“ちじぞう”、あるいは“ちげぞう”について

灯村秋夜(とうむら・しゅうや)

 

 悪夢といってよいものかどうか図りかねるが、夢の中で気になる単語を聞いたので、文字に起こして共有させていただく。2024/8/29、日付が変わってすぐのことである。




 日常系アニメのような絵柄の映像で男子二人の掛け合いがあった。内容は「あの女子にアタックしようと思う!」「無理だろアホ」といった、さして気にかかるところもないものだった。ギャグとして足蹴にされる男子が瞬時にミイラになったかと思うと、流れてくる水を浴びて河童になり、ネガティブさを表してか地面にうずもれて地蔵になる……という謎の描写を経て「ちじぞう(ちげぞう)になるなよ、今日本じゃ多いらしいけど! 手合わせてやらんぜ」というツッコミが入った。

 単語だけでは聞き取りづらく、よく分からなかったが、その後にわずかに聞こえた会話によると、どうやら「放置された地蔵」あるいは「誰ともゆかりのない地蔵」という意味を指すようである。


 あまり心地よくない寝覚めを押して「ちじぞう」に当たりそうな「血地蔵」「置地蔵」を検索してみたが、そのような意味を含む検索結果は出てこなかった。「置地蔵」は「置き地蔵」としてマスコット化され、縁起物雑貨となっている始末である。

 しかしながら、「地蔵」とだけ検索してみると、サジェストとして「手を合わせてはいけない」と出てきた。いったいどういうことなのだろうか、と記事を見ると、お地蔵さんには救済を求めて生者・死者問わずいろいろな者たちが集まるため、きちんと供養されていないお地蔵さんはやや力が弱まり、悪い霊を救いきれずそばに留めている可能性があるのだという。そして、手を合わせた人についていく可能性があるそうだ。これは、夢の内容に合致する。

 これはすでにホラー小説として読んだことがあり、正しい知識を知らないまでも、こういった内容があることは把握していた。ホラー小説では「地蔵というガワに得体の知れないものが入り込み、手を合わせてゆかりを持った人物を祟る、あるいは乗っ取る」というものであった。さすがに、そこまで恐ろしいものではないようである。私が読んだ作品では田舎のカルト的な信仰として扱われていたため、正確には地蔵尊ではない可能性もある。




 ところで、私はこれまでアニメ調の夢など見たことがなかった。夢の中でゲラゲラ笑いながらギャグアニメを観ているという描写も奇妙で、ミイラ→河童→地蔵という流れも非常に示唆的である。「ちじぞう」という単語も気になるが、その言葉をアニメ的映像まで使って伝えに来た二人はいったい何者だったのか。

 私の見る夢では、人に近い姿をしているものほど危険度が高い。単語だけを伝えに来たかれらに感謝して、もう少しばかり健康に気を遣い、この「ちじぞう」という言葉を周知することとする。

 定義として、「放置された地蔵」あるいは「誰ともゆかりのない地蔵」を“ちじぞう”と呼ぶ、そうである。夢で聞いたこの単語は、現実に危険とされる「力が弱まり、悪い霊を近くに留めている可能性があるお地蔵さん」に該当する。


 とくにオチはないが、危険とされるものの別名を夢で聞いた、という事実のみをここに記して、この文を終えることとする。

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