第48話 その指に触れる…… 【♡♡♡有】

 今まで生きてきた中で一番の緊張を体験していた俺は、少しでも落ち着こうと深呼吸を繰り返していた。


 だけど一向に落ち着かない。むしろ興奮が滾る一方だった。


「……つーか、俺は何を着て出ればいいんだろう」


 寝巻きなんていらないと思っていたので、外出用の服しか用意していなかった。とりあえず下着にホテルが用意してくれたガウンを着るか。


 そしてベッドルームへ向かうと、居心地悪そうに座る杏樹さんの姿が目についた。スマホをジッと見つめて、何かの動画を見ているようだった。


「あ、こ、絋さん……おかえりなさい」

「ん、ただいま。何を見てたん? アニメ?」

「えっと、今日のアニメを少し。紘さん私に教えてばかりで楽しめなかったんじゃないかなって思って。だから明日もう一回行きませんか?」


 この気ィ遣いしいめ。

 だが愛しい行動に嬉しくなった。

 杏樹さんの隣にピタリと座って、共に映像を分かち合った。


「俺、ハルくんの次に好きなのは、この悪魔の女の子なんだよね。髪を下ろした杏樹さんに似てる気がしない?」


 乾かしたばかりの柔らかい髪を指で掬い上げて、触れるようにキスをした。


「に、似てますか? でも私、こんな破天荒じゃないと思うけど」

「性格は……どっちかというともう一人のヒロインに似てるかな? まぁ、どっちに似てても俺が好きなのは杏樹さんなんだけど」


 細い腰を抱き寄せて、そのままお姫様抱っこをして持ち上げた。


「わっ、ま、待って!」

「いやいや、もう待てないって」


 キングサイズのベッドに寝かせて、そのまま覆い被さるように重なって、怯える彼女の頬に唇を添えた。頭をクシャっと撫でて、もう片方の手で胸元を弄り始めた。


(ブラジャーもしてるのか……。積極的なのか怯えているのか)


 真意が見えなくて戸惑ってしまうけど、今の様子を見ていると続けても良いのだろう。

 ベッドヘッドにあったスイッチで照明を落として、部屋を暗くした。


「あ……っ、ん……」


 キュッと唇を噛み締めて、強く目を瞑った。

 彼女の緊張が俺にまで伝わってくる。


「杏樹さん……好きだよ」


 首筋に舌を添えて、湯船に浮いていた真紅の薔薇の花弁のような痕を散らしていく。痛みと快感が混じった吐息に、身体の奥がゾクゾクする。


「はァ……っ、んンっ、ん……」


 ぷくっと瞑られた蕾を唇に含み、少し強めに吸ってみる。ビクビク震える身体を優しく撫でながら、ゆっくりと反応を見る。


「杏樹さん、怖い? 大丈夫?」

「大丈夫……、怖いっていうよりも、やっとなんだって言うか……」


 ——分かる、俺も大体同じような気持ちだ。


「大好き……、紘さん、私……紘さんのことが好き」

「俺も好きだよ。何回、何百回言っても足りないくらい」

「それじゃ、もっと言って」


 彼女の唇に指を入れて、舌の先端を撫でた。そして舌の裏に挿入れて、クニクニと指を動かす。熱くて柔らかくて、いやらしい気持ちになる。


「んっ、絋ひゃ……ん」

「可愛い。世界で一番……杏樹さんが好きだ」


 そして俺達は深く交わった——……。

 それは思っていた理想の行為とは程遠い、痛みを伴うことだったけど、それでも何度も何度も分かち合った。



 ———……★


 初めての感覚に、すっかり力尽きた彼女は、力尽きたように眠りについた。

 無防備な寝顔を見ていると、さらに愛しさが込み上がって抱き締めたくなった。


「あー……俺、バカだな。こんなに初めてに拘って」


 初めての営みが済んで思ったことは、これで終わりじゃなくて始まりだってこと。

 こんな一回に全てを詰め込めるわけもないし、それがゴールでもないのに。


 彼女の指先を撫でて、そのまま絡ませるように繋がった。


「ずっと大事にするから。俺が杏樹さんを幸せにする」


 今晩は俺が杏樹さんを抱き締めて、抱き枕にして眠る夜だ。たまにはそんな夜があっても良いだろう。


 だって、俺たちの関係はまだまだ始まったばかりなのだから。


 ———……★


「アイラブユー・アイニィ、チュー……。僕は君の全てが欲しい」




 あー、とうとう結ばれちゃいました✨

 何か泣きそうになった。やっぱり恋っていい。恋はこうでないとな……。


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