの気持ちは嬉しいんですけど、僕には他に好きな人がいるんです……。だから君と付き合うことはできません……」
山君が愛宮さんを振った……。
なんて茶番だ。
まあ、こうするしか無いのは分かるんだが、愛宮さんは何度この茶番を繰り返してきたのだろう。
そんな事を思っていたら、愛宮さんの表情がどんどん歪んでいく。
「 ふ、振られちゃった……。イヒ……イヒヒヒヒヒヒ……アハハハハ。この感覚……最っっっっっっっっ高だわ!!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
その愛宮さんの表情は言葉では言い表せない程に歪んでおり、まさに快楽に溺れているかのようだった。
…………。
舐めていた……。
僕は完全に愛宮泉菜の事を舐めていた。
これが本物の狂人なのか……。
この世には本当にこんな奴が存在するんだな…………。
僕は愛宮泉菜に対して少しの恐怖を覚えた。
だが、僕はこのイカれた狂人を惚れさせなければならない。
ここでひよってる場合じゃない!
僕は物陰から姿を現し、愛宮さんの目の前に立った。
「 え!? 紫電君!? どうしてここにいるんですか!?」
山君が僕に声を掛けるが、今は目の前の愛宮さんに集中だ。
愛宮泉菜……通称 "告白中毒のイズナ" ……。
君は告白ばかりしているそうだが、逆に告白された事はあるか?
異性に告白されれば、例えそれが好きでは無い相手だとしても多少は意識するようになる。
僕は逆に愛宮さんに告白して、僕という存在を彼女の中に植え付ける!!
そうする事で今後、愛宮さんが僕の事を意識するようになるかもしれないしな……。
果たしてこの作戦が愛宮泉菜という狂人に通用するかどうかは怪しいが、試す価値はあるはずだ。
「 愛宮さん!」
僕は愛宮さんに声を掛けた。
先程まで快感に浸っていた愛宮さんの表情が一瞬で無表情となり、プレッシャーを感じる。
「 なに? 私になんか用?」
正直恐怖はあるが逃げるわけにはいかない。
もう引き返せない……やるしかない!
「 愛宮さん、実は僕……君の事が好きになってしまったんだ! 告白する君の姿を見て惚れてしまった! だから僕と付き合ってください!」
「 は!? 紫電君どういう事!? 」
山君は僕の告白に驚いているが、告白された愛宮さんの表情は全く変わらない。
少しの時間が経ち、愛宮さんはゆっくりと口を開いた。
「 ……。あのさ紫電君、私今すごく快感を感じてたの。なのに君のつまらない告白のせいで楽しい時間が一気に覚めちゃったよ……」
「 愛宮さん、僕は本気なんだ! だから」
「 黙れゴミ野郎!!!」
「 !?」
僕は急に大声を出した愛宮さんに驚いた。
「 マジどうしてくれんの? あんたが私の事を好きだろうが嫌いだろうがどうでもいい! 私は告白して振られたという快感を味わってたところを邪魔された事が気に食わないのよ!」
僕はようやく実感した。
この狂人に告白した程度で意識が自分の方に向くなんて考えが甘すぎたと……。
それに告白するタイミングもミスった。
せめて快感タイムが終わってから告白するべきだった。
今の愛宮さんからは昨日とは比にならないくらいの恐怖を感じる。
僕は今まで何十人、何百人もの不良や悪人と戦ってきたが、恐怖を感じたことは一度もなかった。
そんな僕が初めて感じる恐怖……。
この女はマジでヤバいと本能が告げている。
「 紫電伊吹! 私はお前を絶対に許さない!! 殺してやる!!」
豹変した愛宮さんが僕の方へ駆け出し、襲ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます