余裕についての考察

第1話

　　余裕についての考察

余裕とは―――

自分がトラブルの中にいても

いっぱしの冗談が言えること

間抜けな答えをしても

あながち外れではないこと

本命ではなく

二番手でもよしとすること

引き返しても

まだ充分間に合うこと

次善の策を

あれこれ思いつくこと

最低限の

お金を持っていること

７５点でも

先へ進むこと

９５点を

すなおに喜ぶこと

自分も困っているときに

人にやさしくできること

適当な

スキマがあること

煽られても

すぐにカッとしないこと

黄色でアクセルを

踏み込まないこと

いさぎよく同じ道を

引き返せること

目覚ましよりも

先に起きること

高くても

必要なものは買うこと

嫌いな人も

視界のうちに置くこと

恥をかくことを

恐れないこと

余計なプライドを

持ち合わせないこと

失敗の涙を

経験していること

自分自身を

否定しないこと

十年単位で

ものが見れること

たまには流行に

乗ってみること

たまには旅行に

行ってみること

選択肢の

幅が広いこと

しかし中心が

ブレないこと

繊細なのに

なぜか強いこと

小さいものを

いとおしむこと

大きいものを

リスペクトすること

言葉の怖さを

知っていること

美しいものを

こよなく愛すること

大きな情熱を

持っていること

バカなことに

真剣に取り組めること

ときどき宇宙に

思いを馳せること

ひとりぼっちを

楽しめること

愛の力を

信じていること

笑いの力も

信じていること

これらのすべてを忘れても

唇にほほえみを忘れないこと

　　　　　　　　　　　　（了）