第21話 崩壊の鍵
「『
「じゃあ、さっき言ってた『金烏の民』は?」
「『
「僕も
「待て待て。次は妾の質問じゃ。お主、どこで生まれた?」
「知らない。僕は労働孤児だったんだよ。工場でエンジニアしてたんだ」
「労働孤児? 王族がか? ありえぬ」
「そんなこと言われても……。捨てられたのかも」
「それこそありえぬ。鉄ウサギは希少種じゃ。どのような政治的思惑があったとしても。こんな辺境のスフィア外縁部へ捨てるなど」
「じゃあ、なに。僕は王族じゃないってこと?」
「待て。それも無い。お主が玉兎でないなら今頃、先程の
「えっ」
アナは、腕を組んで考える。首を傾けて、可能性を探る。
「…………妾は今回、革命軍に興味が湧いてここまで来た」
「そうなんだ。危ないよ」
「じゃが先程も見たように、革命軍は既にこのスフィアに王族が居ると知っておった」
「…………それって、アナじゃなくて僕のことだよね。多分、クーロン達が言ったんだよ。白髪赤目の子が居るって」
「労働孤児の仲間か? それにしてもおかしいぞ。革命軍ごときが、
「あー……。普通は知られてないんだもんね」
「それが、『鍵』だと……? そもそも何故、
「うーん……?」
ルピルも同じく首を傾げる。だがそれは、アナが何を言っているのかが分かっていないだけである。
そんなルピルを、その赤い瞳に映すアナ。
「………………知っていたとしたら?」
「えっ?」
「ルピル。その工場での仕事、お主にとっては簡単ではなかったか?」
「え。えっと……。そう、かな。皆が専門の機器や道具を使わないと出来ないような星鉄加工も、僕なら手作業でできたりしたよ」
「……やはり『鉄ウサギ』か。その能力に気付いたのはいつ頃じゃ」
「そうだね。2年くらい前かな」
「………………」
アナは睨み付けるようにルピルを観察する。
「…………革命軍が蜂起したのは、ラムダ-4だけではない」
「あ、そうなの?」
「他に7つのスフィアで、ほぼ同時に起きた。そのスフィアは、いずれもラムダ-4と同じく、
「ふうん」
「………………『鍵』、か。ルピル、今何歳じゃ」
「えっと。13歳になったばかりだよ」
「いつじゃ」
「革命のあった日」
「………………!!」
アナが、顔を引き攣らせた。
「アナ?」
そして、ワンピースから通信機を勢いよく取り出して、叫んだ。
「ワタオ!! どこで何をしているワタオ!」
『ヒッ! お嬢様!? ようやく繋がった……! お嬢様、今どこに――!』
「うるさい無能! 他に会話を聴かれるな! 良いか!?」
『ヒィッ! はい! 大丈夫です!』
通信機から、男性の声が聴こえてきた。アナの知り合いだろうか。ルピルは黙って通話を聴く。
「街外れの公園じゃ! 繁華街と商業区画の間から見て南西! はよ来い! 一刻を争うぞ!」
『かっ! かしこまりました!』
「それと革命軍の言う『鍵』は妾が確保しておる! 至急、ゾディア・ロードの手配じゃ! こやつをオオアマナへ直で連れ帰る! 革命軍の手に渡らせてはならぬ!
『ヒィッ!』
ブツリ。勢いのまま捲し立て、通信を切った。ふうふうと息が上がっているアナは、続いてルピルの両肩を掴んだ。
「どうしたの?」
「聞いたじゃろ。お主が革命軍の手に渡った瞬間に、
「どういうこと?」
「…………っ! この場で説明は――」
明らかに焦っている様子のアナ。何のことだか分からないルピルとの温度差がある。
彼女は冷静にアナの肩越しに、見知った人物の影を見付けた。
「各スフィアの中心部には、高純度の星鉄で出来た
「!」
男声。アナは驚いて振り返る。
ルピルはほっと胸を撫で下ろした。
「何じゃ貴様は……!」
「ユリウスさん」
「!?」
茶髪パーマの、白衣の男。ユリウスが丁度、公園の入口にやってきていた。
「ウサギの『星鉄加工能力』によって、スフィアコアの活動を停止させる。するとスフィアは崩壊を始める。……中途半端な場所だと駄目なんだろう。端の。角のスフィアからやらないと、崩壊した大量の巨大星鉄が
「貴様……!? ユリウスだと? 貴様はまさかっ! ユリウス・フルフィウスか!」
ふう、と。ユリウスも深く息を吐いた。ルピルが無事だったのだ。疲れた笑みが見える。
「俺を知ってくださっているとは光栄だね。お姫様。……ともかく、見つかる前に移動しよう。俺の星間車なら安全だ。ここからも近い」
「…………おいルピル」
「うん。大丈夫だよ。ユリウスさんは変人だけど信頼できる」
「………………ワタオ。集合場所の変更だ」
『ヒィッ!?』
ルピルがユリウスへ駆け寄るのを見て。アナも、警戒を解いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます