第2話 麗香はどこに
それでも不思議な事があるものだ。あれは確か……麗香が17歳の時だ。私と麗香は当然進む進路も違うので高校は別々の高校に進んだ。
そんな17歳の夏休み明けから、ぷっつり麗香を見掛けなくなった。
そう言う事だったのか、やはり高校生の2学期から全く顔を出さなくなったと親しい友人から聞いた。それなので心配したクラスメートが、先生に聞いた所「海外に留学する」と言っていたというのだ。
当然祖父母宅にも学校から連絡が行ったが、田所社長はキッパリ言った。
「昔は中卒で集団就職が当たり前の時代でした。例え高校中退でも高卒でも麗香が決めた事です。そして、麗香は以前から申しておりました。海外の高校に留学したいと……私どもはそれを見守る事しか出来ません」
(なるほど……そう言う事だったのか?だが、音楽に特化した高校のピアノ科に進んだと聞いたが、その後の消息が全く不明なのだが?)
今現在海外のどこで何をしているのか、全く伝わって来ない。ひょっとしたら既に亡くなっているという事も考えられる。
あれだけ優秀で一際輝く麗香は友人も当然多かった。もし…何か有ったら真っ先に友達に連絡が行く筈だ。そんな人気者の麗香が消息不明という事は納得がいかない。
更に不思議な事に日本有数の社長のお孫さんの身で有りながら、その後田所家に戻った様子はない。
本当にこの世に存在しているのか?
そしてそんな中一つ分かった事がある。どうも田所社長の一人娘光子という女性がいるのだが、麗香の父とは血が繋がっていない。
一体どういう事?
現在一人娘光子の旦那様が「西沖電気」の社長に就いている。
そして又々気になる事があるのだが、麗香の周りの人々が次々に不幸に見舞われているのだ。
最初は両親の不慮の事故、更には麗香が田所家に引き取られて半年後に祖母が心疾患で突然死で亡くなっている。
いや祖母ではなく……?
だが…これはただの序章にしか過ぎなかった。更に事件が……。
麗香にはどんな秘密があるというのか?
☆★
私はあの夏の日麗香と初めて会った日の事を、今でも鮮明に思い出す事がある。既に60年近くの時を経ているというのに……。
私は小学3年の夏休みに大阪の祖父母の家に両親と出掛けた。そして、母の兄が豊中市に住んでいるので祖父母も連れ立って出掛けたのだが、その時に麗香に会った気がして麗香に聞いた事が有った。
「麗香ちゃん始業式前の夏休みに君を見たよ!豊中市で」
するといつもの凛とした自信溢れる麗香の姿は消え失せ、今まで一度もお目にかかった事のない隠し通す事の出来ない動揺、おどおどした表情に、自分のうかつさを改めて反省した事を覚えている。人の内面に踏み込み過ぎる事だけは止めよう。そう思ったものだ。
あれは確か…おじさんが美味しい中華料理を出すお店が有るからと言って訪れた時の事だ。その一角には多国籍料理店が軒を連ね、一歩裏手に回るとパブ、スナック、クラブ等が乱立しているそんな場所だった。
子供ながらに…何か?未知の大人の世界を垣間見た気がした。美しく着飾った女性たちが真っ赤な口紅💄💋✨を塗った金髪👱美女の看板の中に吸い込まれて行く様を見た時は、子供ながらに妙にドキドキ😍💓した事を覚えている。
ハリウッド黄金期の立役者、ブロンドの巻き毛、赤い唇、印象的なあのホクロ。死後60年近く経ってもなお、マリリン・モンローは強烈なインパクトを残しつつ色褪せない。
そう。怪しげな男を誘うような目と真っ赤な口紅の妖艶な女優の看板は、かの有名なマリリン.モンローだった。
と、その時だ。まだ年端もいかない女の子が、薄いピンクのレ―スの透け透けのナイトドレスに身を包みカメラを持ったギラギラ油ぎった男に連れられてある殺風景な一室に入って行った。
こんな夜の帳が下りる頃、まだ小さな子供がどうしたというのか?痛々しくて見ていられない。
だが、私は余りにも美しい少女だったので一瞬目に留めたのだが、その少女は余程見られたくなかったのか、直ぐ様顔をレ―スで隠した。
その少女こそ麗香にそっくりな女の子だったのだ。
★☆
戦争の遺産なのか、中国と韓国が戦時中に強制連行・強制労働させられた残留家族たちが豊中市には住んでいるのだろうか?更にはフィリピン人他多くの外国人が住んでいる街豊中市。
このような理由から、豊中市には「とよなか国際交流協会」があり、外国人市民の居場所づくりや地域住民との交流事業を実施するために1993年に設立された団体である。
その中には、フィリピンや中国、韓国など、外国にルーツをもつ。在日4世、5世もいれば、ニューカマー(1970〜80年代以降に渡日した外国人)の子どももいる。
また、フィリピンや他国と日本の二つのルーツをもつ。外国にルーツのある子どもたちの中には現在も戸籍や国籍のない子どもが一定数いるといわれるが、正確な数は把握されていないが、どこにもいない子供「無国籍児」が一定数いる。
国民健康保険にも加入できないために医者にかかることができず、発熱したときなどは市販薬で対応するしかない。
それでも…いくら麗香にそっくりな娘がそんな飲み屋街に居たからといって、日本有数の大企業のお孫さんと一緒には出来ないだろう?
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