第二話 世界危機!
季節が無くなって五日。私はまだ家でずっと過ごしている。季節が無くなって『地球緊急事態宣言』が発表され、入学式も無くなった。
家で出来る限り過ごしてください、と言われている。
勉強が無くなるのは良いけど、つまらない!何もすることが無いよ~っ。私はトランポリンをぴょんぴょん飛んだ。
家でのんびりするのも良いけど……、友達と遊びたい―――!
あっ、お母さんから洗濯物を洗うように言われてたんだった。よいしょっと。
――ゴウンゴウンッゴゴッ
何か変な音がしたけど……きっと大丈夫!
すると、インターホンから音がした。
――ピンポ―ンッ。
「ごめん夏希っ出てくれない?今、お料理してるの!」
――ピンポン、ピンポン、ピンポ―ンッ。
「は、は―――い」
私は大声で答えてすぐに家を出た。
こんなにピンポンをするのはきっと……。
「やっぱり!ミリ!」
茶色のストレート髪を真っすぐ下ろした友達、
ミリは小学生からの友達で、とっても賢い優等生なんだ。
でもファンタジー小説が大好きで、たまに趣味でで小説を書いている。
ミリは笑いながら、サッと髪をかき上げる。
「緊急事態宣言で食料不足でしょ。だから、家で取れた野菜持って来た」
「わ――、ありがとう!ミリの家は農家だもんね~」
ミリは大きな袋を私に渡す。おっ、重い!すごいっ。
「ミリの家は農家でしょ。大変じゃない?」
「うん、光が無くなって、野菜がいっぱい枯れた。季節が無くなってから植物も動物もいなくなったから、食べられはしないけど」
ミリはため息交じりの声で喋る。
野菜がいっぱい枯れた……前、季節が無くなった最初の日にも木が枯れてたなぁ。
「……このままじゃ、世界が自然不足になっちゃうの!?」
「まあ、そうだね」
「えっ、それは緊急事態じゃなくて世界危機だよっ!」
ミリは何も気にしていないと言う表情で、私の言葉に返事をした。
私の住んでいる所は人は多くも少なくも無い、自然いっぱいの場所。それがだんだん無くなって行く……想像しただけでも悲しくなる。私のお父さんとの思い出の木だって枯れちゃうんじゃないかな……。
「そろそろ帰る」
「あっ、送るよ!」
「ふ――ん、じゃあ行こうか。舞さんに言わなくて大丈夫?」
ミリの言葉にうなずき、私は歩き出す。
ミリの家は歩いて三分もかからないぐらい近くて、お母さんに言わなくてもすぐに帰って来られる。それにお父さんとの思い出の木がどうなっているか見たいな。
ミリは空を見上げてため息をついた。
空はやっぱり真っ暗。寒く無くて良かったけど、やっぱり晴れも見たい。季節が消えた理由をミリは考えながら、ポツリと呟いた。
「季節が無くなる……ということは季節を決めることが出来る?」
「季節を決めることが出来る?」
私はミリの言葉をオウムみたいに繰り返して尋ねる。難しいこと私には分からない!うん!
「いや、季節が無くなるなら、季節を取り付けることも出来るなと思った。季節は四つあるけど段々変化して行くから季節を決められるのかな、なんて」
「ふう~ん、ファンタジーは面白いね。最近書いた小説また読ませて」
「……うんっ」
ミリはフフッと笑って、前に向き直る。
歩いていると、私の思い出の公園があった。お父さんといーっぱい遊んだ公園!ミリとも小学生の頃遊んで、リスや野良猫を追いかけまわして、ドロドロになったような……。
「ああっ!」
そこに立っている大きな木も枯れていた。お父さんとよく遊んだ思い出の木なのに!
ミシン暗記だよ、そんな~! ミシンを暗記、ってどういう意味だろう?ミシンの種類を覚えるのかなぁ。ってそんなことより!どうしようっ、木が枯れちゃったよ!
ミリも信じられないと言う表情で固まる。
「季節が無くなっただけでも、思い出の品は無くなる……」
ミリの言葉が私の心に重たく響いた。
季節が無くなった、その一言でたくさんのものは失われた。季節が無くなった、その理由を早く知って、この思い出の木を復活させたい。
ミリと少しの間喋った後、私は家に戻った。
早く季節が元に戻って、自然も元に戻ってほしい。私はお母さんが待ってるかも!と思い、急いで家に走る。
私はハァハァと息を吐き、家の玄関を開けようとした。
すると。
「あっ、あなたは火花夏希さんですワン?」
と言う声が後ろから聞こえて来た。
えっ、何だろう?語尾が『ワン』と聞こえたのは気のせい、だよね?
私が振り返ると、背中に羽が生えた犬が私の目の前を飛んでいる。
私の手に乗るサイズ、しかも浮いてる!?私は夢を見ているのかな!?
「火花夏希さんですワン!?」
えっ、この子誰?季節が無くなっただけでも不思議なのに、犬が浮いていて、しかも喋っているなんてどういうこと――!?誰か、ヘルプミ―!
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