才能貧者の悪あがき
私には、才能がない。
本当にないのである。
よく、人には必ず才能があるただそれを発揮できていないだけなのだ。と偉そうに語る成功者がいるが。そんなやつが私を見たら言葉を失うことだろう。
この芸術の街で何1つも己の力で作品を完成させたことがないのである。
そもそも、絵を書こうとすれば手が震えだし、歌を歌えば喉がつまり、踊りを踊れば足がもつれてしまう。
もとを辿れば、幼少期自由帳の落書きを見られ、センスがないと揶揄された事が原因であろう。
しかし、昨今の世の中は凄まじい進化を遂げている。
AIというものが絵を描いてくれるのである。
これはとても便利でキーワード等を入れればAIが勝手に絵を書き上げてくれる。
しかし、最初は上手くいかずなんとも言えない抽象画を量産する、オンボロだった。
だが、何度も何度もAIに絵を描かせ学習させたところ、なんとここ最近はまともな絵が描けるようになったのである。
そして、ふと気づくとここ最近、AIに向き合いすぎたせいか、街へ出ていなかった。
ここらで、気分転換に街へ出てみるのも悪くないと思い、最低元の身支度を済ませ街へ出る。
すると、広場の入り口に"新しい銅像展示開始"と書かれた看板が立っていた。
なんだろうと思い、その広場へと歩みをすすめると、私は目を疑った。
なぜなら、最初の頃AIに描かせた抽象画がたくさん広場の至る所に飾られていたからである。
該当にくっついていたり、ベンチに立て掛けてあったり。
そこで思い出した、AIによって描かれた膨大な量の絵を匿名希望と名前を彫り街へ放っていた事を。
そして、歩みを進めて銅像の前に来ると、私はとんでもない事をしでかしたのではないかと思った。
”匿名希望"そう縦に積まれた銅像がそこにはあったのだ。
いつの間にか、私の知らないところで私のAIは、この街を象徴する、画家になってしまっていたのだ。
それからというもの、私は常にAIと向き合い、最初の頃のような抽象画を量産し匿名希望と彫りをいれ、街へ放つようになったのだ。
AIはまだ、自分で絵を書こうとはしない。
なので私がかけと命令を下している。
こんなことに、意味があるのかはわからないだが、これは私の最後の悪あがきなのである。
詰まるところ"才能貧者の悪あがき"なのである。
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