第2話 狂人ランキング

愛宮泉菜あいみやいずな……通称 "告白中毒のイズナ" ……。


彼女に僕を惚れさせて本当の告白をさせる……これが僕の学校生活での目標だ。


だが、そのためには何をすればいいのだろうか。

これからゆっくりと考えていく必要がある。


「 紫電君は凄いですね。まさかあの "告白中毒のイズナ" に立ち向かうなんて」


「 そういえば山君も愛宮さんに告白された事があるの?」


「 ええ、もちろん何度もあります。初めて告白された時なんて、僕に春が来たと本気で思って即OKしちゃいましたよ……。そしてボコボコにされました……」


「 マジか……」


山君も僕と同じ目にあってたんだな……。

まあ僕の場合はOKの返事をしたわけじゃ無いけど……。


「 それにしてもこの学校にはとんでもない奴がいるんだな」


僕の何気ないその発言に、山君は目の色を変えた。


「 はい……。ですがこの学校には愛宮泉菜だけじゃ無い……あれくらいイカれた奴らが何人もいるんですよ……」


「 えっ!?」


その言葉に僕は驚きを隠せなかった。


愛宮さんクラスにイカれた奴らが何人もいるなんて信じられない。


山君は口をゆっくり開き、話を始めた。


「 この黒月高校には "狂人ランキング" というものが存在します」


「 狂人ランキング?」


「 そうです。この学校でイカれた狂人をランキングにしているんです。もちろんそのランキングが高いほど狂人です……」


「 マジか……。そんなランキングが作られる程この学校には狂人がいるのか……」


狂人ランキング……。山君の発言に僕は驚かされてばかりだが、次の発言にさらに驚かされることになる。


「 いいですか紫電君……あの "告白中毒のイズナ" でさえ、狂人ランキング第5位なんです」


「 は!? あの愛宮さんが5位!? てことは更に狂った奴が4人もいるのか!?」


「 そういう事です。そしてそのランキングを決めるのが "狂力きょうりょく" です」


「 きょうりょく?」


「 はい。狂った力と書いて狂力と呼びます。狂力とは、その人物がどれだけ狂っているか、イカれているか、サイコパスかを数値化したものです。誰しも周りと違ったこだわりや価値観があり、他の人からしたらおかしいと思われる事があると思います。それが狂力に反映される事を加味して、普通の一般人を狂力 100としています」


「 なるほど、普通の人で狂力 100か……。それに思ったより狂力ってのも考えられてるんだな。それで? 愛宮さんの狂力はいくつなんだ?」


「 6800です」


「 は!? いきなりインフレしすぎだろ! てか狂力 6800で5位ってまじかよ!」


「 そうなんです。この学校にはまだまだイカれた奴らがいます。おそらくこの先、関わる事もあるでしょう……」


「 マジか……。僕の目標は愛宮さんを惚れさせる事だけど、その前に色々面倒な奴らと関わるかもしれないって事か……」


「 そういう事です」


話を聞く限りこの学校はなかなかヤバそうだ。


「 てか、狂人ランキングとか狂力って誰が決めてるの?」


「 それは分かりません。それも不思議なんです。ランキングの変動や新たにランク入りした情報など、気が付けば広まってるんです……」


「 なるほど……。狂人ランキングの作成者さんは謎って事か……」


「 そうですね……」


狂人ランキングの作成者はともかく、愛宮さんの事やこの学校の事を知ることができたのはデカい。


「 山君、色々教えてくれてありがとう。これからもよろしく頼むよ」


「 こちらこそよろしくお願いします! ぜひ紫電君の協力をさせてください!」


「 うん。じゃあとりあえずお昼ご飯にしようか」


「 そうですね!」


僕と山君は購買へと向かった。


その後は愛宮さんとは話すことなく放課後になった。


「 紫電君、それじゃあまた明日!」


「 うん。山君、今日はありがとう」


僕と山君は教室で別れ、僕も家へと帰宅する。


「 今日は凄い一日だったな〜」


僕は今日あった出来事を振り返りながら人気のない道を歩いていた。


すると……。


ドンッ!!


「 ってーなー!」


身長の高いスキンヘッドの男性と肩がぶつかってしまった。

そしてその背後にはガラの悪い不良(モヒカンとリーゼント)が2人。


僕は3人の不良に囲まれてしまった。


「 おいおいにーちゃん、怪我しちゃったよ? どうしてくれんの?」

「 こりゃあ慰謝料請求しないとな〜」

「 とりあえず謝れやクソ陰キャ!」


僕は不良たちの言葉を無視する。


「 おいおい黙っちゃってどうしたの〜? ビビって声もでねぇか?」


モヒカン頭の不良が僕に近づき顔を覗き込んできた。


……。


「 うぜぇんだよ……」


僕はそう呟き、モヒカン野郎の顔面を思い切り殴った。


ドゴッ!!


「 うぐっ!!」


モヒカン野郎は吹っ飛び、白目を剥いて気絶した。


その光景を目にしたリーゼントの不良が震えた声で話し掛けてきた。


「 て、てめぇ……い、いきなりなにすんだ!」


僕はその声を無視してリーゼントの不良との距離を一瞬で詰めた。


そして……。


ドカッ!!


顎に一撃喰らわせて、リーゼントの不良は声を上げることなく気絶した。


残ったスキンヘッドの不良を見ると、かなり怯えているようだ。


「 お、俺が悪かった……。謝るから……頼む、ゆ、許してくれ……」


スキンヘッドの不良は謝ってきたが、そんな事どうでもいい。


僕はスキンヘッドの不良にゆっくりと近づき、回し蹴りをした。


ドゴッ!!


「 ぐへっ!!」


スキンヘッドの不良は地面に倒れ込んだ。


「 た、頼む……もう許してくれ……」


僕は命乞いするスキンヘッドの不良に跨り、顔面を殴り続けた。

今日の朝、僕が愛宮さんにやられたように……。


「 あはは!! 死ねやクソ野郎が!!」


ドゴッ!! ドガッ!! バゴッ!!


やがてスキンヘッドの不良は気絶した。


僕は不良や犯罪者といった悪人が大嫌いだ。

だから幼い頃から独学であらゆる武術を覚え鍛え続けた。

転校する前に居た地元では、不良を片っ端から殴り、蹴り、いたぶり、弄んでいた。


気が付けば誰かに暴力を振るうことが快感になっていた。

だから不良や犯罪者などの悪人は僕にとっては不可欠……。

だって、善人を殴るわけにはいかないもんね。


その点不良や犯罪者は社会のゴミ、底辺だから暴力を振るっても問題ない!!


悪人は大嫌いだが僕には必要な存在なのだ。


これが僕の秘密。


僕は血塗れで気絶したスキンヘッドの不良に座りながら呟いた。


「 これがバレたら、僕も狂人ランキングに入っちゃうのかな?」


僕はその後、何事もなかったかのように家に帰った。


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