第三章 檻
第24話 答え合わせ
「眉唾じゃ。ムーンの実在なぞ、確認されておらん」
ユリウスの星間車は、アナの案内によって出発ゲートを変更した。
そこは床が自動で動いており、運転をしなくとも星間車が目的地へ移動している。
「だけど、
「……そうじゃな。これも、市民が知り得てはならんことじゃが」
「そうだったんだ! わー!」
巨大な星鉄の球体がある。内側は空洞になっている。
その中を、
その事実を知ったエリーチェが、興奮した様子で鼻息を荒げている。
「どうやってそんなことまで辿り着いた。貴様、貴族ですらないのじゃろう」
「予測と観測、としか答えられないな。後は違和感さ。お伽噺の世界観が余りにも
本物の王族であるアナによる『答え合わせ』に、非常に満足気なユリウス。
「じゃが、これを学会で発表すると『異端』『危険思想』とされるじゃろうな。貴様が貴族になる道は絶たれる」
「……ああ。だろうな。だから代案として、再生利用を研究してるんだ」
「それはもう辞めよ。結局ルピルの星鉄加工能力頼りじゃろう? 王族の特殊体質を公表することに難色を示す
「……む。確かに。どうするアルテ。俺の研究はここで終わりだ」
「早とちりです教授。アナ姫様の話には続きがるのでは?」
すぐに眉尻を下げたユリウスに、アナは得意気になった。
「タイシャクテン家で貴様を抱えよう。ならばどこの区画にも入りたい放題じゃ」
「良いの……ですか?」
「妾の今の優先事項は、ルピルの保護じゃ。どうせ貴様らも付いてくるじゃろう。それだけの話じゃ。ルピルが『鍵』である以上、革命軍に渡す訳にはいかぬ。このままオオアマナへ連れ帰る」
「ここから
アルテが心配する。オオアマナとは
「ゾディア・ロードを使う。王族の特権じゃ。
「ええー! 王族って凄い!」
エリーチェが声を挙げる。彼女にとってはこの時間は大量の知識を与えられる至福の時間だろう。
「
「鋭いの。そうじゃ。
ガコン。
彼らの乗る星間車が揺れた。
窓の外を見れば、白く光る壁や床に囲まれた、円形の広い空間に着いていた。その中心。巨大な昇降機のような装置に、星間車が固定されていた。
「窓を開けるなよ。
「スフィア中心部に、
「でも凄い! ねえキルト!」
「分かったから落ち着けよ」
興奮しっぱなしのエリーチェをキルトが宥める。
「ルピルが居ないと『崩壊』ができないなら、匿えればそれで良いんじゃないのか? そうまでして
「妾の予想が正しければ、王族の中に革命軍と通じている輩がおる」
「!」
ここからが、ルピルにとっての本題だった。アナは彼女と目を合わせる。ルピルはよく分かっておらず首を傾げたが。
「
ルピルはやはり捨てられたのだ。それも、革命軍の道具として使われる為に。
世界を崩壊させる為に。
「…………僕」
「ルピル」
アルテが彼女へ伸ばした手を無意識に押しのけ、エリーチェが彼女を抱き締めた。
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