第12話 さよなら
「ネネ、そういえばカイルはどうしたの?!」
「あれ、アユリに言ってなかったっけ」
さすがのネネでもいろんなことが重なりすぎて忘れていたようだ。
「カイルはイルカとシャチを海に放ってから自分も逃げるって言ってたの。
大丈夫、きっともう船から脱出できてるよ〜。カイルは扱いが上手いし好かれてるから〜」
ネネは海の冷たさに震えながらものほほーんとしている。
ネネが言うなら大丈夫か、と思うことにした。それにあいつはなかなか死ななさそうだし、といつも余裕しゃくしゃくで笑っているカイルの顔を思い浮かべながら納得した。
そしてカイルは無事だった。
浮かびながら3人で船を眺めているとカイルが物凄いスピードで向かってきたのだ。
驚くことにカイルは自分とパートナーだったシャチに乗せてもらって逃げてきたようで寒さで凍える3人とは反対に興奮で頬を赤く染めていた。
⚓︎
船はどんどん沈んでいく。
ずっと船から出たい、陸に行きたいとは望んでいたがまさかこんな風な形で出ることになるなんて予想もできなかった。
生まれてから物心ついてからずっとみんなで過ごしていた船の家。嫌なことも楽しいこともたくさんあった。めっちゃ怒られたりもしたけれど。
いざお別れとなると寂しくてアユリは泣いてしまった。それにつられてネネも涙を流す。
カイルとユピトは黙って沈没する船を見ていた。
「さようなら」
感謝の気持ちとお別れの気持ちで手を合わせた。
⚓︎
船は沈んだ。
夜空がいつもより輝いて映る。
きっとこれから陸での生活が始まるだろう。いったいどんな場所なのだろうか。着いたらどんなことをしようか。
未来を想像する瞳はきらきらと星を反射させてはじけた。
星になったらはじける 朱雀竜司 @milkcarnival
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