第8話:行く末
「蘇生魔法が使えないとまずいぞ。」
もしかしてアルガスだけが知っている呪文詠唱・・・いやパスワードがあるのかもしれない。
そう思った俺は、近くの本棚の本に何かないか探してみた。
適当に近くにある本を手に取って軽く見てみるが、見たことない文字で書かれていて読む事すら困難な事が理解できた。
「俺はこの世界の文字をなぜか理解できるが、これは見たことがない。文字ではなく暗号のようなものなのか?」
なんにせよ、俺にわかるはずもない。
「まだ時間はある。どうするかいったん戻って考えよう。」
帰るために部屋を出ようとすると、扉がスッと開いた。
「残念だけど、時間はないぜ。戻るところもな。」
静かに部屋に入ってきた男は見覚えのある男だった。
(こいつは夢で出てきた丸坊主の男じゃないか。来るのは一週間後って言ってなかったか?)
「何を驚いている?約束の時間に入口で待っていなかったからこちらが驚いたぜ。」
「約束の期限は一週間後だったはず?」
「今日がその一週間後だ。」
(そうか・・・あの夢が何日前の事かなんて確証は何もなかったんだ・・・。それなのに時間があると勘違いしていた。)
「しかし、爺さん死んじゃってるじゃねえか。もう一人は息子だよな?・・・蘇生魔法は失敗って事か?」
(どうする?誤魔化すか?それとも命乞い?)
「蘇生魔法が成功したか、失敗したか聞きたい。」
「蘇生魔法は成功しました。」
「それは良かった。では今から見せてもらおうかな?」
「生き返らす人間がいないでしょう?」
「そこの2人のどちらかでいいんじゃねえか?」
「2人とも死んで時間が経ちすぎて腐り始めている・・・だから無理です。」
「ふーん、そういうもんなのか?」
(とりあえず適当な事を言ったが、意外に上手くいけそうだ。このまま押し切って時間稼ぎするしかないな。)
「死体にも色々と条件があるし準備も必要なんですよ。だからもう一週間くれませんか?」
すると何か大きなものが扉から投げ込まれた。
俺は驚いて思わず後ろへと飛びのく。
そして、恐る恐る確認する。
(なんだこれは・・・でかい西洋人形?いや・・・まさかそんなはずは・・・。)
「ま・・・まさかエテルナなのか!?」
その姿と、その顔は間違いなくエテルナだった。
床に仰向けになった彼女の顔は青白く、目は開いたまま何の感情も感じられない。
手足は力なく放り出されていて、体に何の力も感じない。
「今殺したところだ。蘇生魔法の実験台としては文句あるまい。」
聞いた事がない女の声が聞こえて、そちらを振り向くと黒装束の人物がいつの間にか部屋にいた。
声と体形で女である事はわかったが、顔は黒頭巾で隠している為、その鋭く青い目以外人相がわからない。
「人を殺すと面倒な事になるんですから、出来るだけやめてくださいよ。」
「この女は一度死んで生き返った。つまりもう死んだ人間だ、面倒はない。」
俺がショックを受けている間に、死体を前に平気で会話をする連中を見て俺は恐怖を感じていた。
彼らは人を殺す事になんの罪悪感もない。
もし蘇生魔法が出来ないと言ったらどんな目にあわされるかわからない。
「わかりました。では蘇生魔法の儀式を行いますから強力してくれますか?」
迷宮最深部に異世界転生された俺は悪魔の力で無双する 国米 @kokumai
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