第6話:能力
「さあ、私の知っている事は話しました。次はあなたの番ですよ、サイラスさん。」
「・・・へ?」
一瞬何を言っているかわからず、つい変な声が出てしまった。
(俺を殺したのはサイラス・・・それなのに今の俺がサイラス?どういう事だ?)
しかし冷静に考えてみると、あの状況で助かっているのはサイラスだけなのは確かだった。
もう一度体を確認してみるが、たしかに細身でイメージは合う。
体中の傷や痣は、「愛のムチ」を受けた後だという事なのだろうか?
「どうしたのですか?何かお怪我をしていたのですか?」
「顔や背中に違和感があるから、自分で確認したい。手鏡などないか・・・いやないでしょうか?」
俺がもしサイラスなら使用人。
丁寧に話さなければおかしい事に気付き慌てて訂正した。
「はい、わかりました。」
彼女は机の引き出しからアンティークな手鏡を取ってきて、渡してくれた。
「ありがとうございます。」
さっそく顔を確認すると、見た事のある細い目と冷淡な顔つきはサイラスで間違いなかった。
さらに背中を確認するといくつか裂傷の後があり、かなり壮絶な虐待を受けていたことは想像出来た。
彼が殺したいほど恨んでいた理由もわかる気がした。
(よく異世界転生物だと強力な能力を得て転生するが、俺の能力は殺された相手に成り代わる能力なのか?ただ、記憶は受け継いではいないようだし、人を殺した犯罪者に乗り移る事になるからデメリットも多いな。)
「どうしました?何かありましたか?」
「いえ、問題ないです。」
(実際は違うが、俺が父親と爺さんを殺したことになっているから、うまく誤魔化さないとまた殺されてしまう。)
「ええと、まずあなたの父であるアークス様はアルガナ様の蘇生魔法によって蘇りました。」
「それは知りませんでした。父は死んでいたのですね。」
「ええ、そうです。そして次はエテルナ様を復活させる事になり、それには私も立ち会いました。」
(よし、ここからなんとか誤魔化す。)
「そして、エテルナ様の蘇生魔法の詠唱が始まりましたが、終わった途端にアルガナ様は血を吐いて亡くなってしまったのです。ご高齢でありながら、ご家族を復活させるために無理をしておりまして、そのせいかと思っております。」
「そうですか・・・たしかにおじい様は高齢でしたから。」
「私達は悲しみに沈んでおりましたが、その時祭壇の上空に穴があき人魂のようなものが現れたのです。」
「人魂?」
「信じがたいですが、そうなのです。そしてその一つはあなたの体に入り、それ以外の人魂は私達を襲ってきました。私はその時に気を失い、その後の事はわかりませんでしたが、まさかアークス様が亡くなっていたなんて・・・残念です。」
真実を含めつつ、嘘をまぜた我ながら素晴らしい説明だと思った。
俺は泣き真似をしつつ彼女の様子を確認する。
彼女は考え込んでおり、あまり信用していない感じがした。
「そんな事がありうるのでしょうか?本当にあなたは人魂を見たのですか?」
「疑うのもわかります、信じられないのもわかります。しかし、私はその光景を確かに見ました。だからこそあなたは生き返ったのです。」
「たしかに私が生き返るという奇跡が起こったのですから、信じがたい事でも認めなくてはいけませんね。」
「信じてくれますか?」
「わかりました。しかし、これからどうすればいいのか・・・。」
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