04/浮気×ハーレム?
第54話 シユウ、一緒に住みます 【♡有】
「ということですので、これから一緒に生活させて頂きますシユウです! 先輩方、よろしくお願い致します」
「反対です! 紘さんと一つ屋根の下だなんて、私が許しません! そもそもこのシェアハウスは4人が定員です。部屋がありません、一緒に住めません!」
勢いよく否定に入ったのは杏樹さんだった。
あんな饒舌にハキハキと話す彼女は初めてみる。出会った当初の正気のない表情を思い出すと喜ばしいことなのだけれども……。
「ボクはゲストルームに寝るからいいよ? それとも杏樹ちゃん、一緒に寝る? 女の子同士だし問題ないよ?」
「ダメです! やっと絋さんと恋人同士になれたのに、何でこんな仕打ちなんですか! 絋さんも何か言って下さい!」
「いやー、ほんの少しの我慢で落ち着くなら……。そうだ、杏樹さん俺の部屋に来る?」
俺の提案に「え……♡」と目をハートマークにして悦んだ。
「いや、ダメだろう! 何考えてるんですか、絋さん! そもそもシユウは何歳なんですか? こんな淫乱で悪影響のあるシェアハウスに済ませるわけにはいかないじゃないですか!」
確かに……!
杏樹さんも学生なのだが……というツッコミは置いといて。いくらマネージャーがOKを出したからと言って、罷り通らないこともあるのだ。
「え、ボクの歳? 二十歳だからお酒を飲んでもいい歳だよ」
「え………?」
まさかの女性陣最年長?
胸の大きさも色気も威厳も、全てにおいて最小なのに?
「まぁ、実際仕事もたくさんあるし、一週間くらいかな? 一先ずボクの魅力を紘さんに知ってもらいたいんだ。それでもダメなら諦めるから、ね?」
こうして改めてシユウがメンバーとして加入されたのであった。
———……★
「納得できないです。何で私と紘さんが恋人同士なのに」
「申し訳ない……俺も雇用先を人質にされたら強く拒めなくて」
一先ず一時的に帰っていったシユウを見送った後、俺は杏樹さんの部屋で気持ちを宥めていた。
旅行の最中まではあんなに甘い雰囲気だったのに、その空気は微塵もない。
肉体関係を持った後にそっけなくなる男の話は聞いたことがあるが俺達の場合は逆で、杏樹さんが冷め始めているのだろうか?
『勿体ぶっていたくせに、セックスってこの程度だったんですね』
『随分とお粗末な粗チンでございました』
(嫌だァァァァ——ッ! そんな杏樹さん想像したくない!)
「ど、どうしたんですか、紘さん!」
頭を鷲掴みして蹲った俺を心配して、彼女が声を掛けてくれた。そうだよな、こんな天使が粗チンなんて言うわけがない。
「……今回のデートで、せっかく紘さんと恋人らしくなれたのに」
寄り添うようにソファーに腰掛けてきた杏樹さん。そんな彼女の肩を抱き寄せて、ギュッと抱き締めた。
「大丈夫だよ。シユウが何をしてきても、俺は杏樹さんだけを愛してるから」
「信じます……。それと、添い寝の約束は未来永劫守ってもらいますからね?」
——え、未来永劫?
俺が「マジで?」って顔で首を傾げていると、軽く首を傾げながら上目遣いで見てきた。
「……絋さんは私と別れるつもりで付き合ったんですか? 結婚前提でお付き合いしてるんですから、死が二人を分つまでなんじゃないんですか?」
確かにそうだが、こんな年下美少女に永久的になんて言われると、ドキドキしてしまう。
俺のことを縛るつもりで言っているのかもしれないが、それは自分の立場も縛っているということに気づいているのだろうか?
「もちろん分かっていますよ。私と絋さんは一心同体。大好き、好き……」
好意の言葉を発したと同時に甘ったるい雰囲気に切り替わった。
猫のようにしなる背筋。すり寄せてくる胸元、跨りうねる艶美な腰遣い。そして可愛らしい唇が俺の唇を甘噛みした。
「ん……んン……」
一度知ってしまった快感を忘れられず、求め合うように舌を絡ませて、俺達はベッドで戯れ合った。
恋人同士になったのだから、責任さえ持てればこういう行為はしても問題はないのだが、自分達の状況は特殊な環境である。
欲望の赴くままにシてしまえば、それこそケモノみたいに腰を振り続けることになるだろう。
「——絋さん、その……エッチなことなんですが」
しなければならないと思っていた話題に、思わず顔が強張った。欲に駆られてするのは、流石に良くないだろう。かと言って、どう伝えれば穏便に済むのか想像もできなかった。
「実は千華さんに相談したら、二人もシェアハウスでは遠慮していたみたいで。週二くらいで調整し合わないかって言われたんですが、どうですか?」
「え、週二?」
「お、多かったですか? 私、そういうことよく分からなくて……! 皆、どうしているんですか?」
多分少ないけど、それよりも崇達が気を遣っていた事実に驚いた。アイツら、し放題だと思っていたのに。思い込みで決めてしまって申し訳ない。
「今度からシユウさんも来るし、回りの人にも配慮しないといけないですもんね。もうリビングでイチャイチャしたりするもの控えます」
それが常識なのだけれど、杏樹さんから言われると寂しいものがある。あの真っ直ぐな愛情表現が好きだったのに、残念極まりない。
「やっぱりシユウの入居を断るべきか……。せっかくの杏樹さんとのイチャイチャタイムを」
「わ、私も寂しいけど我慢しますから! ううん、実はこの前の旅行で絋さんと結ばれて満足したっていうか。前みたいな不安がなくいなったから、こうしてギュッとしてるだけでも幸せなんです」
「そっか……」
俺は全然満足じゃないけど。今だってシたくてシたくて堪らないけど、杏樹さんがそういうなら我慢するしかないだろう。
そして今日は——?
「今日は千華さん達の日なので、これから外にデートに行きませんか?」
「…………………やだ」
何でこんな寸止め状況で、しかも崇達の為に外に出ないといけないんだ!
こんなことならシェアハウスなんて始めなければよかった。杏樹さんと二人暮らしのままでいれば、こんな気遣いしなくて済んだのに!
イライラと怒りをぶつけている俺を見て、杏樹さんがクスクスと笑い出した。
「だって、まるで子供みたいに駄々を捏ねているからおかしくて。シェアハウスは絋さんが決めたことなのに」
「そ、その時はそれがいいと思ったんだよ。今は杏樹さんと、ただただ恋人らしく過ごしたい」
素直な言葉に彼女は満足そうに笑みを浮かべて、両手を広げて包むように抱きついてきた。
「幸せ……ずっと一緒にいましょうね」
そんな他愛もない言葉に縋るように、こぼれ落ちない様に、頷くように抱き返した。
———……★
「でも、甘い時間は続かないんだ」
次回は3日後……10月24日(木)に更新します。
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