2 絶望すぎてワロタンリーヌw

 「ほんとに居なくなりやがった……!」


 結局、自称神様あいつの気配は消え失せ、俺はいつの間にか目の前に落ちていた道具一式を物色している。


 まるで物乞いだぜ。被害者は俺なのによ……。


 ちなみに道具はどれも濡れていない。撥水機能付きか……?


 「無駄に便利……っ」


 沸々ふつふつたぎる怒りから低い笑みが込み上げてくる。ふふふ……。


 「まぁ、いい。どーせ、ここで愚痴垂らしてもどーにもならん。今は魔導具ってやつの動作確認と、これからの行動をどうするかに限――くそったれッ! あんのインチキトラブルメーカーめ!! なーにが『間違えちったー♪』だ!!! くそが!!!!」


 手違いでひとりの人生めちゃくちゃにすんなよ!


 クラスメイトは……しらねー!


 だって、この目で見てねーし……。


 「はぁ……溜息とまらん」


 やっぱ怒り収まんなかったわ。くそったれ。


 ちなみに今の発作で足を叩きつけると地面にヒビが入ったが、すぐに跡形もなく元に戻った。は?


 先程の骸骨が放った一撃の跡も同様に、だ。


 わー、不思議ー! で済まない現象だ。


 一般人学生である俺の脚力がおかしいことも、地面の異常な修正力も。


 骸骨戦での超常的な腕力もだ。総じて明らかにおかしい。


 まずは最優先で現状を整理しよう。


 「あぁ……その方がいいな、よし。この自称神様の道具は後回しだ!」


 道具一式に指をさしながら後回しと連呼する。後回し!


 俺は物色していた手を止めて、周りを警戒しながら思案する。


 状況証拠と自称神様の発言から、恐らくここは俺の居た世界とは異なる世界だろう。どういうこっちゃ。


 でもって、俺の身体に起こる異常現象については自称神様曰く、ヘレシーとかいう能力らしい。


 「自称神様はなんとなーくわかるとかほざいていたが……ん?」


 知らないのに、知っている。


 理解してないのに、理解している。


 まるで、元からそこにったみたいに力が漲る。


 なんとも不思議な感覚だ。気色悪きしょいまである。


 頭に浮かんだ文字は、《身体昇華エクストラ・ステージ》。


 紛れもない厨二病だ。恥ずかしいまである。


 その詳細は、なんでも大気中の魔素ってやつを身体が自動で取り込み、己を昇華させるらしい。


 昇華=強化みたいなものだろう。知らんけど。


 だとすれば骸骨戦の力に納得がいく。納得したくないが。


 更に魔物ってやつ――骸骨がそうだったのだろう――を倒すと、魔素となって俺の身体に取り込まれるらしい。


 要するに、骸骨みたいな魔物を倒せば倒すほど強くなると考えられる。


 「全体的にチートだろ……いや、使えるもんは使わせてもらおうか。これでいつかは自称神様を殴れるかもしれねーし」


 イメージトレーニングに勤しみ、シャドーボクシングで自称神様をフルボッコにする。オラァ!


 「I am a winner勝者はワイや


 尚も殴りながら思考する。俺、結構強くね?


 この場所についてだが、自称神様は神の宮殿ダンジョンと言っていた。


 神の神殿と言えば、創作物でも多々登場していることから大凡おおよその推察はつく。合っているかは別だが。


 「バケモンが跋扈ばっこして階層は何層にも分かれているイメージだが、骸骨一体しか居ねーし、先が見えねーほど道が続いてるんだが? 広すぎん?? なんもねーし……」


 神の神殿と言えば、最終層に行けば攻略なんてのも見たことがある。


 攻略……いい響きだ、うん。


 「よし、攻略を目指すか? 自称神様は『暫く待て』と言ったが……信用できっかよ! 攻略を目指すのも悪くねーが……」


 そうして唸っていると、遠方から激しい地響きと、水飛沫が上がっているのを視認する。視界がグラつく。


 「んだ、あれ? 黒い……壁??」


 最初は黒点程度だったが、此方こちらへ近づくにつれて正体に気づく。


 「へへっ……ふははっ、そうだよなぁ! あの骸骨が1体だけってのもはぐれてたのかな? いやー、おかしいと思ってたんだよねー! くそったれ!!」


 現実逃避の一環で虚勢を貼る。怒涛の展開がすぎる。


 休む暇がないんだが……?


 自称神様の置き土産である短剣を手に取り、遂に動作の確認をする。刃物こわ。


 「つーか、ナイフはマジで普通のナイフじゃねーか! なんか特殊能力とか付けてくれよ!! 炎をまとうとかさ!!! かっこいいじゃん!!!! いや、不壊ふえも十分特殊か(賢〇タイム)」


 他の道具は手提てさげの皮袋へ乱雑に仕舞い込み、ジーンズの腰のベルトにくくり付ける。重……くないんかい。


 ついでに皮袋に入っていた食材からランダムで引き抜き、至って普通のバゲットを頬張った。ぱっさぱさ。なぜバゲット。


 「もぐもぐ……不壊ってことは、乱暴に扱ってもいいってことだよなー? これは、そういう問題じゃないけどよ。うっ、喉乾いた……」


 さぁて、迫り来る骸骨軍団には、どう対抗すればいいでしょーか?


 チク、タク、チク、タク。


 「正解はー?」


 回れー、右!


 位置にについてー!!


 よーい!!!


 「こちとら戦いのトーシロだぜ? 逃げるが勝ちじゃボケェ!」


 どんっ!!!!

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