第三話 あの日が紡いだスクワッド

 一輝たちはベンチにぐでーっとしていた。なぜ、こんなことになったかと言うと、それは「分隊」の存在だ。


「ぜんっぜん…捕まえられそうにないです。」


咲夜がそういうと、俯いて頭を抱えていた一輝は答えた。


「それもそっか。動くのが早い人はさ、僕らが銃で楽しんでいる時に分隊を組むためにあちこち動いていたし、おまけに三年間共にする仲間なわけだから、みんな慎重なんだよな。瑛人の方は何か当ては…って、いや、辞めとこう。」


彼は瑛人に問いかけようとしたが、彼の姿を見てそれを問うことを辞めた。彼なりの配慮だろ

う。


「全然。なんなら前半でもう尽きてた。」

瑛人がそう言うと、彼らはどん底のような気分が一層深まった。


 そのような中、目の前に1人の少女が現れた。


「ねぇ、あなた達、分隊のお仲間探し?よかったら、入ってもいい?」


彼らはその言葉を聞き、その声の張本人は顔を向けた。そこにいたのは、黒髪でパッツンの少女であった。3人はその希望という光に照らされたかのように、元気よく「もちろん!」と了承した。


「でも、どうして?何も接点は…あぁ!君は!」


一輝は思い出したかのように大きな声を出し、それに2人はボリュームを落とすよう言いつつ誰なのか聞くと、一輝は答えた。


「この人はね、ここの戦闘試験の時にちょっと怪我をしてたんだよね。それで、僕がそれを治して…といっても、応急処置だけどね。良かった、受かってたんだね。」


覚えていたことに彼女は「…よかった、覚えてくれてた。」と安堵した表情を赤羽その後答えた。


「おかげさまで、あの時は助かったわ。…そういえば、名前を言っていなかったわね、あの時。私はアキ。七瀬 愛秋よ、みんなよろしく。」


そう言い終わると、彼女は恥ずかしそうに、照れくさそうに笑顔を顔に浮かべた。白い肌には赤みがかかっている。──そうして分隊に1人加わったことで、あと1人の加入メンバーを5人で探していた。気づけば夕方に差し迫り、次の1人で心身ともに関の山という頃だった。そうして、ショートヘアの少女を、定型分のように言い慣れた文章で誘った。そして、その少女は答える。


「え?分隊のお誘い?いいよー!僕も探してたし。僕は柳樹、柳樹結城。よろしく!…ってか、あなた達こないだのガンショップの子達じゃん。いやぁ、熱かったねぇあの試合は。実はね、あれって中継されてたんだよ?」


ボーイッシュな、褐色かかった肌の明るい少女はそう答える。どうやら、3人はフィールドを店内で中継されているらしかった。


「"バーン"とか、アニメの1番盛り上がるシーンみたいじゃん!なんて」


それを聞いて、一輝は恥ずかしくなって、焦った表情で「…よしてくれ。」と呟いた。


 ……かくして、分隊が結成された。そうして放課後。分隊結成の届出を出した後、その祝いとして、彼らはファミレスでパーティーをしていた。


「じゃあ、かんぱーい!」


結城の乾杯の合図の後、彼らは雑談やら、食事やらを精一杯楽しんだ。そのなかで自然に分隊名の話題になった。

聞けば、


・一輝はフルメタル;スクール

・瑛人はSoS(Squad of School)

・咲夜はRabbit分隊

・愛秋はthe Wave

・結城は咲夜と同じRabbit分隊


このようにほとんどの意見が割れ、また誰も譲らなかった。誰にも譲らんという目を皆していたところ、一輝が口を開いた。


「よーし、くじ作るぞ!恨みっこなし!」


そうして代表として一輝が全員の前で弾き、決まったのは、フルメタル;スクールであった。みな悔しそうにしていたが、文句は言わなかった。

かくして、フルメタル;スクールは結成された。


「そういえば、君たちどんな武器使ってるの?僕はUZIとグロッグ17なんだけど、だから、基本前線に出ようと思うんだよね。」


結城がそう言うと、続けて愛秋が言った。


「私はP90とワルサーP38。わたしも火力でゴリ押しか、誰かのサポートで行こうかなって思ってる。」

愛秋がそう言うと、一輝が言った。


「じゃあ、咲夜がスナイパーだから、その援護に回ってもらえると嬉しいな。それと、相手の武装にもよるけど、前衛にも回ってもらうこともあるかも。」


一輝のそれに対して、アキは「オーキードーキー!」と了承した。その後は一輝ら男子陣も武装の紹介をして、あとはピザであったり、ジュースであったりを楽しんだ。

 そうして翌朝、教師による合宿の説明があった。教師は言う。


「──近いうちに、一年次は合宿が行われます。そこでは、武装演習がみっちりと入れられており、また、そこでは分隊ごとの戦闘に加えて、様々な演習が行われます。そして、夜には親睦を深めるためのゲームだったりが行われます。そして、合宿が終わった頃に、本格的なクラス替えが行われる事になります。詳しいことは、資料を確認しておいて下さい。……合宿の説明は以上です。次は──」


一輝らそのパンフレットを見て、一目で興味を引いたものや、演習内容にマーカーの線を引いていた。


 ……そうして、昼休み。分隊の男子3人は、パンを頬張りながら雑談していた。そうして暫くして、合宿についての話題になった。咲夜は言う。


「──そういえば、今日先生が行ってた"合宿"、あれってどういうことなんでしょう?」


彼は答える。


「まぁ、武装面を怠らないようにの対策なんじゃないかな?事実、この都市内な学校は武装面の授業があるのが大多数だしさ。」


咲夜はそれを聞き、曇った表情で言う。


「でも、なんだか、うーん…僕、ちょっと不安です。」


それに対して瑛人は言う。


「まぁまぁ、僕らならいい成績を納められるし、何より…」


彼は笑顔を浮かべて続ける。


「この分隊は、絶対やっていけるって、自信あるしさ。」


 時間は少し進んで放課後、一輝たち男子3人は、ゲーセンへ向かうべく、大きな坂を下っていた。


「あーだる…あした演習じゃんか。てか、咲夜、よかったの?他の分隊の誘い断っちゃってさ。」


一輝がそう言うと、咲夜は思い出したかのように彼に聞いた。


「そういえば、なんで僕なんかを誘ってくれたんですか?…僕ってほら、口数少ないし、力もある訳でもないし。」


「何言ってんの…友達誘うなんて当たり前じゃないか。それにさ…」


一輝は照れたような表情を見せながら続ける。


「こんな美少女みたいな男子、誘わない方がおかしいんだから。ほら、見えてきたよ。競争だ!」


彼は一目散に走った。2人もそれに続く。咲夜は少し、照れた様な表情をしていた。

 そうして、3人がゲーセンに足を踏み入れると、瑛人は言う。


「僕、ちょっと肩慣らししてくるから、先行ってくる。」


彼はそう言うと、小走りで去っていった。そうして、置いて行かれた2人が彼の後を歩いていると、咲夜がクレーンゲームのぬいぐるみに興味を引いたのか、じっと見ていた。そんな咲夜を見て、一輝は言う。


「…取ってやろっか?」


それに咲夜はあたふたして答える。


「えっ…いや悪いですよ!」


一輝はその言葉を無視して、筐体に100円をいれ、クレーンを動かした。そうしてやや緊張の混ざった雰囲気の中、大きいぬいぐるみが穴にボトっと落ちた。彼はそれを取って渡した。すると咲夜はパァッとした表情でそのぬいぐるみにモフッと顔を埋めた。

 そんな風に数時間遊んだ後、外へ出た一輝は言う。

「いやぁ、遊んだ、遊んだ。今週は金欠だな。しっかし、瑛人はまだやってるよ。」


それに咲夜は微笑みを浮かべて言う。


「たしか、メダルの消費2時間がかかってたんでしたっけ。ほんと、ああいうの、得意なんですね、瑛人さんは。はははっ。」


2人がそんな会話していると、その後に沈黙が走った。2人の織りなす雰囲気をみれば、どう会話を始めようか一歩踏み出せないようだった。そんな中、一輝が口を開く。


「…自販機行く?ちょっと喉乾いてきちゃった。」


そして、いつのまにか2人はゲーセン近くの、自販機横のベンチに座っていた。初対面と言うこともあって、相変わらず雰囲気は辿々しいままだ。会話が始まったと思ったら、その直後には終わっている。まるで初恋のようだ。


「あのっ、突然言うのもあれなんですけど…この間、ガンショップで助けてくれて、あ、ありがとうございます!あの後からは、変に付き纏われたり、恨まれたりなんかは無くなってて、本当に、お二人に出会ってなかったら僕、楽しくやっていけたかどうか…」


沈黙を破るように咲夜がそう言うと、一輝はスッと立ち上がって言った。


「なにいってんの。あの時あいつらと戦ってなきゃ、ユウキにも出会えたか怪しいんだぜ?逆にこっちが感謝したいくらいだよ。それに、咲夜だって分隊に入ってくれたとなると、僕らとしては甲斐があったってもんだよ。ヒロインは、多ければ多いほどいいからね。……あっ、瑛人店出たよ。行こっか。」


咲夜は彼の言葉に、「それって…」と言っていたが、その場を去って瑛人へ向かう一輝を見て、微笑を浮かべ、追いかけていた。

 3人は、バスの中で揺られていた。辺りをみれ

ば、もう夜になっている。


「いやぁ、やっぱ瑛人えぐいよ。レースゲで僕に勝った人あんまり居ないよ。」


「そっちも、久しぶりに熱い勝負ができた。」


彼らはゲームの感想を語り合っていたが、咲夜はそれに少し入るのみで、少々しこりが残ったようだった。しばらくすると目的地に着いたらしく、彼らは自宅へと足を向けた。


「じゃあ、僕はここでお別れですね。…あの…ありがとうございます!」


彼はそういいそそくさと立ち去ったが、瑛人が「ねぇ」と引き留めた。

「三年間、よろしくね。」

瑛人がそう言うと、一輝は言う。


「また遊べる日があったら…3人でまた行こうな。」


彼らのそれを聞いた咲夜は、笑顔で「はい!」と答えた。

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