来ないからって言われても

「生存確認領域じゃないじゃん!!」


ユキノが言う。

まあ確かに……。スマイラー、とかいう化け物がいる以上生きていけるわけないだろう。


「いやいや、スマイラーは光源が苦手。つまり明るいところに入れば大丈夫。」

「あー……そういうこ……ってまてよ?

スマイラー?」

「なんだ。気づいてたのか。

そう。ここ、【The Habitable Zoneハビタブルゾーン】はスマイラーだけじゃない。

スキンスティーラー、っていうもう一種類の化け物がいる。」

「おいおい……なんだよそのヤバそうな名前のやつ……」


そう話していると突然、部屋の外が真っ暗になった。

まるで停電でも起こしたかのように。


「えっなに!?」


外を見たユキノが言う。

何かが居るらしい。

慌てて窓から外...と言っても駐車場見たいなところだが、そこを見る。


そこには嫌な笑顔があった。

...比喩ではなく、笑顔だ。

色ズレを起こしたような白い目と尋常ではない程口角が上がっている口。

不気味なそのパーツだけが浮いている。


「あれがスマイラー。明るいところには来ないから安心して。」

「いや来ないからって言われても......」

「...要は停電してない時に外に出て出口を探せってこと?」


ユキノが言う。それを聞いたロストが頷く。


...そして外の駐車場の電気が着く。


「ッッ!今だな!!?」


そう言うと俺とユキノ、ロストは3人で扉を開け、駐車場を走る。


まっすぐ、いつ電気が消えるか分からない恐怖に怯えながらも走る。


ジジジジ...


嫌な音が鳴る。予想通り、その音が鳴った数秒後...駐車場が暗闇に包まれた。


「なっ...ど、どうすれば...」

!使えるかも...」


ユキノが何かを取り出して言う。

最も、暗闇であるこの状況では何か分からないが。


...すぐに答えが分かる。

ユキノの手元から光が発せられ、数メートル先まで照らされる。

懐中電灯だ。


「おお...そんなのあるのか」

「さっきの部屋でね...ってロストは!?」

「え?」


そう言われて周囲を確認するが、懐中電灯の届く範囲には何も...誰もいない。

が、懐中電灯に人影が見えた。


「Hello。」

「この声は!」

「ロスト!!どこ行ってたの?」

「Hello。」

「え?」

「Hello。Hello。Hello。Hello。Hello。」

「まてよ...おい...ユキノ!!こっちに走れ!!!」


そう言うとロスト...の姿だったナニカが正体を表し、俺たちの方に向かって追いかけてくる。

見た目は人型だったが、頭部から腹部まで裂けた口のようなものがあった。

逆方向にユキノと共に逃げる。


懐中電灯の光だけを頼りに。


「くっっそ!!!ロストじゃねえじゃねえか!」

「とりあえず走らないとッ!!!」

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