第3話 パーティー①
専業掃除人になってから約3ヶ月。相変わらず繰り返しの毎日。
黙々と仕事をこなしているとカイルがこんな話を持ってきた。
最近、船の中で変な風邪が流行っている。レストランでは10人ほどが風邪でダウンしたらしい。
「人数が足りない。アユリ、お前復帰しないか?」
その言葉によってアユリは久しぶりにレストランで働くことになった。といっても幸いダウンした人たちは皿洗いの人が多いらしく、ダンスやホールではなく皿洗いということなので、胸をなでおろした(多くの人が)
皿洗いは気をつけてさえいれば掃除とあまり変わらないので簡単だ。人数がアユリともう1人しかいないので忙しく時間が川のようなスピードで流れていった。
2日目にもう1人の人が熱を出してダウンしてしまい、3日目からはワンオペとなった。お皿をときどき割りながらもアユリは頑張っていた。4日目の朝、モーニングショーが終わったタイミングでネネが皿洗いを手伝いに来た。
「いいの?ネネの出番もうすぐじゃない?」
「今日はモーニングだったからね〜。皿洗いが大変だってさっき聞いたの」
「それで来てくれたんだ。めっちゃ助かる〜」
「それにアユリ1人じゃ絶対お皿割られるから見張りがいるって」
「みんなよく分かってるな」っとアユリは笑った。そして気になっていたことを口にした。
「ねっ今日はなんかあるのかな。調理師たちがすごいピリピリしてるんだけど」
「あっ!今日はパーティーがあるみたいだよ」
そういえばというような感じのネネ。だからいつも以上にせかせかとしているのか、と納得した。しかしなぜこう忙しい時に限って特別なお客さんが来たり、そういうことが重なるのだろうか。
それを言うとネネは笑った。
「そういうもんだよ〜。でもアユリ、今日はもっと特別だよ」
「え?」
「船員たちも参加できる立食パーティーなんだって!」
パーティーなんて夢の中の世界のお話かと思っていた。パーティーと心の中で呟いてみる。初めての響きに胸が踊った。
ネネが聞いた話ではパーティーの主催者はこの船を支援してくれているどこかのお金持ちらしい。日が暮れる時間から始まるので、それまでにアユリとネネは皿洗いを、調理師たちは料理を完成させなければならない。
パーティーになんとしても参加したい!っと強い気持ちがアユリを突き動かし、光のような速さで皿を洗いまくった(奇跡的にお皿は1枚も割れなかった。)
⚓︎
パーティーなんて生まれて初めてで、ドレスを着るのも生まれて初めてだ。
ドレスはネネからのおさがりをもらった。3年くらい前にランドデーで購入したらしい。少し丈が短い気がしたけれど水色でふわふわしていて気に入った。首がさみしい感じがしたので、カイルがくれたネックレスをつけてみた。なんだか癪だけど銀色がちょうど水色と調和して先ほどよりも華やな感じだ。
ネネは白いドレスを纏って、褐色の肌と髪の毛はツヤツヤと光っていた。化粧もバッチリでどこかのお姫様のようだった。
アユリも化粧をして鏡の前に立ってみたら、2人はおとぎ話の登場人物みたいだった。
まるで違う世界に迷い込んだような気持ちでホールに向かっていると、後ろからにぎやかな声がした。
カイルとその仲間たちだ。みんなタキシードで大人っぽく見える。だけど中身はそのまんまだ。
「お尻見えてんぞ」
「うるさいよヘンタイ。あんたこそ股間破けてるけど」
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